やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

国会議員は言うほど減らすべきか?



 参議院の定数を巡って論争が始まっていますが、自民党提案が定数6増という内容を巡って賛同と批判が出ております。

参院定数6増、誰が為の改革か 事実上の拘束名簿式復活

 内容としては事実上の拘束名簿への移行が「自民党の身勝手」と批判する内容です。すなわち、拘束名簿式ではあらかじめ政党が当選順位を決めて候補者リストを提出し、有権者は政党名を書いて投票するため、議員の知名度や能力評価、人気に応じて得票順となる現在の非拘束名簿式よりも政治改革が逆行するのではないか、という指摘があるわけです。

 また、議員を減らす点については、ある種のイデオロギーとして政治家は少数で良いという議論はかねてからあり、単純に議員を増やすなんてとんでもないという話に容易になります。腐敗する政治家に対する批判や政治不信なんかが根底にあるのは、選挙制度に対する論考をしている人に根強い印象です。

 田中角栄さんの秘書をしていた自民党の朝賀昭さんなどは、某所でこんな記述をしています。

司法の判断では『一票の格差』を金科玉条の如く毎回大都市を増やし、地方を減らす。国会の事は地元を知った議員が決めたらいい。裁判所は地方はどうでもいいか?将来 議員は六大都市ばかりで、北海道なんかはキツネとタヌキと熊が国会に出て来るかな?人口と地域の広さを加味しないと、ますます地方はさびれ、都市は社会資本注入によって便利になる。依って私はアダムズ方式に反対です。

 
 個人的には、一票の格差は私は限りなくゼロになったほうが良いという立場で、地方の声が通りづらいというのは地方の衰退に都市部が引っ張られること以外の何物でもなく、地方が寂れる問題については政策や議員選出とは別に議論するべきだ、という風には考えます。それゆえに、政治制度としてきちんとアダムズ式に人口に応じた代議士、議員選出を行うべきであるという立場です。

 そして、参議院の存在意義を考えるに、最低でも道府県につき1人以上の代表者を選出するべきとなれば、6増せざるを得ません。世田谷区の人口以下しかいない鳥取・島根、秋田・山形など、今後は人口が減少しすぎて合区になる選挙区も出てきかねないのが参議院の現状です。むしろ、これだけ人口減少に見舞われるといまの47都道府県というのは合理的なのかという別の問題すらも発生させます。

 つまりは道県行政と現状の社会情勢があっていないことを放置して議員数だけいじることの意味はどれだけあるのかと思いつつも、選挙制度改革は引き続き行っていかなければならないことを加味すると、増員もある程度は見込んでおかないと厳しいんじゃないの、と思うわけです。

 そして、議員と政策の質についていうならば、立法府の機能不全というか専門性のある議員を政党がしっかり抱えて行政・霞が関との意味のある政策立案を行っていくことの必要性からも、一定数「ふり幅の少ない、政策通の議員」の重要性はあります。2回生、3回生で落ちてしまう可能性のある議員生活の中で、国民のニーズに合った政策提言もまた必要ということが叫ばれるならば、党人派かそうでないかを別としてきちんと政党が専門家を抱えるということは必要だろうと思うわけです。

 一方で、批判として業界の利益代表が自民党の中に増えるだけで、たいした効果もないというのはあります。それはそれでその通りで、観ての通りカジノ(IR推進)法案から受動喫煙禁止法案まで、ろくでもない議員が国民の利益とは違うところで戦い続ける、野党は野党で本来なら司法で解決すればそれで済むモリカケ問題を延々と国会で引っ張るという問題も起こします。政治不信の根幹はこの辺の党利党略や露骨な既得権益構造、業界代表的な議員の在り方にあるのは間違いないのです。

 結局、その辺を突破するのは都市部の「しがらみのない無党派層による投票」であり、これらの投票率が上がるほどに何か具体的なイシューが出てくると既得権益を守ろうとする業界代表の議席を吹き飛ばすことになります。どっちにせよ、投票率が上がれば不安定になる議席が増えるだけの話で、それなら都道府県の再配置も含めた地方自治改革みたいなものを見据えられる状況になるまでは都道府県代表は最低でも用意できる仕組みのほうがいいんじゃないか、アダムズ方式で一票の格差を減らし都市部によるスイングステート化は必要なことなんじゃないかと思うんですけど、如何でしょうか。

 

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Vol.229 議員数問題に物申しつつ、チャレンジを続けることのむつかしさをあれこれ考えたり、自由気儘だったネットの終焉をそこはかと感じる初夏の号
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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。サイバーインテリジェンス研究所統計技術主幹など歴任。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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