石田衣良ブックトーク『小説家と過ごす日曜日』Vol.017「“しくじり美女”たちのためになる夜話」より
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誰しも恋愛に失敗は付き物。
しかし、失敗から学ぶことは多く、人は“しくじった”数だけ成長するとも言えるでしょう。
このコーナーでは毎回、一般女性をゲストにお招きし、すでに幸せをつかんでいる人にはその過程で得た教訓を、どうしても幸せをつかめずにいる人にはその原因を、鼎談形式でひもといていきます。きっとそこは、男女を問わず糧とするべきヒントで満たされているはず――。
第15回:どうしても恋人と長続きしないアラサーの悩み。
《今回のゲスト》
ヨウコさん(仮名)。32歳・独身。
清楚な語り口が特徴的な美人OL。
[聞き手]石田衣良/友清哲(ライター)
これまでの交際最長記録はわずか10カ月
友清:失敗を重ねた女はあまねく魅力的である。今夜も都内のBARに女性ゲストをお招きし、恋愛体験を根掘り葉掘りお聞きいたします。ゲストは外資系企業でOLをやっているヨウコさん(仮名・32歳)です。
ヨウコ:よろしくお願いします。
衣良:はい、よろしくね。
友清:恋に仕事に、アラサーライフを謳歌するヨウコさんですが、せっかく彼氏ができても、どうしても長続きしないので困っているとか。直近では3週間前に彼氏と別れたばかりだそうですが、これもほんの2カ月程度のお付き合いだったとのこと。
衣良:へえ、すごく最近の話だね。ちなみに、これまでの最長記録はどのくらい?
ヨウコ:10カ月くらい、ですね。
友清:みじかっ!
衣良:男と女だから、破局に至る理由はさまざまだろうけど、自分では毎回長続きしない理由はどこにあると考えているの?
ヨウコ:うーん。たぶん、それがわかってないから、毎回短命で終わってしまうのではないかと……。
衣良:極端に理想が高いとか、そういう傾向はないのかな。
ヨウコ:はい、自覚しているかぎり、そういうのはないと思います。
衣良:不思議だなあ。見たところ落ち着いた女性だし、色っぽさもあるから、男性側からしてもそうそう手放したくないタイプだと思うんだけど。
友清:ちなみにこれまでの交際人数をお聞きしてもいいですか。
ヨウコ:九州から東京に出てきてちょうど7年になるのですが、その間でいうと3人だけです。ただ、10カ月続いたのは学生時代の彼氏で、東京での3人は、1カ月・1カ月・2カ月という感じです(苦笑)。
衣良:これは予想以上に短命の傾向が強いね(笑)。データだけを見ていると、九州の男性のほうが合っているようにも見える。
友清:相対評価だとそうなりますが、それでもわずか10カ月ですから、合っているとまでいえるかどうか(笑)。ますます原因が気になります。
ヨウコ:でも私、東京の男性のほうが好きなんですよね。九州男児って言葉がありますけど、あれはじつは女が作ったイメージにすぎなくて、実際は九州の女が全部裏で“やってあげてる”だけなんです。その点、東京の男性は何をするにもスマートで素敵です。
衣良:まあ、大半の男性はスマートに見せてるだけだと思うけどね。ちょっとシャツとネクタイの色を合わせたり、小手先でできることをちゃんとやっている人はたしかに多いのかも。
ヨウコ:その、ちょっとしたことをやれるのがいいんですよ。九州にはそういう男性は少なかったですから。
友清:そういえば今回、この会場の案内をヨウコさんにLINEで送ったところ、なんだかすごく感激した様子で「丁寧なご案内をありがとうございます!」と何度も返ってきたんですね。これ、あまり男性にもてなされてこなかった女性特有のトーンではないかと(笑)。
衣良:ああ、なるほど。それは確かにありそうだね。それにリアクションがあまりに丁寧だと、相手がかしこまってしまいがちだから、それで距離が縮まらないこともありそうだ。
ふと気がついた、“4回目の法則”
友清:ちなみにヨウコさんは、どんな男性が好みです? 何か求めるものがあれば参考までに。
ヨウコ:じつはそういうのもあまりないんですけど、求めるものを強いて挙げれば、尊敬と信頼ですかね。
衣良:ということは、もしかするとそこが間違っていたのかもしれないよ。本当にヨウコさんに合うのは、尊敬できる人でも信頼できる人でもなく、クズみたいなケダモノである可能性も否定できない(笑)。
ヨウコ:え、それはさすがに……(苦笑)。できれば知的な人がいいです。
衣良:でもなあ。そういう人に狙いを定めて、今日まで長続きできなかったわけだから、その結果は無視できないものがある。
友清:あるいは、付き合い始めてからのプロセスに何か問題があるのか。
衣良:なにか心当たりはある?
ヨウコ:うーん、それもやっぱりありません。ただ、私のなかで“4回目の法則”というのがあって。これは東京に出てきてから、いろんな男性とデートを重ねていくうちに気づいたことなのですが。
衣良:ふむふむ、どんな法則?
ヨウコ:私、いつも4回目のデートで相手をイヤになってしまう傾向があるんです。1回目でお互いを認識して、2回目にもう少し打ち解けてデートを楽しんで。もしかして次あたり告白してくれるかな……とワクワクしながら出かけた3回目のデートが、たいてい何もなく終わり。4回目でようやく相手が「付き合おう」といってくれることが多いのですが、その時点ではもうこちらの気持ちが冷めてしまっているんです。
友清:それはちょっと、見限るのが早くないすか(笑)。
ヨウコ:でも、その時点ではもう、相手に興味がないどころか、嫌悪感すら覚えるくらい引いてしまっているのがパターンで。自分でもどうしてこうなっちゃうのか、よくわからないんですよ。
衣良:あまり男性性が見えちゃうとダメなのかな。ギラギラ迫ってくる男性が苦手とか。
ヨウコ:それは別にイヤじゃないんです。だから単に、もともと好きでもない相手なのに、恋愛が始まりそうな雰囲気にドキドキしていただけなのかな、とは思いますが。
友清:恋に恋する、みたいな心境ですよね。たぶん、本当は2度目、3度目のデートの時点で、すでに恋愛対象としては見られなかった相手もいたんじゃないかな。でも、そういう本心を見て見ぬふりして、なんとか結論まで持ちこたえた、みたいな。
ヨウコ:あ、そうかもしれません。自分の気持ちを誤魔化しながら、次のデートの約束をしていた感はあります。
衣良:これは難しいなあ。やはりどうしても、男性に対する期待値の高さが邪魔をしているように見える。そもそも論でいうと、知識があって信頼できて全体的に尊敬に値するような男性は、ドラマのなかにしか存在しないからね。(……続きは『小説家と過ごす日曜日』Vol.017にてお読みください)
石田衣良ブックトーク『小説家と過ごす日曜日』
2016年3月11日 目次
00 PICK UP「好きな人の前で可愛く振る舞いたいのに……」
01 ショートショート「少年の汚れた手」
02 イラとマコトのダブルA面エッセイ〈17〉
03 “しくじり美女”たちのためになる夜話
04 IRA'S ワイドショーたっぷりコメンテーター
05 恋と仕事と社会のQ&A
06 IRA'S ブックレビュー
07 編集後記
大好きな本の世界を広げる新しいフィールドはないか? この数年間ずっと考え、探し続けてきました。今、ここにようやく新しい「なにか」が見つかりました。
本と創作の話、時代や社会の問題、恋や性の謎、プライベートの親密な相談……ぼくがおもしろいと感じるすべてを投げこめるネットの個人誌です。
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