高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

2つの日本式システムが内戦を繰り広げる成田空港の不毛

高城未来研究所【Future Report】Vol.565(2022年4月15日発行)より

今週は、バルセロナ、ドバイ、東京、富士山と移動しています。

先週スペイン入国が余りにあっけなかったことに驚きましたが、今週日本に入国するのに4時間近くかかって、さすがの僕も辟易しました。
これは水際対策がしっかりしているのではなく、明らかな段取りの悪さ、というより「日本式システム」の弊害です。

まず、帰国便の機内で大量の書類が渡され、記入を求められます。
「誓約書」や「検疫法第12条に基づく質問」シートなど、事前のアプリケーションやWEBフォームとは別に、厳しい内容が書かれた書面に記入してサインしなければなりません。
実はこの大量の書類、到着後に一度も提示することもなく、回収されることもありませんでした(一体、この書類の束は何だったのでしょう?)。

到着ゲートに着くと係官に整列を求められ、乗客は一列に並んで行進するよう空港内を歩かねばなりません。
その間、何の説明もなく時間にして20分弱。
ここで重い荷物を抱えていれば相当大変で、カートもありません(トイレも見当たりません)。

また、搭乗前にアプリケーション登録するとグリーンパスのようなものが発行され、優先レーン「ファストトラック」を通れることになっていますが、レーンそのものを見る係官がいないためグチャグチャになってしまい、「ファストトラック」の意味がまったくありませんでした。
人との間隔も取れない狭い通路に押し込められ、咳き込んでいる人が多数います(クラスター管理は、有名無実です)。

なかには係官にレーンの問題を伝えている方もいらっしゃいましたが、とても対応できる様子がないほど毎時パニックな様相で、怒号が鳴り響いています(たぶん、相当なパワハラがあると思われます)。

およそ8ヶ月前にタンザニアから帰国した時より、明らかにいまのほうがメチャクチャで、このあたりに日本の「縦割り行政」が露呈していると感じました。
つまり、厚生労働省と国土交通省との連携が上手くいっておらず、他の省庁との横とのつながりは、双方「介入」され「自身の権限を奪われる」と考えているため、協調して何かを行うことができません(それが、組織末端まで影響を与えています)。

現在、厚生労働省の「日本式システム」と国土交通省の「日本式システム」というふたつシステムが、空港内で争う内戦が起きているのです。

ウクライナ紛争より、身近で切実な成田空港内の厚生労働省と国土交通省との紛争をテレビで報道して欲しいところですが、「お上に触れない」(体制に逆らわない)のも、また「日本式システム」のルールのひとつであることから、報道されることは決してないと思われます。

もし、これから日本に帰国予定がある方は、機内でトイレを済ませ、到着後「これから長い旅がはじまる」と兜の緒を締め直し、最低限の水や食料を確保しておくといいでしょう。
到着時間帯によっては、成田エクスプレスの終電に間に合いません。

さて、帰国すると日本はすっかり春模様。
驚くことに気温が30度を超える日もありまして、東京郊外、富士山(朝霧高原)とロケが続き、早くも日に焼けました。

気がつくと、もう夏の日差し。
今年は、久しぶりに大移動がはじまります(明後日からパリです)。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.565 2022年4月15日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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