やまもといちろう「人間迷路」

実力者が往々にして忘れがちな「フリーランチはない」 という鉄則

やまもといちろうさんのメルマガ「人間迷路」Vol.108<役務ビジネスの罠に嵌る最手『ミュゼ』の浮沈とNFC、そして佳境に入る茂木対談の回>より

先日、ブラック企業批判の矛先であり続けたゼンショーHD「鍋の乱」から始まった問題について、第三者委員会が報告したpdfは非常に話題になりました。

調査報告書
http://www.sukiya.jp/news/tyousahoukoku%20A_B.pdf
「すき家」労働環境改善のための調査報告書受領について
http://www.zensho.co.jp/jp/news/company/2014/07/20140731.html

いわゆるブラック企業批判や、子供の貧困率といった日本の衰退と企業のあり方についてのさまざまな報道や言説を見るにつけ、限られた生産力でどのようなパフォーマンスを上げていくのが日本社会にとって望ましいのかという視点がなかなか定まらないなという印象です。

というのも、若年労働者は減少する一方であるにもかかわらず、若年層の失業の問題が発生しています。仕事のやりがいという意味でも報酬でも充分とは言えない高齢者介護の仕事に就きたい人々は限られていて、旺盛な採用需要があるにも関わらず生活保護も含めた生活困窮者の問題はNHKでも取り上げられて話題になっています。

おなかいっぱい食べたい ~緊急調査・子どもの貧困~
http://www.nhk.or.jp/gendai/yotei/index_yotei_3556.html

メタ的に言い切ってしまえば、国の経済が衰退して生活レベルが切り下がるというのはこういうことなのだ、で終わりです。ただ、終わらせていけない目の前の生活に対して、いま取り組まれていることが不充分であり、それは善意や努力のような精神力だけではどうにもならないのもまた事実です。

貧困と高齢化という負荷を背負いながら日本がそれらを見ないことにして資金をバラ撒いて地方創生と言える時代はとうに過ぎたと思いつつも、では代案として世の中をうまく回す仕組みは何だろうかと考え始めると非常に重いものがあります。どうにもならないものは捨ててしまえとは言えないのが社会であり、政治なのだとしても、本当にどうにもならないところを助けるために助かる人たちも犠牲にするべきではないのもまた事実でありまして。

そうなると、衰退を受け入れて次の飛躍にどう繋げていくのかを考えるための工夫というものは、どうしても必要になると思うのです。そこには右も左もなく、ただただ目の前の悲惨な現実と明るくない未来だけがあるということに他ならないわけですが。

冒頭の「フリーランチはない」、すなわち、何かを得るには何かを犠牲にする必要があって、魔法のような特効薬なるものは無いのだ、という前提で、何を進め、何をしないかをそろそろ社会全体で議論しておくべき時期にさしかかっているのだと思います。

 

やまもといちろうメルマガ「人間迷路」Vol.107

<実力者が往々にして忘れがちな「フリーランチはない」 という鉄則>

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目次
【0. ヘッドストーリー】実力者が往々にして忘れがちな「フリーランチはな
い」という鉄則
【1. インシデント1】『英会話NOVA』再び? 風雲急を告げる『ミュゼ・プラチ
ナム』前受金先食い問題
【2. インシデント2】Googleが失敗したNFC利用のモバイル決済サービスに今度
はAppleが挑戦
【3. 特別対談その2】茂木健一郎×山本一郎 『小保方問題、ネトウヨとの絡み
方などなどについて茂木健一郎さんに直接ツッコミを入れてみた』(4/5)
【4. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A
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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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