※岩崎夏海のメルマガ「ハックルベリーに会いに行く」より
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「コモディティ人材からの脱却」には何が必要か
『戦略がすべて』という本を読んだ。
『戦略がすべて』 (新潮新書)
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この本は、現代のさまざまなトピックについてオムニバス的に書かれているのだけれど、通底するテーマは、人材がコモディティ化するようになってきた。コモディティ化した人材にはあまり明るい未来が待っていない。だから脱コモディティ人材になろう。そのためにはどうすればいいか——ということが書かれている。
この考えにぼくも大いに賛同する。ぼくの書いた『もしイノ』(※)も、人材がコモディティ化する時代にどうやってそこからの脱却を図っていくかがテーマだった。端的にいえば、それをイノベーションによって果たそうということが書いている。
※『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら』(ダイヤモンド社)
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この『戦略がすべて』には「教育」についても書かれているのだが、その部分を読んでいて気づいたのは、これからは脱コモディティ人材を育てる教育機関がクローズアップされるだろうということである。そういう教育機関に人が集まるし、当然それに伴って授業料も高くなるから、大きなビジネスの芽がある。
実際、今のアメリカの大学はその競争において一頭地を抜くため、どんどん授業料が高騰している。同時に、脱コモディティ人材を育てるためのノウハウも集積しているため、その価値はどんどん高まっている。
それに比べると、日本の教育機関は完全に後れを取った。2020年に入試改革があるから少しはましになるのかもしれないが、しかし「大学」は、もう教育機関としての機能を完全に失っていて、回復は絶望的ではないだろうか。ぼくは30年前に大学に進んだが、その頃にはもう何も学べないところになっていた。そういう状態がずっと続いている——いや、状況はどんどん悪くなっているほどだ。
だとするなら、アメリカと日本の大学の差は比べようがないくらいに広がって、やがて日本の有為な高校生が雪崩を打ってアメリカの大学に進学するという現象が起こるのではないだろうか。すでに中国や韓国がそうなっているように。
日本語しか使えない人材は圧倒的に不利?
そうなると、ぼくは日本の「英語化」というものも一気に本格化するのではないかと見ている。英語を話せるか話せないかが、脱コモディティ人材になるための欠かせない要素にしばらくなるのではないか。
ここでちょっと複雑なのは、真の脱コモディティ人材は英語が喋れなくとも需要がある。しかし真の脱コモディティ人材になるのは至難の業だから、ほとんどの人は並の脱コモディティ人材を目指すと思うのだが、そうなると英語が喋れないということは致命的な欠陥になる恐れが大きい。それに真の脱コモディティ人材にしても、似たようなスキルを持った者同士の頂上決戦になった場合、やっぱり英語を使えるか否かで差がつく可能性もあるので、それなら習得しておいた方が賢明という選択になるだろう。
ぼくなども、近頃は日本にいながらにして英語が喋れないことのハンデを日々感じるようになってきた。一つは、ぼくの本がなかなか欧米圏に届かないこと。ぼくは日本のローカル色が強い本を書いてきたので、なかなか欧米に分け入っていけない。その結果、非常に小さなマーケットの中で戦わざるを得ず、大きなビジネスにつながりづらい。
もう一つはYouTubeである。ぼくはYouTubeチャンネルを運営しているが、日本語で作っていたのでは日本人にしか届かないから不利である。
HuckleTV / ハックルテレビ – YouTube
https://www.youtube.com/user/genjiyamarotv
同時に、ぼくが見たいチャンネルも英語のものが多いので、その点でも不利益を感じる。ぼくがYouTubeチャンネルを英語で作ったら、今より10倍の視聴数は楽に稼げるだろう。それほど日本語は不利なのだ。
そういうふうに、日本に住んでいても英語を話せないことの不利をひしひしと感じるようになった昨今、この流れは想像以上に急速に来るものと見ている。そのため、これからの日本では英語教育にまつわる悲喜こもごもが今以上にくり広げられ、大変なことになるだろう。
また、そこでは教育そのものが大きな関心事となることも間違いない。日本の大学はもはや死に体だが、それに変わって世界のトップ大学にも引けを取らない新たな教育機関——形は分からないが私塾のようなもの——が日本にも現れるのではないかと思っている。
日本の教育も、歴史の中では何度も世界をリードするような場面があったので、それらが復権するというのはけっして難しいことではないと思う。ただし、くり返しになるがそれは大学ではなく、どこか別の機関、組織だと思うし、だからこそ、そこにイノベーションの、そしてビジネスの大きな芽があるのではないだろうか。
岩崎夏海メールマガジン「ハックルベリーに会いに行く」
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