高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

素晴らしい東京の五月を楽しみつつ気候変動を考える

高城未来研究所【Future Report】Vol.308(2017年5月12日発行)より


今週は、東京にいます。

年間を通じて、もっと良い気候だと思える時期は5月中旬から後半で、できれば、長めにこの時期の東京を楽しみたいと、毎年考えています。

地中海が気持ち良くなるのは6月10日以降と言われており、通年好天候が多いバルセロナでも「5月40日までは冬だ」と言われるほど、いまはまだ気候が優れません。

また、この時期のニューヨークも突然驚くほどに寒くなる日がありまして、そう考えると、世界を廻りながら東京で過ごすベストシーズンは、花見やゴールデンウィークが落ち着いた5月中旬から後半が、僕にとっては最高の時期となります(次点は10月後半から11月)。

言うまでもなく、気候が人に与える影響は想像以上に大きく、かつて、「エデンの園」だったアフリカから人類が脱したのも、そして、ゲルマン民族の大移動のきっかけになったのも、気候変動だった事が様々な調査から判明しています。

最新号の米国の科学誌「Popular Science」によれば、気温や湿度が上昇するにつれて人間は激高しやすく攻撃的になるといわれており、アメリカの11の医学団体で構成される「The Medical Society Consortium」は、気候変動はさまざまな方面から人間の健康と精神衛生に悪影響を及ぼすと発表しています。

このことは、いまから十年前に出版しました自著「サヴァイブ南国日本」のなかでもお話しましたように、気候変動により社会や金融市場がおかしくなり、その理由は、人間の精神が不安定になるからだ、と僕は説きました。

一方、米環境保護庁は、科学諮問委員会のメンバーを解雇し、ウェブサイトから気候変動についての情報が削除されました。
今週は、ドイツのボンで気候変動対策の国際的枠組みである「パリ協定」を実施するためのルール作りについて協議する作業部会がはじまりましたが、もはや米国では気候変動に対応している予算的余裕もなく、また、変動に対してもはや人類はどうすることもできない現状を、どこかで認めなければならない必要が、そろそろあります。
米国内でも、雨が降らなくなり、農業を廃業せざるを得ない地域もあるのですが、トランプ政権は、気候変動対策関連省庁の予算を大幅に削減する案を作成し、オバマ政権時代の気候変動対策を白紙に戻す大統領令に署名しました。

同じく今週、国際援助に関する非営利組織DARAは、気候変動に対する適切な対策が講じられなければ、2030年までに世界で1億人以上が死亡すると発表しました。

先週もお伝えしたように、今後気候に対するリスクも、もはや各々が自衛的に考えねばならない時代に突入したと考える他ありません。

クラシックハウスの名曲「Sweetest day of May」の歌詞ではありませんが、心身ともに自由を感じるのは、良い季節の影響下にあると常々実感します。
個々をとりまく環境はある程度お金でどうにかなっても、地球全体の気候はお金でも最先端のテクノロジーを駆使しても、もはや、どうすることもできません。

人々は真夏になって、暑く苦しくなると気候変動を真剣に考えるようになりますが、この素晴らしい東京の五月こそ、冷静に気候変動を考える機会だと思う今週です。

 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.308 2017年5月12日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 未来放談
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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