高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

音声入力とAIによる「執筆革命」

高城未来研究所【Future Report】Vol.666(3月22日)より

今週も、東京にいます。

先週、「脱キーボード」や「脱Mac」のため、テキスト入力の大半をiPhoneを使った音声入力に変えたとお伝えしましたが、想像以上に多くのご質問を頂戴しました。

なかでも「どのようなアプリケーションをお使いですか?」と多くの方々からお尋ねされまして、メールの返信にはメールアプリの音声入力機能を使用し、執筆にはPagesやメモを使用するなど、普段使い慣れているアプリケーションをそのまま音声入力に切り替えただけに過ぎません。

ここ1~2年でAppleの音声認識技術が飛躍的に向上しただけでなく、iOS16以降ではキーボードと並列して使用できるようになったため、音声入力で判断が難しい熟語や固有名詞などはオンスクリーン・キーボードと併用するのがコツだと感じています。

格段、特別な高性能マイクを使用しているわけではなく、AirPods Proなどを使うこともありますが、地下鉄車内でアナウンスが流れている時などは音声入力が上手くいませんので、iPhoneを口元に近づけてボソボソと話すようにしています。こうして、地下鉄の車内で隅に立ちながら、こっそり執筆?している最近です。

現在、3冊の本を並行して執筆しており、もう四年もかかっている和牛本の他、オーバーツーリズム本、そしてコーヒーに関する本を日々書き綴っていますが、従来の執筆スタイルを続けていたのでは、到底時間が足りません。
他にもヘルスケアサービスの立ち上げ、読者感謝祭やその翌日から始まる夏の撮影のための準備など、やるべきことが山積みです。

さらに、今月オープンした屋久島初のノースフェイス店舗のオープニング冊子のための紀行文や来年クランクイン予定の脚本など、非常に多くの作業を並行して行っています。
しかし、音声入力に切り替えたおかげで、かなり効率的に執筆できるようになりました。

歩いている時も、立っている時も、入浴中でさえも、ついでに横に寝転がっている時も、今まで執筆できなかった場面で作業ができるようになったのは、僕にとって大きな「執筆革命」です。

その上、書く速度も相当数上がっています。
通常、400字の原稿用紙1枚を書くのに最低でも15分は必要だと言われていますが、今では同じ文字数のテキストを2、3分で書き上げることができるようになりました。
単純計算しても5倍から7倍程度の生産量が見込めるようになったため、以前よりも時間効率も大幅に向上。

ただし、音声入力の完成度は70%程度ですので、やはりキーボードを使った誤字脱字等の修正は必要不可欠です。
とはいえ、わざわざMacBook Proを持ち出す必要はなく、iPhoneやiPadのオンスクリーン・キーボードで修正するだけで十分ですが、この修正作業も徐々に音声入力で行うようになりつつあります。

こうして出来上がった原稿を、時々の最新AIに流し込んで校閲後に最後の筆を入れるようになりました。
いま現在では、GPT4やGeminiを遥かに上回るIQ101を叩き出した「claude.ai」(Claude3)が校閲作業では秀逸です。

もはやこうなると執筆というよりリミックスする感じですが、生産性が高くなったため、年間で書けるというよりリミックスされた総量は10年前の5倍や10倍に当たるだろうと推察します。
これが10年後に100倍になるか分かりませんが、どちらにしろ大切なのは、実際の現場で何をどのように見るかと言う、実体験や目線に他なりません。

それをスタート地点として独自のゴールを設定できれば、後は音声入力やAIといったテクノロジーによって、まるで協業するように作り上げていくのが現代のクリエイティビティーだと実感します。

かつて、400字詰め原稿用紙にシャーペンで文字を書いていた時代から、ワープロ、コンピューターとキーボードを叩いて執筆するようになったのがこの40年間。
つまり、音声入力とAIによる「執筆革命」は、僕にとっておよそ半世紀ぶりとなる革新的な出来事なのです。

春を感じるようになったいま、毎朝1時間「早歩き執筆トレーニング」しながら「移動距離とアイデアは比例する」を実感する今週です。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.666 3月22日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 大ビジュアルコミュニケーション時代を生き抜く方法
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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