※高城未来研究所【Future Report】Vol.345(2018年1月26日発行)より
今週は、シンガポールにいます。
数日前に滞在していた東京は大雪で、数日後に行く予定の京都は氷点下の雪。
そして、ここシンガポールは、日々30度を超えています。
気温差もさることながら、湿度の差も激しく、時差以上の違いを厳しく体感しますが、なにより、数ヶ月前にオープンしたチャンギ空港の新ターミナルと成田や関空との差に驚きました。
昨年10月末にオープンした直後にも利用し、まだ、開港まもないので利用者が少なく、閑散としている印象でしたが、実際は、驚くほどの無人化空港です。
思い起こせば数ヶ月前、エチオピアのアディスアベバの空港から出国しようとした際、あまりの乗降客の多さから、空港内に立ち入るのを制限され、ターミナルどころか、敷地内にも入れないほどに人が溢れていたのを思い出しました。
その理由は、ただ空港利用者数が多いのが問題なのではなく、セキュリティやチェックインなどの手際や段取りが悪いのが原因でした。
これは、インドやフィリピンなどの新興国でも多く見られる空港の光景で、つまり、今時空港で大行列を見かける国は、先進国ではない、とも言えます。
確かに厳しくて有名な米国入国時でも年々自動化が進んでおり、アメリカ入国審査を高速化する「グローバルエントリー」を調べると、アメリカ市民やアメリカ永住権所持者以外では、メキシコ、イギリス、ドイツ、スイス、パナマ、韓国、シンガポール、インド、コロンビア国籍渡航者を対象に施行しており、日本は含まれていません。
この背景には、日米同盟と言いながらも、日本国内の法務省や警察庁等の「省庁の壁」が立ちはだかり、結果、日本人はアメリカ入国審査を高速化できない由々しき問題があります。
いわば、日本政府の情報化と透明化が想像以上に遅れていることを、物語っています。
進んだ電子政府と言われるエストニアでは、IDカード1枚で身分証明証、健康保険証、運転免許証、公共交通機関のチケットとして利用可能で、銀行口座へアクセス、医療データ、法人登記など、IDによる電子署名によって様々な電子サービスを使用することができる上に、スマートフォンに、それらの機能を入れることが可能です。また、投票から納税まで電子化されており、税理士や会計士といった職業は、過去のものとなりました。
そう考えると、話題のブロックチェーンなどの「次の技術」が社会を変えるのではなく、旧態依然とした社会システムを一度壊すことができなければ、未来は開かれません。確かにエストニアやシンガポールは、国土が小さく、人口も少ないという言い訳同然な話も頻繁に聞きますが、関空の新ターミナルや2020年を目指して開港予定の日本各地ターミナルや増築部のアイデアに、僕は未来を感じません。
仕事柄もあって、今後日本で開港予定の空港新施設のイメージ図を見ることもあるのですが、そのイメージ図は、ほぼ100%にこやかな家族づれで賑わう「未来の空港」が描かれています。
いまどき、どこの並行世界だと思うほど、古くて鈍臭い「未来の空港」のイメージ図は、昭和感を引きずる日本の国家戦略のように思えてなりません。
このメールマガジンでも、一年半ほど前に訪れたオーストラリアの入国審査が、デジカメによって完全無人化になったことをお話ししましたが、かつての風物詩だった「行列」や「混雑」は、高度経済成長同様、20世紀の思い出に過ぎないのです。
現実を、いま一度見極める必要があります。
未来の空港は、無人です。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.345 2018年1月26日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 未来放談
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
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