名越康文
@nakoshiyasufumi

『SOLO TIME 「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』より

成功を導くのは、誰からも評価されない「助走期間」だ–天才を育む「ひとりぼっちの時間」(ソロタイム)

スティーブ・ジョブズ、アルバート・アインシュタイン、トーマス・エジソン……時代を切り開いてきた天才たちにも、不遇の時代がありました。

最新刊『SOLO TIME (ソロタイム)「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』が話題の精神科医の名越康文さんは、そうした誰からも適切な評価を受けない時間こそが、その人の持つ才能を開花させる上で大切だと語ります。

 

 

「本物の才能」ほど、群れの中では正しく評価されない

 

「人は誰でも、その人だけの才能を持っている」ということを、多くの人が口にします。しかし、現実には「才能」を開花させ、大きな成功を収めている人はごく稀です。

若い頃「才能がある」と評価されたとしても、その世界で20年、30年という長い時間にわたって高い評価を得続ける人は残念ながら、わずかです。

しかしながら私は、そうした現実を踏まえた上で、やはり「人は誰でも、その人だけの才能を持っている」と申し上げたいと思います。なぜなら、そもそも「才能」というものの本質は、「まだ他人からの評価が定まっていない能力」にあるからです。

頭の回転が早い、歌が上手い、上手に踊れる、端正な文章を書く……そういう、明らかに他人より秀でた能力を「才能」と呼ぶことを、私は否定しません。しかし、後に世界を驚かせるような才能というのは、そんなふうに「わかりやすい評価軸」で評価しようのないしろものです。

考えてみれば当然のことです。まだその価値を評価する物差しを誰も持っていない「才能」だからこそ、本当の意味で「世界を変える」ことができるのですから。

トーマス・エジソン、アルバート・アインシュタイン、スティーブ・ジョブズ……世界を変えるような「本物の天才」たちは、社会的(それはすなわち、群れの中の評価基準において、ということです)に認められるまでは、周囲から「変人」「役立たず」といわれていた人たちです。

しかし、まさにその「役立たず」とされた部分にこそ、彼らの「才能」は宿っていたのです。

私たちは、エジソンが作った電球や、ライト兄弟が作った飛行機や、スティーブ・ジョブズが作ったiPhoneの素晴らしさを理解することはできます。しかし、それらを生み出す元になった彼らの「感性」や「感覚世界」そのものについては、ほとんどといっていいぐらい、理解も、共感もできていません。そして、「才能」の本質は、そうした周囲の理解も共感も得ることができない感性や感覚世界にこそ宿るものなのです。

群れの中ですぐにもてはやされ、賞賛される才能は、いってしまえば「手垢がついた才能」に過ぎません。それは過去の何かの焼き直しである可能性も、少なくない。本当に新鮮で、新しい世界を切り開いていくような才能は、群れの中で過ごしている限り、周囲からはなかなか「才能」として認識されないものなのです。

 

「才能の芽」を摘まないために

本当の才能は、それがどんな価値を持つものなのか、開花したあとでないと評価しようがないものです。

しかし、だとすれば私たちはどうやって、それを見出し、伸ばしていけばいいのでしょうか。

まだ価値があるのかどうか見当もつかないもの。そこに「才能」を見出すには、どうしたらいいか。これは、子育てをしている親御さんや、学校の先生、会社の上司など、誰かを教育する立場にある人であれば、誰もが頭を悩ますところでしょうか。

確かに、これは難問です。しかし、少なくとも心理学的には「才能の芽」を育てるうえで、ひとつの原則があります。それは「物事に集中する時間が、才能の芽を育む」ということです。

私たちは何かに集中しているとき、「群れ」からの評価を気にせず、自分の内側にある、自分だけの尺度で物事に取り組むことができます。それは、私の考える「ひとりぼっちの時間=ソロタイム」そのものです。

飛行機作りに邁進するライト兄弟は、おそらく、周囲からは「狂気」に取り憑かれているように見えたはずです。しかし、その狂気に満ちた時間の中で、彼らは人類史を変える足跡を残しました。

時を忘れるほど物事に没頭している時、その人は、所属する「群れ」から、排除され、孤立してしまいがちです。しかし、本当の才能は、そのような「誰からも才能を見出されない助走期間」によってのみ、育まれるものなのです。

 

本物の才能は、誰からも評価されない「助走期間」に育まれる(イラスト:伊藤美樹)

 

良い教師は余計な口出しをしない

親は子供の、教師は生徒の、上司は部下の、一人ひとりに秘められた才能を開花させてやりたいと願うものです。しかしながら、才能が花ひらく前の「助走期間」の間に、その人の才能を周囲の人間が適切に評価することは困難です。

まだ評価の定まっていない才能に対して、周囲の人間ができることは、その人が時折見せる、(ある種狂気に満ちた)集中時間=ソロタイムをなるべく邪魔せず、見守ることだけだと私は考えます。

