高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

どんなに撮影が下手な人でも人を美しく撮れる黄昏どきの話

高城未来研究所【Future Report】Vol.388(2018年11月23日発行)より

今週は、那覇にいます。

東京の朝が10度を切るこの時期、那覇の日中は27度まで上がる日もあり、街を歩けば、忘れかけていた夏の日々を、まるでタイムスリップして思い出すような不思議な感覚に陥ります。

年間を通じた沖縄観光客のピークは9月で、まだまだ夏の余韻が残る10月も賑わいますが、11月になると温暖で静かな沖縄がやってきて、のんびり過ごしたい旅行者には、もっとも心地よい良い時期になります。

実は、半年におよぶデトックス期間がやっと終わりまして、今週、検体を米国に送付しました。
体の中に溜まった有機溶剤は、汗からしか排出することができませんので、春から秋にかけて解毒を行うのが、もっとも効果的だと言われています。
そこで今年は、人生初の「デトックスイヤー」と名打って、ゴールデンウィークをたっぷり満喫した後からデトックス期間に入り、半年経った11月中旬まで、あらゆる施策を試みました。
1ヶ月後の結果が楽しみです。
いったい、どれくらい解毒しているのでしょうか?

そして、デトックス期間が明けた今週から、恒例の冬季トレーニングを、ゆっくりはじめることにしました。

毎年、撮影に適している日照時間の長い春から秋にかけて、北半球をせわしなく移動する生活を続けており、冬になると執筆しながら自主トレを行って、再び春に長い旅路に出るような生活を、もう四半世紀以上続けています。
こう書くと、まるでプロ野球選手のシーズンのようですが、スタジオや室内での撮影を嫌い、できるだけ屋外の自然光で撮影をしたいと考える人たちは、皆、同じような生活スタイルに行き着きます。

LEDをはじめ、どんなに照明器具が高輝度で利便性が高まろうとも、太陽光には、かないません。
なかでも、真夏の夕日は僕の大好物で、いわゆる「たそがれ」どきは、「誰ぞ彼」という語源が示すように、誰もが人を見て、心をときめかせる素晴らしい時間です。

事実、どんなに撮影が下手な人でも「人を美しく撮れる」=ゴールデン・ポートレートの時が、この時間帯なのです。

例えば、真夏の日中に屋外で人物を撮影すると、厳しく照らす太陽光が顔に強い影を描き、本来ならやさしい表情が、険しく見えてしまいます。
ところが、「たそがれ」どきならば、沈みかけた太陽が優しい光を放ち、人をやさしく浮かび上がらせます。
それゆえ、本来険しい顔している人がやさしく見えることから気になって、「誰ぞ彼」=「たそがれ」=「黄昏」どきと、古典でも呼ばれてきました。

この時間帯を、英語では「マジックアワー」と言います。
別名「ゴールデンアワー」と呼ばれるこの時間帯は、日没後に数十分程の薄明の時間帯を指す撮影用語で、光源となる太陽が姿を消しているため限りなく影が無くなり、色相が柔らか暖かく、金色に輝いて見える状態です。

かつて、肉眼では美しく見えても、実際に「マジックアワー」を撮影すると暗部が多く、時には汚く見えてしまうこともありました。

しかし、時代はデジタルです。

デジタルカメラが一般化し、スマートフォンにも暗部に強い高機能カメラが搭載される今、フィルムでは描くのが難しかった「マジックアワー」を、誰でも簡単に写しだすことが可能な時代に、僕らは生きています。

デジタル時代の「マジックアワー」。

まだ、夏の余韻がわずかに残る沖縄で、日々走りながら何度も立ち止まり、静かで美しい夕日ばかりを、あたらしいスマートフォンで撮っている今週です。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.388 2018年11月23日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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