さる11月、5年以上前に出した著書である『驚く力』の文庫版が出ました。
加筆修正、見出しの改稿、『ソロタイム ひとりぼっちこそが最強の生存戦略である』でもお世話になったイラストレーター、伊藤美樹さんのイラストもたくさん入れて、新装開店!! でのお届けとなりました。ここでは、文庫版のあとがきを、メルマガ読者のみなさまにお届けします。
『驚く力』文庫版あとがき
今回、文庫版の出版準備を進める中で、驚いたことが2つあります。一つは、本書『驚く力』が、思いのほか、「読みづらい」ものであった、ということです。
これはおそらく、当時、私の心理学がまだ十分に整理・体系化しきれておらず、言葉も足りないために、十分に表現しきれなかった、ということなのでしょう。
刊行から四年が経ち、その間、メールマガジン「生きるための対話」を中心に、さまざまな角度から、自分の心理学を言葉にする試みを重ねてきた今の視点で見ると、「言いたいことがあるのに、言葉が追いついていない」という印象を受けました。
ただ、書かれていることは新鮮であり、また、今日の社会の問題意識とも、十分リンクしているとも考えました。考えた末、一部の表現を改めたつつも議論の流れはそのまま残すことにしました。その代わり、見出しやリードについては大きく改変、さらにイラストを加えることで、読者の理解を助ける作りを目指すことになりました。
結果、本書は単なる「文庫版」というより、リニューアルの新版、という趣旨のものになったと感じています。
もう一つ、驚いたことは、私が二〇一七年に書き下ろした新刊『ソロタイム(SOLO TIME) 「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』(夜間飛行、2017/以下、『ひとりぼっち』)と本書の間にある、奇妙な「呼応」関係でした。
お恥ずかしい話ですが、私は出版されてしまった本の内容は、ほとんど忘れてしまう人間です。(だからこそ、今回の文庫版を読んでいても、まるで誰か他の人が書いた本を読んでいるような気持ちになります)
しかしながら、四年の年月をまたいだ二冊の間には、さまざまなところに、つながりや、呼応、響きあうものが感じられました。
もちろん、同じ人間が書いているのですから、それは当然のことなのかもしれません。ただ、取り上げている具体例やテーマは、本書と『ひとりぼっち』の間には、それほど似通っているわけではないのです。むしろ、まったく別の話をしているのに、どこか、奥の方で響き合っているように感じられる。そういう面白さが、この二冊の間にはあると思います。
ぜひ、この2冊をどちらも読んでいただいた方の感想も聞いてみたいな、と思います。ツイッターやメルマガなどに、感想をお寄せいただければ嬉しいです。
本書の文庫版では、伊藤美樹さんに、素敵なイラストを描いていただきました。伊藤さんには、『ひとりぼっち』でもたくさんのイラストをいただきましたが、前回に負けず劣らず、深い理解に基づいたイラストだと感じました。
また、夜間飛行の編集の鳥居さんには、今回もひとかたならぬお世話になりました。
みなさんが、内なる「驚く力」を、さらに高められることを祈って。
2017年10月 名越康文
『驚く力 矛盾に満ちた世界を生き抜くための心の技法』
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リニューアルして文庫版として登場!
目次
第1章
思い込みを捨てよう
第2章
過去の自分から手を放そう
第3章
不安の九割はあてにならない
第4章
心の速度を落として、人生をもっと楽しむ
第5章
「第二の所属」を作ろう
第6章
無駄話を楽しもう
第7章
出会いの質を高めよう
第8章
「言葉」を深め、「驚く力」を育てよう
『Solo Time 「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』
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