名越康文
@nakoshiyasufumi

名越康文メルマガ『生きるための対話』より

迷う40代には『仮面ライダー』が効く

40代男性のアイデンティティは危機に瀕している


日本の40代男性のアイデンティティはいま崩壊の危機に瀕している……という話をしても、女性読者の方や、年代が違う方はあまり関心を持たないかもしれません。でも、40代男性の社会的影響力は、社会のどこにおいても決して小さいとは言えません。

「社会の屋台骨」と表現されることもあるこの世代の人たちがそれなりに明るく過ごすことができない社会というのは、必然的に不安定になります。

職場でのパワーハラスメント、鬱病、あるいは暴力や犯罪といったさまざまな問題の背景には、この世代のアイデンティティ問題がある。

ここでいう「アイデンティティ」とは、「自分はこういう人間だ」という自己規定、あるいはその「核」になるようなもののことです。それが特に40代男性を中心として不安定になってきている。そのことに、僕はちょっと危機感を覚えています。

なぜ「女性」ではなく、「男性」なのかというと、女性のほうが友人とのコミュニティや趣味でのつながりといった、社会での基本的な役割「プラスα」の部分を持っているからです。

特に40代ぐらいになると明らかに女性よりも男性において、文化的な時間は貧弱になっていきます。車文化も、ゴルフ文化も、景気が悪くなるとともに、急速に衰退しました。仕事すら、終身雇用というストーリーが崩れるなかで、人としてアイデンティティを託すには危ういものになりつつある。あるひとつの「レール」を外れただけでも、人格が崩壊してしまいそうな不安を抱えて生きている40代男性が増えている、というのが僕の見立てなんです。

1 2 3
名越康文
1960年、奈良県生まれ。精神科医。相愛大学、高野山大学、龍谷大学客員教授。 専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現:現:大阪精神医療センター)にて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て、1999年に同病院を退職。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。 著書に『「鬼滅の刃」が教えてくれた 傷ついたまま生きるためのヒント』(宝島社)、『SOLOTIME~ひとりぼっちこそが最強の生存戦略である』(夜間飛行)『【新版】自分を支える心の技法』(小学館新書)『驚く力』(夜間飛行)ほか多数。 「THE BIRDIC BAND」として音楽活動にも精力的に活動中。YouTubeチャンネル「名越康文シークレットトークYouTube分室」も好評。チャンネル登録12万人。https://www.youtube.com/c/nakoshiyasufumiTVsecrettalk 夜間飛行より、通信講座「名越式性格分類ゼミ(通信講座版)」配信中。 名越康文公式サイト「精神科医・名越康文の研究室」 http://nakoshiyasufumi.net/

その他の記事

原色豊かな南米で歴史はすべてカラーなのだということをあらためて思い知る(高城剛)
新型コロナウイルスの影響で変わりつつあるスポーツのあり方(本田雅一)
歴史と現実の狭間で揺れる「モザイク都市」エルサレムで考えたこと(高城剛)
石田衣良がおすすめする一冊 『ナイルパーチの女子会』柚木麻子(石田衣良)
新宿が「世界一の屋内都市」になれない理由(高城剛)
海賊版サイト「漫画村」はアドテク全盛時代の仇花か――漫画村本体および関連会社の全取引リストを見る(やまもといちろう)
国民の多極分断化が急速に進むドイツ(高城剛)
社員を切ってください、雑巾は絞ってください(やまもといちろう)
「昔ながらのタクシー」を避けて快適な旅を実現するためのコツ(高城剛)
「死にたい」と思ったときに聴きたいジャズアルバム(福島剛)
インターネットにない世界がある八重山諸島の夏(高城剛)
99パーセントの人が知らない感情移入の本当の力(名越康文)
実態は魑魅魍魎、美味しいと正しいの間に揺れる飲食業界(高城剛)
ヘッドフォンの特性によるメリットとデメリット(高城剛)
ヒトの進化と食事の関係(高城剛)
名越康文のメールマガジン
「生きるための対話(dialogue)」

[料金(税込)] 550円(税込)/ 月
[発行周期] 月2回発行(第1,第3月曜日配信予定)
【DVD】軸・リズム・姿勢で必ず上達する究極の卓球理論ARP
「今のままで上達できますか?」元世界選手権者が教える、新しい卓球理論!

ページのトップへ