高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

イノベーションが「IT」で起きる時代は終わった

高城未来研究所【Future Report】Vol.380(2018年9月28日発行)より


今週は、東京にいます。

まるで梅雨のような日が続く秋の空模様ですが、明日、9月29日はいよいよ「J-WAVE INNOVATION WORLD FESTA 2018」の基調講演に登壇します。
いつものように何を話すのか決めておりませんが、今後、どこにイノベーションが起きるのかにつきまして、僕なりにお話しできればと思っております。

さて、帰国早々、あたらしいiPhoneを入手しましたが、ここにイノベーションはまったく起きていないと感じました。
XS Maxは、ネーミングの好き嫌いはさておいたとしても、あまりに重く高価で、バックアップで使っているSEに乗り換えようかと思うほどです。

しかし、Appleは、史上最高値の株価を更新しており、その理由は、iPhone等の利益率が高い点だけに集約されています。

iPhoneの原価が安いことは周知の事実ですが、全世界のスマートフォン・シェアでは14%しかないのに、全世界のスマートフォンの利益の85%をアップルは手にしているのがAppleの株価が高い理由で、今年、ついに時価総額100兆円を超える企業となりました。
しかし、世界でもっとも価値が高くキャッシュリッチなAppleでも、いまや技術的に新しいイノベーションを起こすことは難しく、その実態は、有り余る資産を使って「アップルはイノベーティブな企業で、アップルが出すツールを手にすれば、誰でもイノベーションが起こせる」という錯覚(またの名をブランディング)を人々に与えることに成功している企業にすぎません。

10年以上前に出した自著に書きましたように、モニターのなかで完結するデジタル、いわゆる「IT」は、2010年代前半で終わりだと、今も昔も僕は考えています。
その後は、「まだ、なにか起きるんじゃないか」という期待感だけを高めて、安価に製造したものを、高額商品として売るのに余念がない、つまりブランディングやマーケティングが上手な企業が生き残ります。

小売業を見渡せば、オンライン・ビジネスは、全小売の10%前後しかありませんので、アマゾンはまだまだ伸びる余地もイノベーションもあるのでしょうが、スマートフォンやモニターのなかを主戦場とするAppleやグーグルは、これから急速に伸び悩む段階に入ると僕は考えます。
「そんな筈はない!」と十年前のシャープも五年前のGoProも言われていましたが、現状は推して知るべしで、諸行無常はITとて例外ではないのです。

では、今後イノベーションは、どこで起きるのでしょうか?

この数ヶ月、世界中の未来学者と話し知見を得た、僕が考える「7つの可能性」を、いよいよ明日、お話ししたいと思います。

テーマは「30年後の世界」。

講演内容は、一部J-Waveでも放送予定です。

何卒お楽しみに!
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.380 2018年9月28日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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