津田大介
@tsuda

津田大介のメルマガ『メディアの現場』より

なぜ今、「データジャーナリズム」なのか?――オープンデータ時代におけるジャーナリズムの役割

(※この記事は2012年12月28日に配信されたものです)

 

今、世界中でジャーナリズムがデータとの結びつきを強めています。津田マガでも今年の10月からデータジャーナリズムの連載が始まり、vol.40 [*1] とvol.43 [*2] では「データジャーナリズムが切り開くジャーナリズムの未来」を掲載しました。日本ではまだあまりなじみのないデータジャーナリズムの概念を紹介することで新しいジャーナリズムのあり方を今後も皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。膨大なデータの中から「ストーリー」を見い出し、それをビジュアルに落とし込んでわかりやすく提示するのがデータジャーナリズムの基本的な概念です。なぜ海外のマスメディアはこの新しいジャーナリズムに注目しているのでしょうか。また、ジャーナリズムだけでなく、あらゆる分野で起こりつつある「ビッグデータ」の潮流とは? 今回は、海外のデータジャーナリズム事情に詳しい、駿河台大学経済学部専任講師の八田真行さん(@mhatta)にお話を伺いました。

 

あらゆる機関がデータの価値に気づきはじめた

津田:最近、「データジャーナリズム」「ビッグデータ」「オープンデータ」などに代表されるように、「データ」という言葉をあちこちで目にするようになりました。企業やメディアなどの産業界だけでなく、あらゆる機関や団体がデータの価値に気づきつつある。それが顕在化したのが2012年11月に行われた米大統領選挙だったと思うんです。もちろん、データジャーナリズムを駆使した各メディアの選挙報道 [*3] も面白かったのですが、選挙キャンペーンそのものにビッグデータが取り入れられ、結果を左右した。オバマの勝因は、データマイニング──大量のデータを入手し、処理・分析し、そのデータをSNSでつながった支援者たちの戸別訪問などに活かし、組織力で勝ったというのがもっぱらの評判です。日本でも衆院選が終わったばかりで、このあたりが個人的に興味があるところなんですけど、八田さんは米大統領選をどのように見ていましたか?

八田:データマイニングの勝利と言っていいでしょうね。前回、2008年の選挙戦では、SNSやFacebookを駆使したネット戦略がオバマを勝利に導いたと言われましたが、[*4] 今回は共和党──ロムニー陣営も、ツイッターのフォロワー水増し疑惑が報じられるほど [*5] SNSに関しては万全の体制を整えていた。[*6] 当然、オバマ陣営も相変わらずそこは抜かりなくて、たとえばFacebook用の面白いアプリを配ったりしているんです。アプリをインストールすると、スウィング・ステート(Swing State)──民主党の支持層と共和党の支持層が拮抗する、いわゆる接戦州に住んでいる友達が表示される。それをクリックすると、「オバマに1票入れてくれ」というメッセージが届くというね。知人からのお願いだからか、実際にメッセージを受け取った5人に1人がそのとおりに行動したらしいんですよ。[*7]

津田:ロムニー陣営も同じようなことをしていたらしいので、「SNSを武器にする」という点では両陣営の意識に差はなかった。となると、最終的に明暗を分けたのはデータマイニングを含めた手法の巧拙だったのではないかということですね。

八田:はい。オバマは今回、再選に向けた活動を始めるにあたってレイド・ガーニというデータマイニングの専門家 [*8] を主任研究員として雇い、[*9] データ解析チームを4年前の5倍の規模に拡大したと言われています。これは米国のニュース雑誌『タイム』のレポートに詳しいのですが、[*10] オバマ陣営の「The CAVE」と呼ばれるデータ解析チームが最初に着手したのは、キャンペーンオフィスが担当ごとに蓄積してきたありとあらゆる情報を一つに統合すること。世論調査、資金調達者、調査員、それから激戦州の民主党支持者の電話リストやSNSのアカウントなど、分散していたデータベースを18カ月もかけてまとめてから細かく分析し、予測モデルを組み立て、キャンペーンへと応用していったんです。

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津田大介
ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。1973年生まれ。東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース非常勤講師。一般社団法人インターネットユーザー協会代表理事。J-WAVE『JAM THE WORLD』火曜日ナビゲーター。IT・ネットサービスやネットカルチャー、ネットジャーナリズム、著作権問題、コンテンツビジネス論などを専門分野に執筆活動を行う。ネットニュースメディア「ナタリー」の設立・運営にも携わる。主な著書に『Twitter社会論』(洋泉社)、『未来型サバイバル音楽論』(中央公論新社)など。

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