やまもといちろう氏による涙の経営相談

社員を切ってください、雑巾は絞ってください

造り酒屋をしている読者より、「経営が厳しいのですが、どうしたらよいでしょう」という悲壮な質問が、過去二期分の決算書とともに、『人間迷路』の質問窓口に届いた。以下は、メルマガ第二回目にして、大反響を巻き起こしたやまもといちろう氏の返答全文である。

 

結論から申し上げます

「質問でーす」という大変カジュアルな題名の割に、貴社の決算書類等のpdfなど容量的にも内容的にも大変重いファイルがくっついておりまして、大変難儀いたしました…。ご質問、ありがとうございます。さすがにメルマガで貴社の実名や経営状態を開示しつつアドバイスを差し上げるわけにもいきませんので、細やかなところは直メールで、大まかなところはメルマガでだだっと回答させていただく形となりますことをお許しください。

結論から申しますと、明日にも私的整理を考えられたほうがいいレベルです。

経営者としてのお心構えも、社員を大事にお考えの素晴らしい経営方針も良く伝わってくる決算書で、書類だけで拝見するならば、交際費はほぼなし、経費類も社員数の割に極めて健全にお使いのようです。

ただ、主力製品である日本酒で経営を維持できるだけの売上高を確保できず、在庫が積み上がっており、現状で生産調整を行うだけでは継続的な経営ができる状態にないと思われます。また、半製品、売掛金が積み上がっておりますが、恐らく正規の棚卸しをすると価値のない在庫が多数含まれるものと見られ、売掛金もほぼ二年分の売上と等しい状況にあるというのは貸し倒れがかなりの割合で免れ得ない内容であります。これを特損で計上しないのは、間違いなく短期借入金に頼る経営をしている以上、大幅赤字にはできない、とお考えではないかと想像します。

私が見るに、経費率における人件費が同業の醸造業の平均からしますと高くなっており、明らかにこれは「ずぶ濡れの雑巾」であります。社員一人当たり売上高が650万円見当、一人当たり支出が350万円ですので、同業平均の粗利益率から換算すれば、これで利益が出るはずがありません。

まず私的整理を行うか、最低でも取引金融機関に返済計画のリスケジュールを申し入れて、元金返済を止め、恐らく手形と思われる支払いについては期日を飛ばしてもらう等の資金繰りをしない限り、資金繰りは改善しません。

家族経営を標榜されておられるようですが、これ以上社員を養っていくことは無理です。残念ですけれども、社員を四分の一以下にし、季節労働と思われる杜氏さんについては期間契約にするなどの合理化を進めなければならないと思います。いまの状態は、先代が作り上げた有形資産の担保価値ギリギリまで金融機関から金を借り、少しずつ不動産等を売却して資金作りをしながら赤字を補填しているだけの経営内容に読めます。

辛いと思いますが、支払いの先延べと、社員の解雇を進めるか、私的整理を弁護士に相談するしか貴方の苦しみを開放する方法はないと言えます。

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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。サイバーインテリジェンス研究所統計技術主幹など歴任。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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