やまもといちろう氏による涙の経営相談

社員を切ってください、雑巾は絞ってください

社員は経営者の苦しみを分かち合えない

強く申し上げたいのは、余力のあるうちに、平常心を保って判断し、実施しなければならない、ということです。私の親父の会社は、社員に退職金を支払う余裕もなくなりましたが、然るべきタイミングで銀行と交渉し、取引先の支払い条件を変え、物件の処分や、利益を出せる人たちへの経営委譲を一気に行うことで危機を乗り越えることになりました。比較的判断は早いほうだと自負する私ですが、やはり長年ご一緒した社員を切るのには抵抗があります。先延ばしにしたかった。でも、彼らを率いて利益が出なくて、困るのは自分です。社員は経営者ではありません。いい意味でも悪い意味でも、社員は経営者の苦しみを分かち合うことができないのです。だから、彼らに相談しても、判断を遅らせることにはなれども早くなることは絶対にありません。

そして、若くて優秀な社員から、会社に見切りをつけて去っていきます。残るのは、能力的には厳しい、もう外に行ったらいまの待遇では雇ってもらえない人たちばかりです。頑張れと発破をかけても反応は乏しい。だって、いままでもそういう経営者を見てきたのですから…。

なので、私からしますと貴方はまだ刀も折れていなければ、矢も尽きていません。ただ、余力があるうちに対応すべきで、社員を切ってください、雑巾はまず絞ってください。そして、経営を再建するために必要な、相応しい人を雇ってください。何が、お客さまの利便性やニーズに対して合理的な判断であるか、ということ「だけ」を考えるべきです。

利益を出した会社が、その利益の処分にあたって、家族的な経営だ、あるいは実力主義で能力を発揮した奴には多く払うぞ、というのは経営の幅であり、自由度です。

なので、石に齧りついてでも、利益を出しましょう。

利益出せる自信がないのであれば、一刻も早く私的整理をするべきです。

ただ、私が見た貴方の会社の財務諸表では、6月末のロールオーバーができず、倒産すると思います。ご武運を祈っております。再建ができそうなら、またメールをくださいませ。

 

やまもといちろうメルマガ『人間迷路』Vol.2、「迷子問答」より>

1 2 3
やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

その他の記事

平昌オリンピック後に急速に進展する北朝鮮情勢の読み解き方(やまもといちろう)
名越先生、ゲームをやりすぎると心に悪影響はありますか?(名越康文)
パニック的なコロナウイルス騒動が今後社会にもたらすもの(やまもといちろう)
新型カメラを同時二台買いするための長い言い訳(高城剛)
街にも国家にも栄枯盛衰があると実感する季節(高城剛)
フェイクと本物の自然を足早に行き来する(高城剛)
「空気を読む力」を育てる4つの習慣(岩崎夏海)
【高城未来研究所】「海外に誇る日本」としてのデパ地下を探求する(高城剛)
大観光時代の終焉(高城剛)
いまそこにある農政危機と農協系金融機関が抱える時限爆弾について(やまもといちろう)
子どもが飛行機で泣いた時に考えるべきこと(茂木健一郎)
中国のマイクロブログから「朝日新聞中文網」アカウント全面削除!(ふるまいよしこ)
心のストッパーを外す方法(岩崎夏海)
目的がはっきりしないまま挑戦する人の脆さと凄さ(やまもといちろう)
物議を醸す電波法改正、実際のところ(小寺信良)
やまもといちろうのメールマガジン
「人間迷路」

[料金(税込)] 770円(税込)/ 月
[発行周期] 月4回前後+号外

ページのトップへ