小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ」より

世界60か国で定額通信を実現する「Skyroam Hotspot」を試す

小寺信良&西田宗千佳メールマガジン「金曜ランチビュッフェ」2015年9月4日 Vol.048 <インターネットに光はあるのか号>より

今週はドイツ・ベルリンに、IFA取材のため出張している。そして来週は、アメリカ・サンフランシスコに、新iPhone発売イベントのために転戦だ。なかなかに大変なスケジュールで、小寺さんにもご迷惑をおかけしているところなのだが、今回はベルリンから、ちょっと変わったもののショートレビューをお伝えしたい。

といっても、モノはベルリンで仕入れたのではなく、ある仕事で香港に一泊二日の短期出張した時仕入れたものなのだが。

そのモノとは、「Skyroam Hotspot」。これさえ持っていれば、世界中で通信ができる、という触れ込みのものだ。

・「Skyroam Hotspot」。見た目は普通のモバイルルーターに見える
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・背面はオレンジ一色でかなり派手。端子類は側面にある
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この商品の特徴は、先ほども述べた通り「これ一台で世界中で通信ができる」ということだ。機械がどこでも使える、という話ではない。本当に全世界で通信ができるのだ。3Gネットワークに対応しており、電源さえ入れれば、すぐに通信が開始される。実際ドイツでも、初期設定を除けば、電源を入れてほんの30秒ほどで通信可能になった。Skyroam社のウェブによれば、世界60か国で利用可能だという。

・国名が「Germany」になっているところに注目。
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・Skyroam社のウェブ
http://www.skyroam.com

本体価格は、クレジットカードの履歴によれば1万4000円弱。同じものは、ガジェット海外通販でおなじみのExpansysでも販売されていて、1万5190円+送料となっている。モバイルルーターとしてみても、相場より数千円高い、という程度だろうか。

本体内にはSIMカードは入っていない。というか、識別用の仕組みは内蔵されているらしく、いらないのだ。電源を入れてスマートフォンからアクセスすると、登録画面が現れる。本体に固有のIDが割り振られているらしく、それを使って登録をする。自分の携帯電話の番号を入れると、そこに設定用PIN番号が書かれたSMSが飛んでくるので、4桁の数字を入力すれば準備完了だ。

・名前や電話番号を登録すれば終了
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これでつながってしまう。初回利用時には5日分の利用権が付属しているので、今回はそれを使っている。切れた場合には、別途チャージする。価格は、1日につき10ドル。5日分一括なら8ドルになる。この料金体系でお分かりのように、基本的には日単位での使い放題。利用量が350MBを超えると速度が落ちる、とのことだが、今のところ、顕著な低速化は起きていない。

通信速度を試してみると、相当にばらつきはあったが、下りで1Mbpsから5Mbpsというところ。LTEには対応していないと思えば、そんなところか、というレベルである。もちろん、上記はドイツでのものであり、国によって速度は変わるだろう。

・ドイツでの通信速度。場所や時間によってばらつきはあるが、こんなものか、というところ
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日額10ドルという額は、携帯電話事業者のローミング料金(日額2490円)よりは安く、専業の海外用ルーターレンタル会社の料金(日額1000円から)よりちょっと高く、現地でSIMを調達した場合(先進国の場合、5GBで日本円にして3000円から6000円)に比べるとさらに高い。決して極端に安くはないのだが、まったく同じように60か国で、国を気にせず使えるのがポイントだろう。移動が多い人や、いちいち国による事情の違いを忖度したくない人には、許容しうるコストだと思う。さすがに、LTEには対応して欲しいと思うが。

こういうビジネスモデルの製品が成り立つ理由は、国によるローミング価格の違いにある。

一般的に、平均所得が低くて通信料金が安い国では、その国で契約した携帯電話回線のローミング価格が、他国で契約したものよりも安く設定されている。また、そういった国で海外ローミングを使う人は上客なので、価格競争もある。

それが顕著なのが中国だ。現在、海外への渡航客向けに海外用ルーターを貸し出している企業では、中国の携帯電話会社と契約し、そのローミングで世界中の通信をカバーしている例が増えてきている。昔はアメリカならアメリカ、ドイツならドイツの事業者と契約、現地で仕入れたものを使うのが大半だったのだが、数を考えても管理コストを考えても、中国の通信事業者のものを使った方が安くなる場合が出てきた。なので、アメリカ用のルーターを借りたのに、通信事業者のところに中国企業の名があるものが提供されたりする。

Skyroamがどこのものかはわからないが、ここも中国系なので、同じような仕組みを使っているのだろう。もちろんローミング利用の専業に近いこうしたビジネスモデルでは、交渉のもと、特別な料金体系を使っている場合もあるだろう。

ローミング料金が高い理由は、そろそろ失われつつある。こうしたサービスも時代の徒花で、一般的な携帯電話事業者が国内+α程度のコストで提供するようになるまでに、あと10年はかかるまい、とは思っている。早ければ数年だろう。皆が同じようにインターネットを使い、それが当たり前になるということは、こうやって料金の壁も崩れていく、ということなのだろう。

なお、本製品は「世界で使える」ということになっているが、日本国内では使えない。いわゆる技適も通っていないので、国内では使わないよう、ご留意を。

小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ

2015年9月4日 Vol.048 <インターネットに光はあるのか号> 目次

巻頭言
01 論壇【小寺】
オリンピックエンブレム問題に見えた闇
02 余談【西田】
世界60か国で定額通信を実現する「Skyroam Hotspot」を試す
03 対談【小寺・西田】
テイラーメイドイヤホン〈Just ear〉の「なぜ」 (4)
04 過去記事【小寺】
新スタンダード誕生、ソニーインナーイヤー最高峰「MDR-EX700SL」
05 ニュースクリップ
06 今週のおたより
07 今週のおしごと

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筆者:西田宗千佳

フリージャーナリスト。1971年福井県出身。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。取材・解説記事を中心に、主要新聞・ウェブ媒体などに寄稿する他、年数冊のペースで書籍も執筆。テレビ番組の監修なども手がける。

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