小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ」より

フリック入力が苦手でもモバイル執筆が可能に! ローマ字入力アプリ「アルテ on Mozc」

※メールマガジン「小寺・西田の金曜ランチビュッフェ」2016年2月26日 Vol.071 <構造変化と成果の関係号>より

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フリック挫折組は試す価値あり? アルテ on Mozc

日本語の入力方法としてあと10年、20年後に何が生き残るのかというのは、子供を持つ親としても、あるいは教育者としても悩ましい問題だ。学校教育ではローマ字によるハードウェア・キーボード入力を学習のメインに据えているが、これ今の小学生が就職する10数年後にも現役バリバリで使われてるのか? と問われると、うーむと言わざるをえない。ピアノの鍵盤みたいに15世紀から続いてきたものは今更10年20年で駆逐されるとは思わないが、キーボード入力の存続性については予想がつかないのが正直なところだ。

ケータイが全盛の頃、若い子の入力方式が一斉に10キーになった。ハードウェアキーなので、ポケットの中でも手探りで入力できる。これからの文字入力は10キーが主力になるのではないかと言われた時期もあったが、スマートフォンの登場とともに消えていった。

そもそも10キー入力は効率が悪い。特に「お」段の入力は同じキーを5回押さなければならないので、ボタンを押した回数に対して入力される文字数が報われない。

スマートフォンの台頭で主力となったのは、フリック入力だ。「あかさたな〜」を10キー上に並べ、上下左右に滑らせることで50音を入力する。画面をタッチする回数は減るので、慣れた人なら飛ぶように入力できる。

若手のWeb記者の中には、取材メモをスマホとフリック入力で行なう人もいる。はたからみれば、一生懸命説明している人の前でスマホいじってるフザけた高校生みたいに見えるのだが、取材中なのだ。ただフリック入力は、親指の動く範囲がケータイ時代よりも広くなっているため、適度に休ませないと親指が腱鞘炎になる人も多い。

個人的には、10キー入力もフリック入力も、できなくはないが、あまり馴染めなかった。それというのも、もともとローマ字入力主体の頭になっているので、文字を入力するのに「あかさたな〜」で考えてないんである。

したがってスマートフォンを使うときは50音の10キー入力スタイル、パソコンを使うときはローマ字のキーボード入力スタイルと、頭を切り替える必要があった。スマートフォンでもキーボードを出してローマ字入力することは可能だが、タイプミスが多く、その修正に手間取る時間がもどかしい。何かうまい方法がないかとずっと探していた。

ローマ字入力の10キースタイル

しかしここに新しい選択肢ができた。Andoridのアプリとして提供されている「アルテ on Mozc」は、10キースタイルながら、ローマ字で日本語が入力できるソフトウェアキーボードだ。

・アルテ on Mozc

https://play.google.com/store/apps/details?id=com.uminekodesign.mozc.arte&hl=ja

母音がL字型に配置され、残りの部分に子音を表すアルファベットがある。つまり中央部から端、中央部から端と、常にそのパターンで文字を入力していく。すでに50音フリック入力をマスターしている人にとっては謎配列かもしれないが、ローマ字入力メインの人間にとっては、わりと納得できる配列である。母音の中に「Y」があるのは、「にゃ」「にゅ」「にょ」「ちゃ」「ちゅ」「ちょ」といった小書文字の入力に対応するためだ。

・アルテの入力画面

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母音を除いた7つのキーの中にすべての子音は搭載できないので、サブ扱いになっている子音もある。たとえば「さ」を入力するときは「S」-「A」とタイプするが、「ざ」を入力するときは「Z」-「A」だ。Zは、Sキーを右にスワイプすることで入力できる。この辺りは、50音入力のセンスも取り入れている。

入力はアルファベットを個別にポチポチとタップしてもいいが、指を離さずに連続でなぞって入力することもできる。「さ」であれば、「S」のキーを押して「A」の位置まで指を滑らせれば、入力できる。「ざ」の場合は、「S」のキーを押して一旦右に行ったあとAの位置まで滑らせる。いちいち指を離さないので、指の負担も軽減される。

子音+母音+母音のような入力も、連続で行ける。たとえば「労災」と入力したい場合、「R」を押して「O」に行きそのまま「U」まで滑らせれば「労」が、「S」を押して「A」に行き「I」まで滑らせれば「災」が、一気に入力できる。感覚的には、漢字1文字を1ストロークで入力できる感覚に近い。

漢字変換エンジンは、Google日本語入力をベースにしたMoscなので、効率も悪くない。人名など変換が難しいものは、スペースキーを押し続けると、ネット上のクラウド変換「Google CGI API」にアクセスして、変換結果を得ることができる。さらに「Social IMEで変換」のボタンも出るので、そちらに切り替えることもできる。

・宗千佳どこぉ!

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・そんな時Google CGI APIに切り替えると一発

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・Social IME

http://www.social-ime.com/conventional.html

アルテはまだ今週に入ってからテストしているところなので、まだそんなに手に馴染むまではいかないのだが、50音フリック入力時に感じた「先が思いやられる感」がない。これまでスマートフォンでまとまった原稿を書くには、Bluetoothキーボードを繋がないとどうにもならなかったが、アルテの登場でモバイル執筆に光明が見えてきた。

実際にこういった変則的な入力方式を試してみると、日本語入力の将来像とは、人それぞれ自分の好みの方法がバラバラに混在するのかもしれないなとも思う。入力法が違っても結果が同じなら、それでいいのだ。

ハードウェアとしての入力装置を使い続けるならQWERTYキーボードなのかもしれないが、入力メソッドがソフトウェア化された今、もはや「スタンダード」みたいなことを考えるのが古いのかもしれない。

 
 

小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ

2016年2月26日 Vol.071 <構造変化と成果の関係号>目次

01 論壇【西田】App Annie調査レポートから読む「アプリ市場の今と未来」
02 余談【小寺】フリック挫折組は試す価値あり? アルテ on Mozc
03 対談【小寺・西田】鈴木淳也さんに聞く「ITと決済」の今(3)
04 過去記事【西田】スポーツシューズを作る人
05 ニュースクリップ
06 今週のおたより
07 今週のおしごと

 
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