石田衣良ブックトーク『小説家と過ごす日曜日』より

「疲れているとついイラッとしたり、怒りっぽくなってしまうのですが……」

石田衣良ブックトーク『小説家と過ごす日曜日』2月26日Vol.016より

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【Q.子どもができてから余裕がないのか怒りっぽくなってきて……怒りを逃すヒントはありますか?】

衣良さんは、いつも温厚で淡々としているイメージなのですが、イラッとすることはありますか? そういう時はマイナスの感情とどう向き合うのでしょうか。声を荒らげたり、物に当たったりするイメージが全くないので聞いてみたいです。子どもができてから余裕がないのか怒りっぽくなってきてしまったので、怒りを逃すヒントがあれば教えていただきたいです。
 
 

【A.ともかく人間って自分の心の焦点が合っているところが気になってしょうがないわけじゃない。なので……】

よく映画やドラマで、若いサラリーマンや中間管理職みたいな人が、オフィスでごみ箱を蹴飛ばすとか、机の上の物をダーッと投げ捨てるみたいなことやるシーンがあるじゃないですか。あれを見て「うわー、なんて劇的な表現だろうな」って、いつも感心しているんですよね。「えー、こんなことやったことないな。そんな人いるの?」と思って。

外国映画の夫婦げんかでも、コップを投げるとか、お皿を割るみたいなことがあるじゃない。「そんなことしても後で自分が片付けるんだから、何でそんな馬鹿なことをやるのか」と不思議ですね。

ぼくがちょっとイラッとしたり、疲れたなと思ったりした時の解消法は、

1つ目は「寝る」。

2つ目は「散歩に出かける」。

3つ目は「大きな音で音楽を聴く」ぐらいですね。

でも、イラッとすること自体がとても少ないですね。一番イラッとするのは、たとえば締め切りが重なってすごくつらい時に、何か面倒な仕事が入ってしまったとかね。

たとえば前々からわかっているテレビの収録があるんだけど、本当にギリギリで仕事が終わってないみたいなのはつらいね。スタジオでわーって笑いながら出演して、「ああ、今日帰ってからまた原稿だ……」って思うのがほんと嫌なんだよね。

でもはっきり言って、ほとんどの人は死ぬほどの目になんてあってないじゃん。「ちょっとうまくいかない」ぐらいのことで怒っているだけでしょう? 全然大したことないと思うんだけど。ともかく人間って自分の心の焦点が合っているところが気になってしょうがないわけじゃない。なので、心の焦点を別のところに合わせればいいんだよね。

このままつらいのは置いておいて大丈夫。なぜなら、それで死ぬとか、破滅するみたいなことはないから。ちょっといら立つとか、思い通りにいかないということだけのことでしょう。そしたら他のことに焦点を移せばいいんですよ。別に音楽でも、散歩でも、買い物でもいい。あるいは自分の好きな趣味の世界でもいいんです。それこそ映画やアニメを見るみたいなことでも全然構わないので。それだけで、ほとんどのストレスって解消されるじゃないですか。

しかも、いらだちのもとになっていることも、だいたいは簡単な作業で解消されるんですよね。納期前で大変だったらその仕事をやればいいし、子どもが泣いているんだったら何かミルクをあげるとか、ご飯を食べさせれば済むので。なので、あんまり考えすぎないほうがいいよね。

いらだちを持つこととか、それを爆発させるのが悪いことだってことじゃないんですよね。ストレスを抱えすぎると病気になることもあるので、適度に発散していけばいいと思います。

ただそれを毎回特定の人間にぶつけていると厳しいよね。その人との関係性が悪くなっちゃうから。なので、人間関係を壊さない程度に発散する方法を、みんな20代後半とか30代になると分かってくると思います。自分はジムに行って汗をかくといいとか、散歩がいいとか、ヘビメタで首を振っていると治るとか。「自分はこういうことをやるとスカッとするな」ということを、ゆっくり探してみたらどうですか?

(この記事は石田衣良ブックトーク『小説家と過ごす日曜日』2月26日Vol.016から一部抜粋しています)

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石田衣良ブックトーク『小説家と過ごす日曜日』

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石田衣良
1960年、東京都生まれ。 ‘84年成蹊大学卒業後、広告制作会社勤務を経て、フリーのコピーライターとして活躍。 ‘97年「池袋ウエストゲートパーク」で、第36回オール読物推理小説新人賞を受賞し作家デビュー。 ‘03年「4TEENフォーティーン」で第129回直木賞受賞。 ‘06年「眠れぬ真珠」で第13回島清恋愛文学賞受賞。 ‘13年「北斗 ある殺人者の回心」で第8回中央公論文芸賞受賞。 「アキハバラ@DEEP」「美丘」など著書多数。 最新刊「オネスティ」(集英社) 公式サイト http://ishidaira.com/

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