やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

「控えめに言って、グダグダ」9月政局と総裁選


 8月31日深夜になって、突然「総理・菅義偉さんが9月中の解散を模索している、と有力議員から情報提供があり、関係先の情報収集をしている」という、ちょっとビックリな騒ぎが発生。

 事実とするならば、すでに決まっている9月17日告示、29日党大会で投開票との自民党総裁選が延期になる話で、そんなことはもう動かないと思っていた調査方も大騒動で、それであれば来週にも臨時国会、そこで解散という話になると10月17日投開票日と思って動いていた人は肩透かしであります。

 途中、連立先である公明党にはまったくそのような話が入っていなかったことが分かり、また、同日に総裁選挙管理委員会が会合を開いて変更なく総裁選実施の段取りであることが明確となったため、一連の毎日新聞の観測報道は無事にガセネタであるということが確認されたわけであります。追認のように、菅義偉さんからも9月中の解散は行わない旨の発言が引き出せて着地したわけですが、みんな何を焦ったかというと「総裁選もやらずに党人事や小幅な内閣改造で不人気菅義偉さんを担いで解散による衆議院選挙を戦えるのか」という話であります。

 仮に9月17日に臨時国会召集で冒頭解散とした場合、解散の日から40日以内に衆議院議員総選挙を行わなければならないので、それでも一週間しか時間が稼げないけど、自民党総裁選はその後になりますので菅義偉さんはどうであれそこまでは総理であり、選挙を戦うことになるわけです。ここで勝敗ラインが「自公で過半数」とか緩めでいった場合、指名した新幹事長や閣僚のメンツ次第では不人気であり続けたとしても菅義偉さんはめでたく総裁再選となります。

 また、リークされた内容で興味深かったのは、官房長官に河野太郎、幹事長に石破茂という、人気はあるけどその任に耐えるか未知数の人選が広がったことです。話の出元は二階俊博さん本人ではなくその側近議員であったことも考えると、牽制として菅義偉さんとは人事面で必ずしも折り合ってませんよと表明したも同然です。

 大綱で出た岸田文雄さんが、劣勢を跳ね返すムーブとして安倍晋三さんや麻生太郎さんに二階俊博さんの幹事長交代を具申したのを受けて、あっさり菅義偉さんが二階俊博さんに幾つかの条件をもって幹事長交代を了承させてしまったため、これもまた封じられることとなり、また、本来であればここで党三役人事もいったん沙汰止みになったはずでした。官邸からは「いまの改造はあり得ない」という話がありつつも、二階さんの後任は目星をつけねばならず、一部では麻生太郎さんと麻生派の甘利明さん幹事長で握ったとか、前述の石破茂案があるとか、本人の了承も特にないのに名前だけが取りざたされるという不思議なことになったわけです。

 同様に、すでに一部でフライングで情報が出ていますが、自民党の政治資金の使途が公開されて、30億円以上が二階俊博さんと関係のある政治団体に支払われていたのではないかという話が出ました。いずれ報じられることとはいえ、二階さんを引っ張る必要もなくなればこの話もまた沙汰止みになりますので、好都合とも言えます。

 二階派は30日ぐらいからずっと「このままでは切られない」と条件闘争をするような話もまたしていたわけですが、切り札はいまだに小池百合子さんの自民党への電撃復帰、受け入れ先は二階派という流れです。それこそ、いまは無所属だけど二階派には籍があるという謎の秋元司さんのこともあるので、二年間の自民党費さえ払っていれば小池さんは何とでもなる、そのウルトラCは手放さないというのが二階さんの伝家の宝刀であることは間違いないのです。

 他方、連立先の公明党からは、現在議員スキャンダルも出ている最中ではありますが、ここにきて「維新との協調は閣外協力で」という話で取り決まったという話が流れていて、これはまあ当然とも言えます。先般、維新の社会保障改革で公明党からすれば飲みようのないベーシックインカムがかなり雑な感じで提言され、おまえ基礎年金と年金基金全部国庫に繰り入れて国税一本化を図ろうというのは良いけどそれ以外の社会保障費は大幅削減待ったなしになって財源的に足りないしどうするんやこれというあたりは騒動になるでしょう。

 そうなると、菅さんが構想するような迂闊に維新にすり寄って将来的な大連立を模索するよりも、小池百合子さんを担ぎ出してきて当面の選挙を議席が減らないように乗り切ったほうが自民党としても公明党としても得、となればそっちに流れても不思議はありません。

 このあたり、本来ならば不人気と不満が渦巻く党内の糾合で岸田文雄さんや高市早苗さんがもっと存在感を出して然るべきところ、岸田さんからすれば頼みの綱であった二階更迭論は菅さんに先手を打たれ、高市さんもさしたる党内人気もなく菅義偉さんに勝てる雰囲気もないため、結果として幹事長を後退させられる二階さんのところにある小池百合子カードばかりが注目されるのも仕方がないとも言えます。そのまま何もなく菅義偉さんが総裁再任して選挙に負けしぶしぶ大連立となるよりは、乾坤一擲・総裁に小池百合子さんを担いだほうがいいとならない保証はいまのところ何もなくて、こちらも困っているわけです。

 何より、前回の都議選で、病気療養と言っておきながら(いまだに小池百合子さんが当時どこに入院していたのかさえ定かではない)、苦戦必至とされた都民ファーストの議席を投開票日までの最後2日で一気に盛り返したのは小池百合子さんの底力、人気に他ならないため、これを逃すのもおかしいというのも道理です。

 選挙互助会としての側面も持つ自民党は、いまなお小池百合子アレルギーがありますし、いざ本当に国政に来られたところで今度はまた都知事選で50億円ガチャをやる羽目になることを考えると、もはや打てる手も少なくなり、誰がどこで英断を下すかを固唾飲みながら見守るのみということになるのでしょうか。

 最後に、小池新党(希望の党を考えると新・新党なのでしょうが)や国民民主党の云々に関しては、小池新党はさすがにこの時期から仕込んでも間に合わないだろうというのが一つと、国民民主党はこれ以上飛び技はなさそうだということで、可能性としては消えたんじゃないかと思っています。さすがに、二度まで載せられることはないだろうという希望的観測なわけですが、ある意味で本当に小池百合子さんはジョーカーで、切り札であり敗因・混乱の原因にもなり得る存在ですから、あまり多くを期待しないほうが良いのではないかとも思う面もあります。

 なので、夏休みの終わりに凄いすったもんだをしましたけれども、やはり総裁選はやり、10月17日投開票日を本線に動いていくんじゃないのかなあと保守的に見ているのですが、どうでしょうか。
 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.Vol.344 9月政局と総裁選についてあれこれと絶望しつつ、プラットフォーム事業者による言論規制や知財ビジネスにおけるチャイナリスクを語る回
2021年9月1日発行号 目次
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【0. 序文】「控えめに言って、グダグダ」9月政局と総裁選
【1. インシデント1】YouTube小林よしのりチャンネルBANの波紋
【2. インシデント2】中華「Arm China社」知的財産ロバリーと今後
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

 
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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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