高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

冬の間に眠っていた体内の問題が目を覚ます季節

高城未来研究所【Future Report】Vol.611(3月3日)より

今週は、東京にいます。

日中20度を超える日もあるほど東京は日に日に春の日差しを感じるようになって参りましたが、先週滞在していた南インドは35度を超えていましたので、季節の実感がいまひとつ湧きません。

この週末は二十四節気の「啓蟄」にあたり、「冬籠りの虫が這い出る」時期で、季節がわりに体調不良を訴える人たちが続出する頃合いでもあります。

そのひとつが、花粉症です。

実は30年前までほとんど発症する人がいない珍しい病気でした。
いったい、なぜ、国民病と言われるまで花粉症が急増したのでしょうか?

これには、みっつの大きな理由が挙げられます。

ひとつは、環境の大きな変化です。
大気汚染物質には、自動車の排気ガスやゴミ焼却炉などから出る炭素物質、金属の微粒子、黄砂、PM2.5などがあり、花粉はこれらの物質と衝突すると破裂して約1ミクロンほどのアレルゲン物質「Cry j1」と「Cry j2」を放出します。
花粉そのものの大きさは約30ミクロンほどで、この大きさでは人の呼吸器の深部に入ることができませんので、単体では悪さしません。
しかし、汚染物質の影響から破裂すると小さくなって人間が備えているバリアを突破し、花粉症を引き起こすのです。
つまり、花粉症ではなく環境汚染症が正しい。
そのようなネーミングをつけたら経団連は異議申し立てするでしょうし、マスコミも大々的に報じることはないでしょうが。

ふたつめは、腸内環境の大きな変化です。
体内の免疫機能の約70%が集まる腸内には、約100兆個もの細菌が棲んでいます。
いわゆる善玉菌、悪玉菌、日和見菌などと言われますが、このバランスが食べ物の消化に役立つほか、免疫機能を助けたり、ホルモン分泌に影響を及ぼします。
特に糖やレクチン、そしてグリアジンが多く含まれる美味しいパンやパスタのもととなる品種改良された小麦は、リーキーガットと呼ばれる「腸もれ」を誘発します。
これにより、腸の粘膜細胞間の結合が緩んで隙間が大きくなり、未消化で分子が大きいままのタンパク質や糖、さらには口から入った破裂した花粉などが腸壁から漏れ出て体内に侵入するため、過剰なアレルギー反応を惹き起します。
なかでも健康食のふりをしたレクチン食材、例えば大豆やそば、トマト、きゅうりにナス、カシューナッツやチアシードなどは、花粉症を悪化させ、多くの人々にとって「本当の健康食」とは言い難いのが正直なところです。
こちらも食品業界の影響が大きい。

みっつめは、ビタミンDの不足です。
ビタミンDには細菌やウイルスを殺す「カテリジン」や「β-ディフェンシン」という抗菌ペプチドを皮膚上に作ってバリア機能を高めることから、免疫力の向上やアレルギー症状を改善します。
また、ビタミンDは緩んだ腸粘膜の結合状態を改善し、適切な免疫抗体の産生を促します。
一般的にビタミンDは食べ物から摂る以外に紫外線を浴びることで体内に合成されますが、紫外線が減少する冬場はビタミンDが減少し、抗菌ペプチドも減少。
この結果、新型コロナウィルス感染やインフルエンザ、そして花粉症を引き起こすのです。
ところが、「ビタミンD不足は世界的問題である」とアメリカ国立衛生研究所(NIH)が指摘するほど現代人には不足しており、なかでも日本人は体質的に(SNPs的に)ビタミンD摂取や生成が苦手なため、3年ほど前に厚生労働省がビタミンD摂取基準値の引き上げを発表しています。
この背景には、食生活の変化や情報化社会になって世界的に陽に浴びる時間が短くなったことや、日本人は「VDR」と呼ばれるSNPsに変異がある人が多く、体質的にビタミンDを摂取しづらい民族であることなどが挙げられます。
それゆえ、食事やちょっとした外歩きでは追いつかず、ビタミンDをサプリメントなどで補う必要があるのです。

また、ビタミンDにはD2とD3があり、植物性食品(キノコ類)に含まれるビタミン D2(エルゴカルシフェロール)と動物性食品(魚類や卵類など)に含まれるビタミン D3(コレカルシフェロール)に分類されますが、体内で同様に代謝されるため、日本人の食事摂取基準では両者を区別せず、単に「ビタミンD」としてビタミンD2とビタミンD3の合計量で表されています。

しかし、代謝されて活性化されたものと同じ形をしているD3サプリメントは、少量で高い効果が発揮されるため、天然のビタミンDと比較すると摂取量は1/100〜1/50程度で十分な効能を見込めますが、実は日本では良質なD3の製造が各種規制によって難しい。
ですので、品質の良い米国製D3サプリメントをいつもご推薦している次第です。

冬の間に眠っていた体内の問題が目を覚ますこの時期。
もしかしたら、目を覚ますことは他にもあるのではないか、と考える今週です。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.611 3月3日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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