やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

Hagexさんの訃報に関して



 すでにブログや文春オンライン向けにHagexこと岡本顕一郎さんの訃報について原稿を寄せておるわけですが、その衝撃的な死から5日ほどが経過してもなお、私個人においてはショックが冷めやらぬところであります。

 また、彼についてはネットでの著名人であり、またネットウォッチャーとしての活動を通して良い面でも悪い面でもきちんと目立ってきたがゆえに、ある種の毀誉褒貶、そこまで聖人君子でもなかったんじゃないのという彼の貢献に否定的な話も出ております。

 たぶん、ですが、もしも岡本さんがいまその評価をどこかで聞いて、どう思うかって言えば頭掻いて「そりゃそうだよね」で終わると思うんです。まあ、ある意味で分かってやっていたというか、ゲスい話は大好きで、ゴシップをまとめてウォッチネタとしてネットに投げることが彼の本当の意味での“ライフワーク”だったわけで。やり過ぎ、書き過ぎという批判あることも承知で好きなことをネットでやっていた、それがたまたま、ネットで活動する様々なネット有名人、あるいは5ちゃんねるのクズどものしょっぱい人生譚、事件録を取りまとめてネタとして書き続けたことにあったのです。

 だからこそ、彼の書くものは読み手を選ぶだけでなく、こんな小さなネタまでまとめて書いてて本当に好きだねっていう細部を愛でるところに価値がありました。私もネットでの炎上をまとめて解説するのが昔から好きでしたが、やはり一般媒体に原稿を寄せるようになってからそういう芸風からの「卒業」は余儀なくされていきます。しかし、Hagexさんは違った。本当に好きであり続け、これから世に出るぞということで実名での活動も視野に入れつつもなお、ネットにいる変な人を、有名か匿名掲示板の名無しかにかかわらず愛し続け、書き続けたのです。

 つくづく、彼は運がなかったと思います。繰り返し、繰り返し書きますが、あんなところであんな死に方をするような、その程度の男ではなかった。一方で、そういう殺し方をした犯人の犯罪は許せないものの、殺した人物もまた、そういう犯罪をしでかすような途方もないダメ人間だったと断罪することはできない。それは、駄目な奴に殺された不運な男だったと私たちが割り切ることになってしまう。彼の死に意味を持たせるのならば、やはり殺した人物の想いをもっと開き、罪を償い、魂が救済されることで、私たちも積極的に事件に価値を持たせ、教訓とし、前に進んでいきたい。

 何より、Hagexさんが実名での活動を行うにあたり、いろんな悩みがあったようですし、私自身も「切込隊長」を名乗るネットで訳の分からない有名人から実名の「山本一郎」として活動していくことで、ネットで良くある「時代の波に乗り損ねてフェードアウトしていく書き手」にならないよう自分なりに考えてギアチェンジをしてきたという自負もあります。だからこそ、彼が「もっと世に出なければならない」というときに、先行事例としてアドバイスできる機能を演じられるように、彼からは見えていたのかもしれません。

 その矢先の出来事であっただけに、やはり彼が生きて何を為そうとするのか、どういう経緯を踏むのかは興味も関心もあった。ただただ残念で、痛恨であったなかで、何か一つでも、光る救済はないのか、拠り所とするべきものはあるのか、これは生きて背負う側の問題じゃないのかと、いまは思っています。

 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.228 畏友・Hagexには言葉をどれだけ使っても追悼が追い付かないうえに世界経済も不安だし世の中が真っ暗に感じて仕方がない
2018年6月29日発行号 目次
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【0. 序文】Hagexさんの訃報に関して
【1. インシデント1】「視界不良」に怯える世界経済
【2. インシデント2】スマートスピーカーの可能性は実のところどうなんでしょうか
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

 
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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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