高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

2022年夏、私的なベスト・ヘッドフォン

高城未来研究所【Future Report】Vol.585(9月2日)より

今週も、東京にいます。

秋の訪れを感じる中、秋葉原や西新宿に日参してパーツ屋でトランジスタを眺め、かつてハイテク大国だった残渣を楽しむ短い夏休みを送っています。

さて今週はいよいよ「2022年夏、私的なベスト・ヘッドフォン」の発表です。

この二ヶ月間、米国と日本で数百本にわたるヘッドフォンを聴き込みました。
以前もお話ししましたように、スマートフォンの世界的普及や新型コロナウィルス感染拡大によるライフスタイルの変化もあって、ここ数年のヘッドフォン業界は大変活況です。

毎月のように新製品が登場し、世界的なアーティストもスタジオに行かず、自宅でレコーディングやミックスを行うようになって、「スタジオがわり」ともいうべき高額なヘッドフォンが続々と販売されています。

特に面白いのはスタジオをシミュレーションするソフトウェアの精度が格段とあがったことです。
Wavesの「Abbey Road Studio 3」など、それなりな感じの再現性が確かにあります(https://www.waves.com/plugins/abbey-road-studio-3?w_campaign=1484268467&gclid=CjwKCAjw6raYBhB7EiwABge5KnXMYhOumwY9SHPY4b1bPHX9BAwziapEVJYxqqPhWSBZqa6ldeDP1BoC7TkQAvD_BwE#inside-the-waves-abbey-road-studio-3-plugin)。
他にもdSONIQの「Realphones」などのヘッドフォン・シュミレーション・ソフトウェアも年々精度が上がっており(https://www.dsoniq.com)、今後、スマートフォンへの搭載も期待されるところです。
今言われる空間オーディオの「空間性」を、個々が選べる可能性が高まります。

また、米国で娯楽大麻が合法化されてから、より低域(サブベース)を柱に楽曲が組み立てられるようになりました。
しかし、既存のスピーカーではサブベースの再現性が乏しい。
そこで、日本では考えられないことですが、スタジオにサブウーファが設置されるのが当たり前になり、あわせてサブベースに重きを置いたプロフェッショナル用のヘッドフォンが続々と登場しました。

このような音楽業界を取り巻く変化と共に、ヘッドフォンも大きく進化しています。

そんな中、僕が散々聞き込んで仕事用に選んだ1本は、Audezeの「MM-500」です(https://www.audeze.com/products/mm-500)。
製品番号の頭についている「MM」とは、10を超えるグラミー賞を獲得したミキシング・エンジニアであるManny Marroquin=マニー・マロクィンの頭文字を取ったもので、彼のチューンが施された開放型ヘッドフォンです。
同社のフラッグシップ「LCD-5」がベースになってミキシングとマスタリング用に改良されています。
南カリフォルニアにあるAudezeは、創業十年程度の新興ヘッドフォン・メーカーですが、いまや世界中のレコーディング・エンジニアの定番になりつつあります。

しかし、スピーカーのような空間的再現性を求めるなら開放型に限りますが、移動が多く、また機内でも仕事をする必要があるため、僕には密閉型も必要です。
そこで選んだ密閉型の1本は、ダン・クラーク・オーディオの「STEALTH」(https://danclarkaudio.com/dcastealth.html)。
この密閉型ヘッドフォンは、まるでフィンランドの材木で作っていた古き良きGenelecを彷彿するサウンドがあり、いつまで聴いていても疲れません。
「STEALTH」を作ったダン・クラーク自身が、エレクトロニカをよく聞いているそうで、不思議な空間性が得られます。
この「STEALTH」の登場により、僕はスピーカーを持ち歩くことを完全に辞めました。

また、カナル型ならではの解像感があるイヤホンは、Westone Audioの「MACH 80」です(https://westoneaudio.com/product/mach-80/)。
このイヤホンは、それまで聞き取れなかった細かな音まで聞くことができる驚くほどの高解像度があり、というのもWestone Audioは高度な補聴器を中心とした聴覚医療事業で長年のノウハウを構築してきた企業だからです。
イコライザーで少し補正すると、僕が聞きづらかった周波数帯域も聞こえるようになりました。
ただ、カナル型は長く聞くと疲れてしまうこともあって、ほどほどの使用にしています。
どちらかというと聴覚トレーニング用に主に使っています。

そして、ワイヤレス部門はマーク・レビンソン初のヘッドホン「No5909」(https://jp.marklevinson.com/products/headphones/MLNO5909BLK.html)。
数週間前にノイズキャンセリングを使いすぎると特定周波数を聴く力が衰えるとお話ししましたように、本製品にもノイズ・キャンセリング機能が搭載されていることから多用は避けた方が良いと考えますが、場合によってはオンにするものの(飛行機の離発着時等)、基本的にはオフにしつつも制作上利便性が高くなるワイヤレスとして使用しています。
50年もの間、「ハイエンドオーディオ」というまだ誰も開拓していなかった領域に挑み続けたマーク・レビンソンから、史上初めてワイヤレスヘッドフォンを出したということもあって、現存するワイヤレスのなかでは最高の音質を誇ります。
SONYもゼンハイザーも敵いません。
有線接続すれば、ヘッドフォン内にDACを搭載しているので、さらに高音質で音楽を楽しめるのも特徴です。

こうして仕事でのミックスやマスタリングには開放型のAudeze「MM-500」。
外で仕上げをする必要がある場合には、密閉型のダン・クラーク・オーディオの「STEALTH」。
聴覚補正トレーニングに日々使うWestone Audioの「MACH 80」。
そして、制作用にマーク・レビンソンの「No5909」を使い分けるようになりました。
もし、どうしても1本と言われたらダン・クラーク・オーディオ「STEALTH」を選びます。
この1本は、これまでの密閉型の概念を覆す「やさしい空間性」があり、事実、一番長い時間使用しています。
そのうち、これしか使わなくなるかもしれません。

しかし、どんなに良いヘッドフォンでも、良いDACを通じてヘッドフォンアンプで鳴らさなければ性能が発揮されません。
iPhoneやMacには簡易的なDACやヘッドフォンアンプが搭載されていますが、それらを電気的にパスしてデジタル信号をそのまま抜き出し、外部のDACとヘッドフォンアンプを通じて鳴らすと、真のヘッドフォン性能を引き出し、驚きのサウンドが得られます。
なにしろ、スマートフォンの簡易的なDACやヘッドフォンアンプは、付属する安価なイヤホンがそれなりに鳴るようにチューニングされてるからです。

次週、より良い耳の健康とサウンドを求めた「2022年夏私的なベスト・ヘッドフォン(アンプ編)」に続きます。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.585 9月2日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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