※高城未来研究所【Future Report】Vol.571(2022年5月27日発行)より
今週は、キューバの古都トリニダにいます。
かつて、近隣のロス・インヘニオス渓谷に巨大なサトウキビ農場と砂糖工場があったため古くから栄えていたトリニダは、中心地だけなら徒歩10分ほどで一周できてしまうほどの小さな街で、現在は観光地として栄えています。
地面は石畳でできていて、建物の壁はカラフルな色に塗られ、50年代のアメリカン・ヴィンテージカーと馬車が走るため、ちょっとしたタイムスリップ感覚があることから欧州からのゲストに大人気の観光地となりました。
2000年には、ロス・インヘニオス渓谷と共に世界遺産にも認定されています。
しかし、新型コロナウィルス感染拡大の影響を多大に受け、3年前の20分の1まで観光客が激減。業を煮やした政府は、昨年11月から海外渡航客に対する隔離義務も入国時のPCR検査も廃止し、閉鎖していた国内空港の大半もオープンしました。
というのも、キューバ観光のハイシーズンは11月から3月で、欧州が寒くなる時期に避寒地として人気を博しているから、ここで稼がねばなりません
是が非でもハイシーズンに観光客を呼び込まねば観光業者の生活を維持できないのですが、結果はウクライナ紛争や航空運賃の高騰などもあり、思ったより呼びこめなかったのが現状です。
この惨状は、トリニダに限りません。
カンクンやマラケシュなど、パンデミック以前、GDPに占める観光業の割合が高かった都市は、今後、復興にかなりの時間を要すると思われます(https://www.traveller.com.au/cities-most-reliant-on-tourists-for-their-economies-named-highest-percentage-of-gdp-from-tourism-h1717r)。
また、トリニダはキューバのなかでもダンス・ミュージックの中心としても知られてます。
一般的にキューバの音楽で有名なのは「サルサ」ですが、実はキューバ生まれの音楽ではありません。
およそ100年前、サンティアゴ・デ・クーバで生まれ、当時一世を風靡したダンスミュージック「ソン」が、キューバ革命後、亡命キューバ人によって米国にもたらされ、それがニューヨークでドゥーワップ、R&B、ソウルやジャズ、ロックと融合して生まれたのが「サルサ」です。
このあたらしい音楽に飛びついたのは、亡命キューバ人たちだけではありませんでした。
プエルトリコ人をはじめとする米国で暮らすラティーノたちに支持され、瞬く間に大ブーム。
こうして「サルサ」は、アフロキューバンやプエルトリコの影響を受けたカリブ海の音楽すべてにつけられた商業的な名称となり、アメリカ人とラティーノたちの文化交流の切り口となっていきます。
その後、ニューヨークで生まれた「サルサ」が再び南下し、マイアミのキューバ人コミュニティで流行し、逆輸入する形でキューバに流れ込みます。
首都ハバナでは勿論、もともとダンスミュージックを屋外で踊る風習が根付く古都トリニダで、毎晩のように巨大ダンスパーティが開かれるようになるのです。
街角の広場で踊るサルサから反響音が楽しめる洞窟ディスコのレゲトンまで。
世界遺産トリニダの街は、写真では見ることができないリズムが、閑散とした街角から今日も変わらず軽快に聞こえてきます。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.571 2022年5月27日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。


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