その人が何かに集中し、没頭することを邪魔しない、ということこそが、才能を開花させるという観点では、もっとも効果的なのです。

ただ、その一方で、子どもの才能を引き出す上で、親や教師がやるべきことがあります。それは、矛盾しているように感じるかもしれませんが「社会に適応する方法を伝える」ということです。

世の中には社会適応能力に欠けていたがために、才能を花開かせることができなかった「破滅型の天才」と呼ばれる人たちがたくさんいます。彼らがほんの少し、社会に適応することができていたら、どれだけ多くのものを生み出せたでしょう? 社会適応に失敗することによって、日の目を見ることができなかった才能というのは、少なくありません。

 

相対性理論を発表し、科学史に巨大な足跡を残した天才、アルバート・アインシュタインが大学の研究室に職を得たのは、30代になってからのことです。それまでの間、彼は、特許庁の職員という、(世間的にはそれほど華やかとは言えず、直接的には研究分野にも関係ない)職場にいました。

これは言い換えれば、彼ほどの天才にしても、その才能が開花し、世間がその真価を認めるまでの間は、社会の中での「居場所」が必要であった、ということです。

誰にでも、持って生まれた才能はあります。しかし、才能が花開くその日までは、群れの中で生き延びていくということは、欠かせません。その方法を丁寧に伝えておくことだけが、親や教師が、子どもや生徒の才能を開花させるにあたってできる、最良のサポートなのです。

親や教師、会社の上司は、子どもや生徒、自分の部下の才能を引き出そうと、あれこれ世話を焼きたがるものです。しかし、私たちが知っておくべきことは、私たちは決して「助走期間」のただ中にある<才能の芽>を正しく評価することはできない、ということです。

才能を育む、大切な<助走期間>の間に周囲の人間ができること。それは、その人が社会、すなわち群れに馴染み、生き延びることができるように教育し、支援することだけなのです。

 

天才を育む「ひとりぼっちの時間」の過ごし方、教えます。

新刊『ソロタイム(Solo Time) 「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』

著者:名越康文
四六版並製、256ページ
ISBN:978-4906790258
定価1600円+税
夜間飛行 2017年6月12日刊

アマゾン→http://amzn.to/2raktov

ヤフーショッピング→http://store.shopping.yahoo.co.jp/yakan-hiko/906790258.html

honto

https://honto.jp/netstore/pd-book_28512870.html

 

■内容

他人の言葉や常識に振り回されず、
納得のいく人生を送るために必要な
新時代のライフスタイルの提案!

5000人のカウンセリング経験から得た精神科医の結論!

「会社や家族、友人や恋人といったさまざまな人間関係を維持していくことだけに、人生のエネルギーと時間の大半を注ぎ込んでいる人は少なくありません。しかし、そのことが、現代人の不幸を生み出しています。
人間関係は大切だけれど、それ自体は人生の目的ではないのです」

「日ごろの人間関係からいったん手を離し、静かで落ち着いた、ひとりぼっちの時間を過ごす。たったそれだけのことで、何ともいえないような虚しさが、ふっと楽になった、という人は、少なくありません」
(本書より)

<<<人生を変える、ソロタイム活用法>>>

部屋を片付ける/旅に出る/古典やSFを読む/大きな決断の前には気分転換をする/他人を変えず自分が変わる/仕事や勉強よりも大切なのは「落ち着く」こと/小さな怒りを払っていく/姿勢を整えてしっかり息を吐く/拭き掃除をする/小さいことから習慣を変える/夕飯ヌキのプチ断食をする/家族や友人、同僚に対して毎回「はじめまして」という気持ちで接する/いつもと違うキャラになる/夜中にひとりで散歩をする

<目次>
第1講 あなたは群れの中で生きている
第2講 本当の自分の見つけ方
第3講 自分の心に打ち勝つ
第4講 身体に秘められた知恵と出会う
第5講 人生を変える習慣の力
第6講 もう一度、人と出会う
(目次より)

 


<著者プロフィール>
名越康文(なこしやすふみ)

1960年、奈良県生まれ。精神科医。相愛大学、高野山大学客員教授。
専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現:大阪府立精神医療センター)にて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て、1999年に同院を退職。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。
著書に『心がフッと軽くなる「瞬間の心理学」』(角川SSC新書、2010)、『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)、『『男はつらいよ』の幸福論 寅さんが僕らに教えてくれたこと』(日経BP社、2016)などがある。

夜間飛行よりメールマガジン「生きるための対話」、通信講座「名越式性格分類ゼミ(通信講座版)」配信中。
公式サイト
http://nakoshiyasufumi.net/

名越康文
1960年、奈良県生まれ。精神科医。相愛大学、京都精華大学客員教授。 専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現:大阪府立精神医療センター)にて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て、1999年に同病院を退職。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。 著書に『心がフッと軽くなる「瞬間の心理学」』(角川SSC新書、2010)、『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『質問です。』(飛鳥新社、2013)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)などがある。 名越康文公式サイト「精神科医・名越康文の研究室」 http://nakoshiyasufumi.net/

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