本田雅一
@rokuzouhonda

メルマガ「本田雅一の IT・ネット直球リポート」より

ドイツの100年企業がスマートフォン時代に大成功した理由とは?

※この記事は本田雅一さんのメールマガジン「本田雅一の IT・ネット直球リポート」 Vol.019(2018年4月27日)からの抜粋です。




スマートフォン時代の到来以降、大きくカタチを変えた家電市場に順応し、大成功を納めた独beurer(ボイラー)の成功事例である。日本では馴染みのないこのメーカーだが、元はウォーム・パッド、すなわち電気アンカ、電気毛布などの暖房器具メーカーだ。創立はおよそ100年前だという。
https://www.beurer.com/

しかしボイラーはスマートフォンとIoTのトレンドに乗って製品ラインナップや機能を整理し直し、ヘルスケアやウェルネスといったジャンルに力を入れ、現在ではさまざまな地域で各ジャンルトップクラスのシェアを持つIoT製品メーカーへと生まれ変わったという。日本で言うと、オムロンやテルモといった会社の商品ラインナップに近く、血圧計やグルコース計などもある一方、ヘアドライヤーや脱毛器具などのビューティー製品、アクティビティトラッカー(活動量計)、マッサージ機なども扱っている。

血圧計はドイツでシェア1位を獲得している他、欧州市場で2位、ビューティー製品はグローバルで5位、体重計も欧州2位、得意の電気暖房器具や電気マッサージ機はトップシェアだ。いずれもグローバルのトップブランドとまでは言えないが、しかし伝統的な暖房器具メーカーのサクセスストーリーと捉えると興味深い。

例えばビューティー製品はパナソニックの成長を見て力を入れ始めた分野で、このところの成長ジャンルとのこと。貪欲に世の中の状況をみながら、売れる製品を模索することで今の製品ラインナップが作られているが、実はそうした売れる製品ジャンルへの挑戦だけが彼らの成長を支えているのではない。

ボイラー社長でドイツ電気電子工業会の理事会長も務めるGeorg Walkenbach氏によると、これらは近年、スマートフォン向けのアプリ開発を強化した結果、業績へと繋がったものなのだという。そうして得意の製品ジャンル(ヘルスケア、ウェルネス)でのブランド力を高めた上で、新しいジャンルへと挑戦している。

彼らがもっとも力を入れたのが、スマートフォンアプリと背景で動くサービスだ。伝統的な電気製品メーカーだけに、製品数は400もあるそうだが、そのうち60以上の製品がスマートフォンとの接続機能を持ち、ユーザーインターフェースやデザイン、クラウドを通じたデータ共有など、一貫性のあるプラットフォームで12種類のアプリをリリースしている。

ヘルスケア、ウェルネス製品を積極的にデジタル化した上で、そのデジタルデータをネットワーク上で統一的に管理。それによって健康や体調の大まかな動きを管理するとともに、家族間などで適切に情報を共有したり、友人などとの間でモチベートしあうといった、今日的にはよくあるIoTの実装を、実に幅広い種類の製品で展開している。

すべてのアプリは内製だ。内製なのは当たり前……と思うかもしれないが、こうした“伝統的家電メーカー”が、他社のソリューションを活用して製品を開発。結局、ジャンルごとに異なるパートナーと製品開発を行い、ブランドは同じなのにアプリを通した体験は乖離している、という場合は決して少なくない。大手メーカーにおいても、部署ごとに異なるデザインやユーザーインターフェース、データ・ストレージなどに分断され、統一された体験が提供できていないケースがあるぐらいだ。ボイラーの製品群が、一貫性のある体験を提供できなかったとしても、決して珍しいことではない。

しかし、ボイラーはネットワークで多くのデバイス、移動体などが継がれた世界をイメージして、商品企画や製品開発の方向性を考え直した……


(この続きは、本田雅一メールマガジン 「本田雅一の IT・ネット直球リポート」で)

 

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2014年よりお届けしていたメルマガ「続・モバイル通信リターンズ」 を、2017年7月にリニューアル。IT、AV、カメラなどの深い知識とユーザー体験、評論家としての画、音へのこだわりをベースに、開発の現場、経営の最前線から、ハリウッド関係者など幅広いネットワークを生かして取材。市場の今と次を読み解く本田雅一による活動レポート。

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本田雅一
PCハードウェアのトレンドから企業向けネットワーク製品、アプリケーションソフトウェア、Web関連サービスなど、テクノロジ関連の取材記事・コラムを執筆するほか、デジタルカメラ関連のコラムやインタビュー、経済誌への市場分析記事などを担当している。 AV関係では次世代光ディスク関連の動向や映像圧縮技術、製品評論をインターネット、専門誌で展開。日本で発売されているテレビ、プロジェクタ、AVアンプ、レコーダなどの主要製品は、そのほとんどを試聴している。 仕事がら映像機器やソフトを解析的に見る事が多いが、本人曰く「根っからのオーディオ機器好き」。ディスプレイは映像エンターテイメントは投写型、情報系は直視型と使い分け、SACDやDVD-Audioを愛しつつも、ポピュラー系は携帯型デジタルオーディオで楽しむなど、その場に応じて幅広くAVコンテンツを楽しんでいる。

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