高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

空間コンピューティングの可能性

高城未来研究所【Future Report】Vol.679(6月21日)より

(Photo by Roméo A. on Unsplash)

今週は東京にいます。

ここ1〜2年で急速に進化した音声入力とApple Vision Proによる空間コンピューティングによって、僕の「執筆」や「クリエイティブ」スタイルは全く違う次元へと昇華しつつあります。

このメールマガジンも、音声入力とApple Vision Proを使って書いておりまして、当初はカフェなどでApple Vision Proを装着するのに抵抗ありましたが、いまではすっかり周囲の奇異な目にも慣れ、歩行時にはiPhoneで音声入力。
その後、店などに入ってApple Vision Proを装着するか、iPadで仕上げるようになりました。

そして来週6月28日、いよいよ日本でもApple Vision Proが発売になりますが、売れている様子はまったくありません。
価格の問題も大変大きいのでしょうが、それ以上にこのデバイスをどのように使っていいのかわからない人たちが大半だからだと思われます。

以前も何度かお話し申し上げましたが、この数ヶ月、Apple Vision Proを徹底的に使って感じたのは、なによりPro Display XDRの代わりになることでした。
いままで写真の現像を行ったり、動画の編集をする上で、大型ディスプレイは印刷クオリティーの確認や劇場の仕上がりを見る上で絶対的に必要でしたが、実はこの大型ディスプレイこそ、僕が所有しているすべてのモノの中で最も大きい製品でした(自転車を除く)。

32インチのPro Display XDRは重さ7キロ程度あり、それ以前のマスターモニターと呼ばれる20kg超、数百万円の業務モニターを代替する製品として愛用してきましたが、持ち歩くのが不便だったので専用ケースを自分で作ったり、海外ロケなどに持ち出したりして五年ほど愛用してきました。

ところがAppleVision Proが登場したことにより、32インチのPro Display XDRを持ち出す必要がなくなったのです!

この視覚革命とも言うべき空間コンピューティングによって、いつでもどこでも大きなビジョンを見ながら映画の試写や印刷解像度に耐えうる写真現像をすることができるようになったのは、僕にとって「脱大型モニター」を意味します。
価格から考えても五年落ちのPro Display XDRを売却した価格に少し足せば、Apple Vision Proは購入可能です。
ただし、視力に与える影響は不明ですが。

また、VR空間でのゲームなども面白いのですが、個人的に遊戯具として最もApple Vision Pro活用しているのは、こちらも以前から使用しているDJソフト「DJay」です。
Vision OSは、基本的にiPadOSと極めて近いため、そのまま移植するアプリケーションがほとんどですが、「DJay」は全く違います。
VR空間上にDJブースが再現され、またダンスフロアも現れます。

これが実に面白い!

パンデミック以降、大きな空間でDJする機会もめっきり少なくなりましたが、この空間コンピューティングDJは実に新しい感覚で、つい先日もオールでプレイしてしまいました・・・。

正直、アプリケーションとしてはまだまだで、現場で使えるほどではないと思いますが、今後発売されるであろうVision OS対応コントローラー含め、この先に何か新しいカルチャーがあると感じています。
現段階では、数人の宇宙人がダンスフロアで踊る程度ですが、そのうち多くのクラウドがVR空間の中に登場し、良いDJだったら盛り上がる、イマイチなDJだったら盛り下がる評価機能がどこかで搭載されると思われます。

おそらくDJだけではなく、一般的な音楽ソフトもしくはAIで作られた楽曲をVR空間内のクラウドの前で流すことによって、その曲が実際にどれくらいウケるのか、事前にシミュレーションすることもできるようになるでしょう。
映画も同じです。
もうすでに実装されているVR空間の中の映画館に観客を入れて試写を行い、この映画のどこのシーンが問題かクラウドが判定し(実際はAIが判定し)、それによって編集精度を高めて完成するような映画の作り方に変わると思われます。

こう考えると、現段階のApple Vision Proは、いわゆるVRゴーグルではなく、ヘッドマウンド型ディスプレイに過ぎません。
正直、大型ディスプレイの代替以外に、どうしても「これだ!」と唸る使い方もアプリケーションも見つかりませんが、思い起こせば初代Macintoshも当初は多くの人たちから同様に見られていました。

1980年代中盤、Apple Computer社がリリースしたパーソナル・コンピュータ「Macintosh」は、「なんでも出来る」と言われるても、多くの人たちにとってどのように使っていいものかわからない、「幸せな混乱」を投じた逸品でした。
ロクに表計算もできなければ、パワーポイントのようなスライドも作れず、ちょっとしたカード型データベースがある程度で、現在のApple Vision Proが大型モニター代わりなのと同じように、当時はタイプライター代わりぐらいしか使えないと揶揄されていました。
その上、価格も驚くほど高額でした。

しかし、この「なんとなく未来を感じる」製品が世の中を大きく変えていくことになります。
その後、20年以上かかって「ポケットに入るMacintosh」と呼ばれたiPhoneへとつながるのです。

果たして、20年後のApple Vision Proは、どのような製品になっているのでしょうか?

iPhone(とのちのAirPods)が「耳」にもっとも近かった電話や音楽プレイヤーを飲み込んだように、Apple Vision Proが「目」にもっとも近いあらゆるモニターからメガネまで凌駕する世界。
もし、普及すればテレビはさらに斜陽になると考えます。

ちなみに、次は「口」でしょうね。
その布石が、音声入力とOpen AIとの提携でしょうから。
どちらにしろ、「脱物理キーボード」です!

高城未来研究所「Future Report」

Vol.679 6月21日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 大ビジュアルコミュニケーション時代を生き抜く方法
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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