やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

三浦瑠麗の逮捕はあるのだろうか


 一部報道も始まりましたが、三浦瑠麗さんの逮捕話がマスコミ界隈に駆け巡っていて、まあ暇ネタ単体としてはそうですねで終わるべき話ではあるんですよね。

 出ている通り、ご主人の三浦清志さんが摘発されてしまって、おそらくあれは別件で違う話があるのかという流れになっていますが、もしも何かあるとすると、おそらくはテラで触った竹森郁さん、反社絡みで名神会フロントと書かれていた佐藤尚さんとの話ではないかと思われていて、さらにはその向こう側にいると思われる大樹総研・矢島義也さんのネタに直結されるからというのが一番大きいわけでして、メルマガでも何度もその話はお伝えしています。

 ただ、その矢島さんと三浦清志さんを繋ぐハコである「STC Portfolio1合同会社」(17年10月に三浦清志により登記)に18年にJCサービスの中久保正己さんが執行責任者に就任したうえ、本件で仕込みをやっているメガソーラー事業はどういう状況になっているのかイマイチ進展が見えないことからカネの流れ的にこのあたりを突破口にして矢島さんを摘発するにあたり三浦瑠麗さんの摘発も進めるのではないかという観測が出ているということです。

 もちろんカネの流れた先は細野豪志さんレベルではなく、彼を理由があって自民党に迎え入れた二階俊博さんや、大樹総研との関係ではある島の石ころ案件で収賄があったと以前から囁かれてきた菅義偉さんが本当のターゲットなのでしょうが、実際昨年22年2月に大樹総研に家宅捜索が入って以来、音沙汰がないというのは「まず挙げちゃえ」っていう規模感の話で終わらせたくはない何かがあるのではないかとも思うわけですね。

 太陽光発電に関しては、理念的に推進を進める人たちと、休耕地ほか産業的に成り立たなくなった地方が吐き出す平地を少しでもカネにしたい人たちとの間で捉え方がずいぶん違います。熱海の件にしても、産廃屋筋ではみんなあれはおかしいと言われ続けた結果が、人が亡くなってしまう事故に発展したことも踏まえるとぼんやり構えていると大変なことになります。

 そういう三浦清志さんのビジネスと瑠麗さんが「一体であったか」や「情を知って関与していたか」が焦点となるわけですが、自身で小物という清志さんの実質的な箔付けとなったのは三浦瑠麗さんのほうであったのは間違いありません。その中でも、与野党の政治家との関係をレバレッジに、本来であれば地権者との建設確認が現地でしっかり行えない限りディール失敗を恐れて投資されないメガソーラープロジェクトが、大樹総研の関わりも踏まえて二桁億円単位で成立してしまうことそのものが瑠麗さんの関与と疑われても仕方のないことと言えます。

 個人的には三浦清志さんの名前はまあまあ太陽光界隈でも知れていたようですし、本人が謙遜するような「小物」とはとても思えないんですけどね。

 鍵を握っているのは現役自民党議員A氏と、そのA氏地元で三浦清志さんのソーラー事業に関して働きかけの実働を担ったとされる市議会議員B氏です。仕事のついでに取材で現地入りしてみると、割と街角いいところにA氏B氏の二連ポスターとか貼ってあり、元気があってよろしいと思います。

 地元でB氏が登記した法人では、B氏夫人も取締役に入った結構ちゃんとしたオフィスビルに入る教育サービス事業を展開している一方、B氏が市議をしている自治体「ではない」地域でのソーラーパネル事業での斡旋をB氏、B氏夫人が手がけていることが分かります。もちろん、これそのものは違法というわけではありませんし、地域経済のためになるのならば関係していても何も問題はありません。

 ただし、将来的な展開はある程度地域のためになる輝かしい未来があるのだとしても、少なくともプロジェクトが組成されたとみられる17年から足掛け6年程度経過していますが大手電力への電力引き込み線を設置するために必要な土地の買収が完了しておらず、また、事業のめどが立っていないため太陽光パネルを設置する地面の設営も実施されていません。

 他方で、これらの事業の成立には約8億円の資金が三浦清志さんに関係するファンドと管理する法人に出資金として振り込まれているようなのですが、事業が進まない中でこの資金が入金から現在までずっと寝ていることになります。もったいない。

 また、これらの事業の展開において、おそらく三浦清志・瑠麗夫妻はそう多くないコンサル料を受領している可能性はあるにせよ、そこまで座組を作っておきながらあまり利益がなかったのではないかとも思えます。これで仮に前述ファンドが事業失敗で解散して出資者におカネが返らないのだとすれば、合意のない資金元からすると詐欺以外の何物でもなくなります。しかも、これらの話は清志さんは知らなかったのではないか、単に名前を勝手に使われて面倒なことに巻き込まれた恐れさえもあります。

