【不定期連載】編集のトリーさんの事件簿

祝復活! 『ハイスコアガール』訴訟和解の一報を受けて

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いやー、めでたい。

何がめでたいって漫画『ハイスコアガール』の連載・販売の再開が決まったみたいなんですよ。

『ハイスコアガール』についての重要なお知らせ | ビッグガンガン
http://www.jp.square-enix.com/magazine/biggangan/pop20150826.shtml

『ハイスコアガールについては、ちょうど1年前から、著作権侵害での刑事告訴という深刻な事案が発生していました。

「ハイスコアガール」の著作権侵害でSNKがスクエニを刑事告訴した理由とは?(2014年8月6日)
http://gigazine.net/news/20140806-highscoregirl/

月刊ビッグガンガンで連載され、単行本化されていた漫画『ハイスコアガール』の作中で、SNK社が権利を保有するゲームのキャラクターを無断使用したということで、発行元の株式会社スクウェア・エニックスを刑事告訴した、というのがことの概要だったわけです。

もちろん、当事者間ではさまざまなやりとりがあり、こじれにこじれた末の刑事告訴だったことは想像にかたくない、というか、あんなことやこんなことを想像してしまうわけですが、一ファンとしては、とにかく、

「続きが読みたい!」

という思いが募りに募る1年間であったわけです。やった!

ついに春雄への思いを打ち明けた日高小春の恋の行方はどうなるのか。大野の操るザンギエフはどれくらい強くなってるのか? なみえお母さんのかっこいいタンカはもう一度聞けるのか?

とにかくもう、いろいろと妄想していた一年間であったわけですよ。

また、一出版人としては、こうした事案において、作者である押切蓮介先生が書類送検されてしまった事実を、重くみておりました。

というのも、このあたりの法的処理に責任を持つからこそ、出版社という商売は成り立っていると思うからです。もちろん、作者の責任がゼロだというつもりはありませんが、書類送検された大阪府警の刑事にしてみれば、そんな出版業界の「空気」など関係ないわけで、「これを書いたのはどいつだ? ん? じゃあお前が一番責任重いだろ?」となるのは当然なわけです。

だとすれば、いろいろグレーゾーンの多い著作権関係について揉め事が起きてしまうところまでは仕方がないとしても、著者に火の粉が飛ぶことだけは避けることはできなかったのか、ということを、自戒を込めて思う次第です。

パクリ問題が注目を浴びる昨今だからこそ、このニュースは久々に出版業界の人間にとってはもちろん、全方向的に「明るい」ものだったのではないかと思う次第です。

 

【お知らせ】9月は担当書籍が2冊出ます

一冊は『類人猿分類公式マニュアル2.0 人間関係で必要な知恵はすべて類人猿分類に学んだ』。これはネット上の診断サイトが話題になったり、著者の岡﨑さんのスーパー「エブリイ」がテレビ「ガイアの夜明け」や「とくダネ!」で紹介されて話題となっております。

おかげさまで、たくさんの引き合いをいただいております。

カバー写真を見ていただくとわかると思いますが、とにかくパワーがモリモリ、手に取るだけで元気が出る一冊となりました。

もう一冊はおなじみ、内田樹先生渾身の新刊『困難な成熟』。ちょっと意外かもしれませんが、夜間飛行では初めて、内田先生の著書を出させていただくこととなりました。完全書き下ろし、これまで誰も読んだことのない、内田先生の深い人生論。構成の一部を担当しましたが、読み終わったときには人生が変わる、そんな一冊となったと思います。

ちなみに『困難な成熟』というタイトルから思い出されるのは、内田樹先生が師と仰ぐフランスの哲学者、エマニュエル・レヴィナスの主著であり、内田先生による日本語訳もある『困難な自由』。このことからも「内田先生渾身の一冊」ということが伺われますよね。装丁も非常にかっこよく仕上がっています。ぜひ、書店で手にとってご覧ください!

 

 

 

類人猿分類公式マニュアル2.0 人間関係で必要な知恵はすべて類人猿分類に学んだ

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テレビ東京系「ガイアの夜明け」(2015年6月23日放送分「快進撃スーパーの裏側 驚きの人材力!」)で話題沸騰!

14期連続2桁増収、7期連続増益の食品スーパー「エブリイ」。従業員の個性を活かす人事の秘密「類人猿分類」のすべてを解説する決定版マニュアル!

会社でも学校でも、サークル活動でも、人が集まるところには、互いを褒め、認め合うことがチーム力を高める上で大切であることは、誰もが認識しています。しかし、互いのタイプの違いを無視すれば、せっかくの声かけも、相手の心に響かない、ということにもなってしまうでしょう。

本書で紹介する類人猿分類「GATHER」(Grate Apes Teach Human Eternal Relationships;類人猿が人間関係を教えてくれる)は、人間のタイプをオランウータン、チンパンジー、ゴリラ、ボノボの4タイプに分ける性格分類法です。グループメンバーの会社である株式会社エブリイホーミイホールディングス社内の人事研修に積極的に取り入れた結果、同グループ中核を担うスーパーマーケット事業株式会社エブリイは「14期連続2桁増収」「7期連続増益」「1㎡あたり売上高、1㎡あたり営業利益、在庫回転率全国1位」という大きな成果を上げることができました。

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内田樹著『困難な成熟

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ひとつ目の問いはこうでした。
「責任を取るということは可能でしょうか」
僕の答えはシンプルです。
「不可能です」
以上、おしまい。シンプルですよね。
でも、どうして責任を取るということが不可能なのか、
その理路を語るためには、
ずいぶん長いお話に付き合ってもらわなければなりません。
トイレに行きたい人は今のうちに、
コーヒーなんか飲みながらのほうがいいなと
思う人は今のうちにお支度をどうぞ。
さて、用意はよろしいですか。では、話を始めます。
――(本文より)
目次
第1章 社会の中で生きるということ
責任を取ることなど誰にもできない
正義が成り立つ条件
ルールとの折り合いをつける
フェアネス(公平・公正)とは何か
日本を変えていくには

第2章 働くということ
労働とは不自然なものである
組織の最適サイズ
会社とは「戦闘集団」である
「やりたいことをやる」だけでは人生の主人公になれない
執着と矜恃を分かつもの
運と努力の間で

第3章 与えるということ
格差論のアポリア
贈与のサイクルはどこから始まるか
贈与の訓練としてのサンタクロース
わらしべ長者が教えてくれるお金の話
大人になるとは

第4章 伝えるということ
最近の人がすぐにバレる嘘をつくのはなぜか
死について考える
「青年」がいた時代
教育とは「おせっかい」と「忍耐力」である
メンターからの「卒業」
子育ては誰にでもできる

第5章 この国で生きるということ
「愛国者」とは誰のことか
トラブルは「問題」ではなく「答え」である
常識の手柄
今、日本人が読むべき本七選

あとがき

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