津田大介
@tsuda

津田大介のメルマガ『メディアの現場』より

公職選挙法違反――選挙期間中にやってはいけない行為とは

(2012年12月4日 J-WAVE『JAM THE WORLD』「CUTTING EDGE」より)

出演:三浦博史(選挙プランナー)、津田大介
企画構成:きたむらけんじ(『JAM THE WORLD』構成作家)

 

津田:衆議院選挙が公示され、正式に選挙戦がスタートしたのと同時に候補者たちはブログやツイッターなどのインターネットを使った情報発信を一時的にお休みすることになりました。もし、公示期間中にブログやツイッターを更新・投稿した場合、公職選挙法違反に問われる恐れがあるためなんですが、選挙期間中に候補者や有権者、我々リスナーがやってはいけないこととは一体何なのかわからない人は多いですよね。そこで今夜は選挙プランナーの三浦博史さんにお話を伺います。よろしくお願いします。

三浦:よろしくお願いします。

 

選挙公示期間中にやってはいけないこと

津田:三浦さんは選挙プランナーとして、公職選挙法にはお詳しいと思うのですが、まず、選挙の公示期間中に候補者がやってはいけないことはどんなことなんでしょう。

三浦:選挙期間中、ブログやツイッターを更新してはいけないというのはよく知られていますが、ほかにも細かくできないことが規定されてるんですね。たとえば、ベテラン候補者の陣営でも間違えることがあるんですが、選挙期間中はうるさいくらいに自分の名前を連呼する宣伝カーが街を走っていますよね。候補者本人が乗っている選挙カーの場合、状況によっては候補者が車から出て、商店街で街頭演説をしたりする。そういう場合、車の中ではウグイス嬢たちはマイクを使えなくなっちゃうんです。

津田:へー! そうなんですか!

三浦:そうなんです。選挙管理委員会から渡される [*1] 街頭演説用標旗を掲げれば、駅前や商店街など、どこでも立ち止まって演説することはできます。[*2] 通常、こういう演説は拡声器を使いますよね。でも、演説している同時刻に車の中から「誰々をよろしく」と拡声器で伝えることは一切できなくなってしまうんです。それを知らないでやっている陣営もけっこうありますね。

津田:なるほど。では、候補者ではなく、有権者が選挙期間中やってはいけないことは?

三浦:まず、他人にお金を渡して選挙依頼をやってはいけないというのは常識ですよね。ただ、知らずにうっかりやってしまうような選挙違反もあります。たとえば、立候補者と同じ高校の同窓生に応援をお願いしたい、という人がいたとします。その候補者を応援するために、2000名記載された同窓会名簿をもとに「◯◯高校同窓の皆さん、ぜひ△△さんに投票をお願いします」という文章をダイレクト・メールや電子メールで発信してしまった――たまにあるケースなのですが、これは文書違反にあたります。[*3]

津田:選挙が終わってしばらくすると落選した議員の関係者や本人が選挙違反で逮捕されるなんていうニュースが流れてきますが、有権者がそうした選挙違反で逮捕されたり、書類送検されたりするケースってあるんですか?

三浦:選挙ポスターに落書きをしたり、[*4] 剥したりする、[*5] 演説を妨害する [*6] といったことで逮捕されることはありますが、そういう突発的な行為以外はほとんどありません。選挙運動に熱心に関わる人は、遅かれ早かれ候補者の陣営や政党関係者に接触しますから、各陣営・各政党から「これをやってはいけませんよ」とか「これは大丈夫ですよ」とレクチャーを受けることが多いんです。選挙前・選挙期間中にやってもいいこと、やってはいけないことをトレーニングしてもらっているので、一般の方が選挙運動に関わる中で選挙違反をして逮捕されることはほとんどないですね。

津田:個人的には選挙違反って大体落ちた人が逮捕されてて、当選した議員は「こんな選挙運動していいの?」みたいなことをしても議員になっちゃってるから逮捕されることはないというイメージがあるのですが……。

三浦:昔は落選議員に集中していたかもしれませんが、最近は選挙結果で区別されることはありません。ただ、違反の取り締まりは地域によってかなり温度差があります。

津田:なぜ地域によってそのような温度差が生じるんでしょう。そもそも選挙違反に当たるかどうかは誰が決めているんですか。

三浦:良くないたとえかもしれませんが、高速道路の時速80キロ制限ってありますよね。ほかの車が時速100キロで走行する中、時速85キロで走っていても捕まることはまずないですよね。でも、110キロだったら捕まる可能性が非常に高い。地域の状況によって、選挙管理委員会や警察がそれぞれ判断しているわけです。同じ公職選挙法による摘発であっても、地域によってばらつきがあることは確かです。

津田:選挙違反にはいろいろなケースがあると思うのですが、一般にはあまり知られていないけれど「こんなケースはNG」というような例ってほかに何かありますか?

三浦:未成年者の選挙運動でしょう。最近、これまでのウグイス嬢以外に、若い男性を使った街宣活動も増えています。主に女性層をターゲットにしたもので、私は「カラスボーイ」と呼んでいるのですが、[*7] ウグイス嬢にしてもカラスボーイにしても若い人が多い。成人の大学生がたまたま自分が当番の日に熱を出し、責任感から自分の代わりに大学の後輩を寄こすということがあったとします。その人がたまたま19歳だったら――公職選挙法は未成年者に選挙運動をさせてはならないと定めていますので、選挙違反に該当します。[*8] ただ、ポスターを貼る、シールを貼るというような「労務」であれば年齢は関係ありません。

津田:ポスター貼りやシール貼りは「選挙運動」に当たらないんですね。「選挙運動」ではなく「労務」であれば未成年者でもよい、と。

三浦:はい。選挙運動というのは「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」と定義され、[*9] 各地域の選管もそれに従っています。[*10] それ以外の労務であれば年齢は関係ありませんし、選管が定める範囲で報酬を支給することもできます。しかし選挙運動においてお金を払う場合は、選管に登録した選挙運動員に限りますし、なおかつ20歳以上でなければなりません。このあたりでうっかりしてしまう陣営もある。大学生なら大丈夫だと思っていたら、18歳、19歳だったということもあり得ます。実際、それで逮捕されたケースもあるんですよ。[*11]

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津田大介
ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。1973年生まれ。東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース非常勤講師。一般社団法人インターネットユーザー協会代表理事。J-WAVE『JAM THE WORLD』火曜日ナビゲーター。IT・ネットサービスやネットカルチャー、ネットジャーナリズム、著作権問題、コンテンツビジネス論などを専門分野に執筆活動を行う。ネットニュースメディア「ナタリー」の設立・運営にも携わる。主な著書に『Twitter社会論』(洋泉社)、『未来型サバイバル音楽論』(中央公論新社)など。

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