 そのような経緯もありますので、三浦清志さんについては、これはちょっとアレだなと思う件(税所さんとの裁判も含めて)もありつつ、その関係筋がやらかしていた事件や仕組みに関して、その適法とは言いづらい部分を三浦清志さんがやったと責任を押し付けてトンヅラしようとしている面は少なからずあるのではないかとも思うのです。少なくとも、清志さんが具体的な関与が見受けられない案件に関して、かなり意図的に「あれは清志さん案件である」とマスコミに流れてくるわけですが、登記を挙げたり現地で話を聞いてみても、清志さんが具体的に現地入りして視察したとか、地域の地権者に働きかけをしていたとか、地元住民に対して設置説明会に来ていたとか、そういう話は特に出てこないんです。あくまで、一部の登記や証言で清志さんの関連があるぞあるぞと言われるだけであって、いいように使われていたのではないかとも思うのです。

 実際、当局も知っているであろう清志さん瑠麗さん夫妻と議員A氏と他与党系議員および地方議員B氏と関係者が鳩首会談をしている録音と、その流れで会食している集合写真らしきものも出回っているのですが、よく聴くと、清志さんは良く分からないので口数少なく確認含めて結構基本的なことを質問しているのみで、とてもプロジェクトの責任者に準じる立場で推進していたとは言えません。

 他方で、ここで同席していた案件紹介者(仲介?)の一人とみられる与党系議員らは瑠麗さんの山猫総研への訪問を繰り返し行うなど、むしろこの点で言えば取りまとめの中心にいたのは瑠麗さんのほうだったんじゃないのという感じも否めません。もちろん、金融的な手続きや方法については瑠麗さんはスキルがありませんので、カネ回りも含めた立ち振る舞いは清志さんがやっていたことになるのでしょう。

 集まってきている話を総合すると、私はそこまで三浦清志さんが主体的に何か悪いことをしようと思って何かをしたというよりは、手がけていたソーラープロジェクトが頓挫したもののカネを使ってしまっていたので身動きが取れなくなっているところに(主体的ではないが)関与していた複数の失敗プロジェクトの話が複数噴出して、刑事告訴も本来の問題だけでなく矢島義也さん方面に繋がる飛び石として三浦清志さんの逮捕に至ったのではないのかなあと思います。もちろん、世情として「10億円のカネを詐取して夫婦で上手いことをやり、高級レジデンスである六本木ヒルズ36階でセレブ感ある暮らしをしている」となれば批難殺到なところはありますが。

 全体の構造からすると圧倒的に端牌なんだけど、矢鱈目立つので摘発せざるを得ないというのは残念な判断とも思いますが、それと分かっていて政界に食い込んだ結果がコレというのは何とも悲しいことでもあります。
 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.399 三浦瑠麗さん逮捕の可能性をあれこれ考えつつ、岸田首相訪宇が生むロシアとの軋轢や優秀な経営者とパワハラ問題に触れる回
2023年3月27日発行号 目次
187A8796sm

【0. 序文】三浦瑠麗の逮捕はあるのだろうか
【1. インシデント1】岸田文雄さんがウクライナ訪問でゼレンスキーさんに必勝しゃもじを送った件のロシア側受け止めと是非
【2. インシデント2】優秀な経営者とパワハラ問題、どこまでをアウトとするべきなのか
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

 
やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」のご購読はこちらから

やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

その他の記事

迷子問答:コミュ障が幸せな結婚生活を送るにはどうすればいいか(やまもといちろう)
過疎化する地方でタクシーが果たす使命(宇野常寛)
新宿が「世界一の屋内都市」になれない理由(高城剛)
宗教学たん執筆の記事とメルマガ『寝そべり宗教学』について(夜間飛行編集部)
ライカのデュアルレンズを搭載したスマートフォンの登場(高城剛)
本当の「ひとりぼっち」になれる人だけが、誰とでもつながることができる(名越康文)
波照間島への旅のコツ(高城剛)
「モノ」と「場所」に拡張していくインターネット(高城剛)
スペイン、アンダルシア地方の旅の途中で考えたこと(本田雅一)
職業、占い師?(鏡リュウジ)
古いシステムを変えられない日本の向かう先(高城剛)
ビルゲイツはやはり天才だったと感じる想い出(本田雅一)
「意識のレベル」を測る手技を学ぶ(高城剛)
イタリア人にとっての「13日の金曜日」(高城剛)
『木屋町DARUMA』そして初のピンク映画!榊英雄監督ロングインタビュー(切通理作)
やまもといちろうのメールマガジン
「人間迷路」

[料金(税込)] 770円(税込)/ 月
[発行周期] 月4回前後+号外

ページのトップへ