小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ」より

夏休みの工作、いよいよ完結

※メールマガジン「小寺・西田の金曜ランチビュッフェ」2017年9月29日 Vol.143 <数の論理と新秩序号>より

さて今回は先々週の続きで、 音楽之友社から発売されている「これならできる特選スピーカーユニット パイオニア編」のユニットと、「スピーカー工作の基本&実例集 2017年版」に付属のエンクロージャのその後、塗装から音出しまでをレポートしたい。

前回は組み立てまで終わり、エージングを兼ねて少し音出しはしたものの、やはり塗装まではきちんとやってから評価したいところである。今回の「スピーカー工作の基本&実例集 2017年版」でも、塗装の効果について語られているところだ。塗装材による音の違いは、正直それ気のせいなんじゃないかと思わない事もないが、実際塗装すると表面の平滑化や、接着面の隙間が埋まるといった効果は見込めるので、組み手てそのままよりは状態が良くなることは期待できる。


組み上がったエンクロージャ

今回はコーンが黒なので、全体的につや消しの黒で塗装してみることにした。使用したのはニッペ ホームペイントのラッカースプレーである。ホームセンターで200円程度で買える、比較的安価なものだ。2度塗りで1平方メートルぐらいの分量なので、今回のスピーカーにはちょうどいい。

素材のMDFは、木材の粉を圧縮して接着剤で固めたものなので、木目の方向がない。その特性がエンクロージャに向いているため、好んで使われるわけだが、塗装においても、表面・断面関係なく同程度の色乗り具合となる。ただし、吸い込みはかなりあるので、数回重ね塗りしないと、綺麗に塗れない。今回は2度塗りして一旦乾燥させたのち、もう1回2度塗りした。


軽く1回塗ったところ。数回重ね塗りしないと綺麗に仕上がらない

最後に吸音材を追加してみた。それというのも、仮の音出し時に多少音が固かったので、もう少し背面からの高音を抑えた方がいいと考えたからだ。そこで、ホームセンターの近所などの水槽用品を扱っているコーナーにて、濾過用のワタを買ってきて、薄く引き伸ばし、挿入した。


吸音材を少しだけ追加

 

課題はあるが、良好な低音表現

では実際の音出しである。

そもそも6cm程度のユニットでは、低音の出は、たかが知れている。それをエンクロージャの設計でどれだけ救えるかが、ポイントになる。今回の設計方式であるQWTは、部品点数も少なくシンプルな構造ながら、低音の増強という点では非常に効率がいいことがわかった。

小型ユニットスピーカー特有の、中高域は十分ながら低音はガッカリというタイプの音ではなく、低音もしっかり認識できる。もちろん、昨今は低域を強調する音楽が主流なので、結果的にちょうど良くなるという結果オーライなところも否定しない。ただ、6cmユニットの音としては、十分満足できるサウンドだ。


なかなかいい感じに仕上がったと思うが、どうだろうか

このエンクロージャは、低音を背面に向かって放出する設計のため、スピーカーの配置には注意が必要だ。つまり壁などにくっつけて設置すると、音導管が塞がってしまって、音がかなり変わってしまうのである。かといって音の反射が全くないと、低音が前方に回り込んでこないので、物足りなくなってしまう。色々試した結果、背面は壁などから15cm程度離すと、良好な結果が得られるようだ。

若干惜しいのは、ニアフィールドで聴くと十分な低音が出ているのだが、2〜3m離れたところで聴くと、低音の減衰が大きい。やはり背面から反射して回り込んでくるので、押し出しが弱いのかも知れない。設計の合理性からすれば、背面に放出口を設けるのが妥当だが、底面の構造を工夫して、前方に放出口を回してくるのも面白そうだ。

またこのユニットは、かなりの大音量で聴いても、破綻することがないのはさすがだ。サイズから考えれば、ウソだろと思うほどデカい音が出せる。ハイレゾにも対応可能ということで、高域の表現はかなり伸びがよく、綺麗だ。ボーカルの破擦音も歪むことなく表現できるので、歌モノには向く。

ただしトータルでのバランスとしては、多少高域が目立つので、和室のようなデッドな部屋に置くと丁度いいだろう。音が硬くなりがちな洋室やコンクリート貼りの空間では、イコライザなどで少し高域を下げてやると、うまくまとまるはずだ。

今回はほとんどムックのキットをそのまま作っただけだが、出来としては非常に満足度の高いものに仕上がっている。特に今回のパイオニア製ユニットの素質の良さには、驚いた。音友ムックは以前から質のいいものが多いが、だんだんハードルが上がってきていて、一緒に組むメーカーさんは大変だろう。パイオニアはその大役を見事果たしたと言える。

来年はどのメーカーにバトンが渡されるのだろうか。今から楽しみである。

 

小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ

2017年9月29日 Vol.143 <数の論理と新秩序号> 目次

01 論壇【西田】
 「10年目のiPhone発表会」から考える業界構造
02 余談【小寺】
  夏休みの工作、いよいよ完結
03 対談【西田】
 MastodonからYouTuberまで。松尾公也さんと語る「情報発信」のカタチ(4)
04 過去記事【西田】
 データを長期保存するには
05 ニュースクリップ
06 今週のおたより
07 今週のおしごと

12コラムニスト小寺信良と、ジャーナリスト西田宗千佳がお送りする、業界俯瞰型メールマガジン。 家電、ガジェット、通信、放送、映像、オーディオ、IT教育など、2人が興味関心のおもむくまま縦横無尽に駆け巡り、「普通そんなこと知らないよね」という情報をお届けします。毎週金曜日12時丁度にお届け。1週ごとにメインパーソナリティを交代。   ご購読・詳細はこちらから!

その他の記事

食えない中2はただの中2だ!(家入一真)
「死にたい」と思ったときに聴きたいジャズアルバム(福島剛)
恋愛がオワコン化する時代の不幸(紀里谷和明)
なぜ、日本人はやりがいもないのに長時間労働で低賃金な仕事を我慢するのか(城繁幸)
夕陽的とは何か?(前編)(岩崎夏海)
乙武洋匡さんの問題が投げかけたもの(やまもといちろう)
伸びる人は「2週間1単位」で生活習慣を整える(名越康文)
「暮らし」をシェアする時代がくる? 注目のシェアリングエコノミー(家入一真)
石田衣良さん、前向きになれる本を教えてください(石田衣良)
話題のスマホ「NuAns NEO」の完成度をチェック(西田宗千佳)
『ぼくらの仮説が世界をつくる』書評ーかつて本には「飢え」を感じるような魅力があった(岩崎夏海)
iliは言語弱者を救うか(小寺信良)
意外とまだマイナー!?「二段階認証」をおさらいする(西田宗千佳)
「英語フィーリング」を鍛えよう! 教養の体幹を鍛える英語トレーニング(茂木健一郎)
週刊金融日記 第295号【ビットコインで儲けたお金をベンチャー企業につっこもう、米国法人税率20%が実現すれば空前の好景気が到来する他】(藤沢数希)

ページのトップへ