名越康文
@nakoshiyasufumi

名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)より

どうすれば「親友」ができるのか–赤の他人に興味を持つということ

※名越康文メールマガジン「生きるための対話(dialogue)」 Vol.098(2015年04月20日)より

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[Q] 親友と呼べる友達がいない

大学2年生、女子です。

大学生活も(4月で)2年目に入りました。運動系のサークルに入り、仲の良い友人も十人以上できました。けれども、最近ふと気づいたのですが、自分には「親友」と呼べる友人がいない気がしています。何か困ったときに相談できたり、何でも隠さず話せるような友人というのはいないような……。

「親友」はどうやって見つけるものなのでしょうか?

 

[A] 親は「他人への素朴な興味」から生まれる

「親友」って、いったい何でしょうね。ご質問の中には「困ったときに相談したり、何でも隠さずに話せたりするような」とありました。あなたがイメージする「親友」というのは、そんな存在でしょうか。

僕自身の人生を振り返ってみても、確かにそういう人が何人かいます。年齢が離れた方もいますので、あまり僕は「親友」という言葉をつかいませんが、この定義に従うなら彼らは僕にとっての「親友」ということになるでしょう。

ただ、間違ってはいけないのは、僕がそうした友人たちと腹蔵無く語り合うことができたのは、5年、いや10年以上もの長い間おつきあいをした「結果」だということです。

僕がその人に人生の大切なことを相談したり、その人が、他の人には決して話さない話をしてくれたりしたのは、別にその人が「親友だったから」ではありません。友人として長く、そして深いお付き合いを重ねる中で、振り返ってみると「そういうこともあった」ということなのです。

大切なことは「なんでも隠さずに話せるような友人」を探すことよりも、何十年もの間、お付き合いしたいと心から思えるような友人を見つけることだと思います。では、どうしたらそういう友人と出会うことができるのか。ひとつのポイントは、「興味」ということではないかと僕は考えます。

幼稚園や小学校時代のお友達はもちろん、大人になってからの友人であっても、僕らが友人と出会い、関係性を深めていくときには、大きく分けて2つのパターンがあります。ひとつは、相手がいい人で、気が合うから友達になる、というもの。もうひとつは、どうしてもその人に興味が湧いて気になって仕方がなかったから友達になる、というものです。

僕は、親友という関係性に発展する可能性が高いのは、後者の出会いだと考えるのです。

というのも、「この人はいったいどういう人なのだろう?」という興味を持った相手とは、僕らは毎日、何時間一緒に話していても、決して飽きることがないからです。しかし、単に「趣味が合う」とか「いい人」というだけでは、そうはいきません。相手に対する興味や関心がなければ、たった一時間でも退屈してしまうでしょう。

あなたが相手に興味を持ち、相手もあなたに興味を持つ。それはいわば、振り返ったときに「親友」と呼べるような関係性が生まれるための、絶対条件といっていいぐらい大きなポイントだと僕は考えます。

ただ、勘がいい人ならピンと来ていることと思いますが、こうした「互いが互いに強い興味を持つ」ような出会いは、必ずしも幸せな関係性に発展するわけではありません。なぜなら、「人が人に興味を持つ」ということは、相手が自分の理解を超えた側面を持っている、ということに他ならないからです。

「自分の知らないことを知っている人」「自分とはまったく異なる世界を生き抜いてきた人」だからこそ、私たちは他人に興味を持ちます。当然、その中には、危なっかしいことをしている人に興味を持ってしまうこともあれば、精神的に不安定で、あなたの人生に多大な迷惑をかけてしまうかもしれない、その「不安定さ」も含めた人間存在全体に興味を抱いてしまう、ということもあるでしょう。こういったケースでは、親友というよりは、不幸な関係性に発展してしまう可能性も十分にあるのでしょう。

そういう危険があるために、自分の知らないことを知っている人、自分とは異なる価値観を持つ人を遠ざけようとする人もいます。というよりも、自分の枠組みを揺さぶったり、変化を促すような相手にはなるべく近づかない人のほうが、おそらくは多数派ではないでしょうか。しかし、そうやって出会いに対して防衛的になっていると、自分の周りには、自分の理解の枠の中に収まるような相手ばかりになってしまうでしょう。

「自分を守ろう」という気持ちが強くなりすぎてしまい、素直に「他人に興味を持つ」ということができなくなってしまっている可能性はないでしょうか。自分とは違う世界に住む人、自分の人生とは一見関係なさそうな人に興味を向ける。まずはそこから始めてみるのもよいと思います。

少なくとも「困ったときに相談できるような相手」を探すよりも、「この人、いったい何なんだろう?」と興味を惹かれるような相手を見つけて声をかけるほうが、何十年か後に振り返ったとき、親友と呼べる人と出会うことができる可能性は、はるかに高いだろうと僕は思うのです。

 

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名越康文
1960年、奈良県生まれ。精神科医。相愛大学、京都精華大学客員教授。 専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現:大阪府立精神医療センター)にて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て、1999年に同病院を退職。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。 著書に『心がフッと軽くなる「瞬間の心理学」』(角川SSC新書、2010)、『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『質問です。』(飛鳥新社、2013)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)などがある。 名越康文公式サイト「精神科医・名越康文の研究室」 http://nakoshiyasufumi.net/

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