ロバート・ハリス
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ロバート・ハリス メルマガ『運命のダイスを転がせ!』

映画『ミリキタニの猫』と『ミリキタニの記憶』を観て

ロバート・ハリスメールマガジン『運命のダイスを転がせ!』Vol.019より
 
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(C)Jimmy Tsutomu Mirikitani
 
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NYの路上で絵を描き続けた
ホームレス画家の波瀾万丈な人生

この作品は稀有な人生を歩んだある日本人のアーティストのドキュメンタリー映画です。

冷たい風が吹く、2001年1月のニューヨークのソーホーで物語は始まります。腰が曲がった、初老のホームレスの男性が道端で無心に絵を描いています。

彼はジミー・ツトム・ミリキタニ、80歳。カリフォルニアのサクラメント生まれの日本人。髪はぼうぼう、手は垢だらけ、着ている服もいかにもホームレスといった感じでボロボロなのですが、絵を描く様はピカソのごとく情熱的で力強く、目は爛々と輝いています。

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「ツールレイク1」(C)Jimmy Tsutomu Mirikitani
 
色鮮やかなクレヨン画や色鉛筆画のモチーフは猫を中心にした鯉や魚や銀杏の葉といった自然と、戦時中、アメリカで日本人が強制的に入れられていた収容所、そして広島の原爆。

彼の元へ若いアメリカ人の女性や、日系の美術の先生などが訪れ、声をかけますが、ミリキタニさんは日本語と英語を流暢に使い分け、しっかりとした口調で自分のことを語っていきます。

彼は “アートのグランドマスター” であり、日本人であり、そのことを誇りに思っている、ということ。サクラメントで生まれた彼は幼い時に家族と広島へ移住し、20代のころ、アメリカに帰ってきたが、第二次世界大戦が勃発し、日本人の収容所に入れられ、そこに3年間幽閉されていたこと。

家族や親類の多くは広島の原爆で亡くなり、姉とは別々の収容所へ送られ、その時以来、60年近く会っていないこと、などなど。
 
 

9.11の同時多発テロが起こり、そして……

極寒のニューヨークの冬、彼は店先のビニールの小屋のようなところで暖をとって何とかサバイブしながら毎日、絵を描き続けます。

人々の証言によると、彼は絵を買わないと金を受け取らないらしく、人から施し物は一切受けていないということ。

人とも積極的に言葉を交わし、日本人を収容所に入れたことは間違っている、戦争はいけない、自分は兵士ではなくアーティストだ、アメリカの政府は大嫌いだ、などといったことを声を大にして語っていきます。

でも、彼は一方的に自分の話ばかりする老人ではなく、人の話もちゃんと聞くし、心遣いもできる人。ただ、人に迎合しない、頑固なまでの独立心とプライドを持った人間なのです。

そのうち、9.11の同時多発テロがあり、ジミー・ミリキタニは彼によく声をかけてくれていたリンダという若い女性の家にやっかいになることになります。

彼はここでの生活にもすぐに溶け込み、書斎兼ベッドルームで絵を描き続け、リンダとは父親と娘のような、親しくも頑固者同士のぶつかり合いもある、ユーモラスな関係を築いていきます。

一方、リンダは同じ苗字を持つ詩人についての雑誌の記事を見つけて彼女に手紙を書いたり、ミリキタニさんの収容所での記録を調べて彼のお姉さんがまだ存命だったということを突き止めたり、彼が政府の年金や老後の手当を貰えるように奔走したりします。

そしてそんな彼女の努力の甲斐もあり、ミリキタニさんの波乱万丈な過去が更に観る者の前に紐解かれていき、彼の人生も大きく、良い方向へと変わっていきます。
 
 

彼の絵が人々の心を動かしていく

このドキュメンタリーの素晴らしさは何と言っても、ミリキタニさんという人物そのもの。

初めのうちは謎のホームレスの老人であった彼が、観る者の前でどんどん興味深い人間へと深みを増していき、彼の情熱や野望、望郷や悲しみを感じれば感じるほど我々は彼に同調するようになり、最後にはこの頑張り屋の老人のことが愛おしくて仕方がなくなります。

ここには戦争という怪物に翻弄され、政府という怪物に人権を剥奪され、全てを失ったかのように見えた人間が絵を描くという情熱によって何とか生き残り、その絵によって人々の心を動かし、出会いを生み、その出会いが彼と人々の人生に深い波紋を投げかけていくという、そんなドラマが綴られています。

人間の魂の強さ、人と人との繋がりの尊さ、戦争というものの愚かさ、芸術というものが持つ不思議なパワー、そういったものを強く感じさせてくれるこの『ミリキタニの猫』と、ミリキタニさんの過去を解き明かしていく『ミリキタニの記憶』はこれからも日本の様々なアート系の映画館で上映されていくと思うので、心から皆さんにお勧めします。

9.11やアフガニスタンの空爆という暴力が蔓延る世界で、一人のアーティストの怒りと悲しみと、そして許しと和解のプロセスを描き上げたこのドキュメンタリー映画は、観る者すべてに深い感動と、生きる力を与えてくれる素晴らしい作品です。

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「母猫と子猫」(C)Jimmy Tsutomu Mirikitani
 
 
『ミリキタニの猫』<特別編>公式サイト
http://nekonomirikitani.com

2月4日(土)〜17日(金)ポレポレ東中野にて公開
https://www.mmjp.or.jp/pole2/
 
 

ロバート・ハリスメールマガジン『運命のダイスを転がせ!』

 

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既存のルールに縛られず、職業や社会的地位にとらわれることなく、自由に考え、発想し、行動する人間として生き続けてきたロバート・ハリス。多くのデュアルライフ実践家やノマドワーカーから絶大なる支持を集めています。「人生、楽しんだ者勝ち」を信条にして生きる彼が、愛について、友情について、家族について、旅や映画や本や音楽やスポーツやギャンブルやセックスや食事やファッションやサブカルチャー、運命や宿命や信仰や哲学や生きる上でのスタンスなどについて綴ります。1964年の横浜を舞台にした描きおろし小説も連載スタート!
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ロバート・ハリス
横浜生まれ。高校時代から国内をヒッチハイクでまわり、卒業後は北欧からインドまで半年間の旅をする。上智大学卒業後、東南アジアを放浪。バリ島に一年滞在後、オーストラリアにわたり延べ16年滞在。シドニーで書店&画廊『Exiles』を経営。ポエトリー・リーディング、演劇、コンサート等を主催、文化人のサロンとなり話題に。映画やテレビの製作スタッフとしても活躍後、日本に帰国。1992年よりJ-WAVEのナビゲーターに。1997年に刊行された初の著書『エグザイルス(放浪者たち)ーすべての旅は自分へとつながっている』(講談社)は、若者のバイブルと謳われ長く読み継がれている。『ワイルドサイドを歩け』『人生の100のリスト』(いずれも講談社)、『エグザイルス・ギャング』(幻冬舎アウトロー庫)、『英語なんてこれだけ聴けてこれだけ言えれば世界はどこでも旅できる』(東京書籍)、『アフォリズム』(NORTH VILLAGE)、『アウトサイダーの幸福論』(集英社)など著書多数。

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