名越康文
@nakoshiyasufumi

名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)より

継続力を高める方法—飽き性のあなたが何かを長く続けるためにできること

※名越康文メールマガジン「生きるための対話」(2015年10月19日発行号)より

継続するためには「力」よりも「工夫」

ダイエットや勉強、あるいは趣味について「何をやっても続かない」という人がいます。いわゆる「3日坊主」で、長く続けることができない。一度決めたことをやりとげるには、いったいどうしたらいいのかわからない……。こういった質問は、新聞や雑誌、あるいはウェブのQ&Aコーナーでもよく見かけますよね。

こういう悩みに対する、ひとつの定型的な答えとして「嫌なことを無理に続ける必要はないんだよ」というものがあります。嫌なこと、続かないことを無理してやる必要はない。好きなこと、楽しいことだけをやればいいんだよ、というわけです。

それはそれで、一理あるでしょう。確かに他ならぬ自分の人生なのだから、無理に続ける必要はないかもしれない。

しかしながら、この悩みが、仮に自分の子供や、これから長年共に歩む運命にある大切な仲間から寄せられたものだったとしたらどうでしょうか。たぶん「好きなことやってればそれでいいよ」とはなかなか答えにくいと思うんです。

やはり、「何かを続ける力」というのは大切で、必要である。そのことは、誰もが心の底では痛感していることではないでしょうか。継続力というのは、少なくとも「明るく、元気に人生を生き抜いていこう」と考えるのであれば、必要な能力なんですよね。

では、すぐに3日坊主になってしまう人、根気が続かない人は、何を、どう変えればいいのか。

かくいう僕も、実はとても飽きっぽい人間なんですが、もしかすると、ツイッターやメディアを通してしか僕を知らない人は、僕のことを「継続力のある人間」だと誤解している人もいるかもしれません。実際、仏教の研究についてはもう8年ほど続けていますし、今年になってから始めた歌の練習なんかも熱心に続けているから、「もともとコツコツ継続する力がある人間なんだ」と思っている方もいらっしゃるかもしれない。でも、それは誤解なんです。基本的に僕は多動傾向が強めの、いわゆる「飽きっぽい人」なんです。

生まれつきコツコツ努力できるタイプの人ならともかく、僕みたいに飽きっぽい人間(実際、学生時代のテストはほぼ一夜漬けでした)が何か新しいことを始め、続けていくためには、それなりの「工夫」が必要です。だから、その僕なりの「工夫」についてお話することによって、「継続力がない」と悩んでいる人になにがしかヒントを提供できるかもしれない。そんなふうに思うんです。

 

「続けられそうもない」ことに取り組んではいないか

さて、僕なりに物事を継続するためにやっている「工夫」についてお話する前に、ひとつ、継続力についてクリアしておきたい問題があります。それは、何かに取り組むときに「続けられそうか」「続けられそうもないか」という判断をちゃんとやっているかどうか、ということです。

というのも、「継続力がない」「根気がない」と悩んでいる人のだいたい半分ぐらいが、そもそも「とてもじゃないけれど続けられないこと」にチャレンジしてしまっているように感じるからです。

よくよく考えれば無理のあるスケジュールや課題なのに、きちんと現実に向き合わずなんとなく始めてしまい、案の定、やり始めるとだんだんときつくなって諦めてしまう。そして、取り組み始めてから諦めるまでの1週間、2週間という時間の間に「続けられない自分」「努力できない自分」にがっかりして、自己評価を下げ、傷ついてしまう。そういうパターンにはまっている人は意外に少なくない。

つまり、「継続力がない」という問題には、「実際、続ける力がない」という問題とともに「継続できそうか、できそうにないか」を判断できていないという意味での、判断力の問題もある、ということです。

自分がこれからやろうとしていることに、スケジュールや方法論の点で無理がないかどうか。何かに取り組み始める前に、そのことをまずチェックしてみてほしいと思います。

そしてもし、自分の傾向として「ついつい、継続できそうもないことに取り組んでしまう」という「判断力の問題」が大きいようであれば、その点について少し心理的な面を掘り下げてみてもよいかもしれません。

そこには、端的に言えば「こんなことをがんばっている自分をみてほしい」という虚栄心があるかもしれないし、「誘ってくれた人に、断るのが悪い」といった、実際に取り組む内容とは無関係な動機が隠れているかもしれない。心のうちからそういう邪念を払っていけば、何か新しいことに向き合ったとき、「自分が続けられそうか、そうでないか」ということを、今よりはもう少し、正しく判断できるようになるのではないかと思います。

1 2
名越康文
1960年、奈良県生まれ。精神科医。相愛大学、京都精華大学客員教授。 専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現:大阪府立精神医療センター)にて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て、1999年に同病院を退職。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。 著書に『心がフッと軽くなる「瞬間の心理学」』(角川SSC新書、2010)、『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『質問です。』(飛鳥新社、2013)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)などがある。 名越康文公式サイト「精神科医・名越康文の研究室」 http://nakoshiyasufumi.net/

その他の記事

終わらない「レオパレス騒動」の着地点はどこにあるのか(やまもといちろう)
日本初の「星空保護区」で満喫する超脱力の日々(高城剛)
今そこにある「SNSの呪い」の危機(岩崎夏海)
テレビと政治の関係はいつから変質したのか(津田大介)
ソーシャルビジネスが世界を変える――ムハマド・ユヌスが提唱する「利他的な」経済の仕組み(津田大介)
一流のクリエイターとそれ以外を分ける境界線とは何か?(岩崎夏海)
なぜ母は、娘を殺した加害者の死刑執行を止めようとしたのか?~ 映画『HER MOTHER 娘を殺した死刑囚との対話』佐藤慶紀監督インタビュー(切通理作)
「2分の1成人式」の是非を考える(小寺信良)
減る少年事件、減る凶悪事件が導く監視社会ってどうなんですかね(やまもといちろう)
今週の動画「太刀奪り」(甲野善紀)
テレビのCASがまたおかしな事に。これで消費者の理解は得られるか?(小寺信良)
宇野常寛特別インタビュー第6回「インターネット的知性の基本精神を取り戻せ!」(宇野常寛)
“B面”にうごめく未知の可能性が政治も社会も大きく変える(高城剛)
『「赤毛のアン」で英語づけ』(2) 何げないものへの〝感激力〟を育てよう(茂木健一郎)
「言論の自由」と「暴力反対」にみる、論理に対するかまえの浅さ(岩崎夏海)
名越康文のメールマガジン
「生きるための対話(dialogue)」

[料金(税込)] 540円(税込)/ 月
[発行周期] 月2回発行(第1,第3月曜日配信予定)

ページのトップへ