高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

ウクライナ情勢と呼応する「キューバ危機」再来の不安

高城未来研究所【Future Report】Vol.568(2022年5月6日発行)より

今週も、ハバナにいます。

この時期のハバナは、冬が去ってハリケーンシーズン前の心地よい時期です。最高気温は28〜29度、最低気温は21度前後と暑すぎず、過ごしやすい日々が続きますが、夏に向けて日に日に暑くなってきました。
また、島国キューバの海からの玄関口ということもあって、街に心地よい風が吹き抜けます。

しかし、モノがありません。
現在、ボトル入りのミネラルウォーターを買うのは至難の技で、これは観光客だけでなく、社会主義による配給制度を受けるキューバ国民でも牛肉はおろか豚肉を入手するのも大変です。
さらにエネルギー不足から停電が頻繁に起きています。

このような状況が続き、国民の不満がついに爆発。
昨年7月11日、キューバ革命以来の大型デモが国中で巻き起こりました。
社会主義の同国においてデモは極めて異例で、参加者は「電力と食べ物の状況」に憤慨し、武装した治安部隊と参加者の間でで小競り合いが発生。
1000人以上の逮捕者も出ました。

そして今年、キューバ検察がデモの参加者790人を訴追し、最長で禁錮30年を求刑したことでさらに事態が悪化。
こうした政府の強弁姿勢の背景には、反体制運動が再燃したところに米国が裏工作をはじめ、国体が揺るぎかねない危機感からだと国民は話します。

というのも、近代キューバを作った革命家であり建国の父とも言えるフィデル・カストロが2016年に死亡し、後を継いだ弟のラウロ・カストロも2018年に実質的に引退。
これにより、1959年のキューバ革命以降初めて、故フィデル・カストロとラウル・カストロ兄弟以外の人物が同国を治めることになり、かつてのような全国民一丸となって国を変えてきた一体感が見られません。

正直、現議長ディアスカネルにカストロ兄弟のようなカリスマ性はありません。
特にキューバ革命を知らない若年層にとっては、わずか数十キロ先にある「なんでもある街」マイアミと「なにもない街」ハバナの差は歴然で、SNSを通じて二つの町の差を知り、意を決して国を離れる人たちも少なくないのです。

以前はキューバから他の国へ行くのは大変困難でしたが、昨年11月、突如ニカラグアがビザなしでキューバ国民の渡航を許可すると発表して以降、若年層を中心にニカラグアまで空路で渡り、そこから陸路で米国を目指す人たちが後を絶ちません。

米国政府は特別措置としてキューバ人を「難民」認定していることから、国境まで辿り着けば、米国内に居住して働くことが可能です。
ニカラグアまで飛行機で行くコストが、およそ3000ドル。
ニカラグアから陸路でホンジュラス、グアテマラ、メキシコを通って米国国境まで行くコストが4000ドル。
合計7000ドルあれば、新天地アメリカで暮らすことができるのです。

また、マイアミには大きなキューバ人コミュニティがあり、キューバでそれなりの仕事をしていた人なら、このコミュニティ内だけでも仕事を得られます。
それゆえ、著名なミュージシャンやアーティストまで、続々と米国を目指すようになったのが現在です。

一方、キューバ政府は、ウクライナ情勢が緊迫する最中、「米国の裏庭」とも呼ばれる中南米諸国と連携を加速し、反米国家との関係を強化することで安全保障をめぐる米国との交渉を有利に進めようと動き出しました。

ニカラグアのオルテガ大統領は国営放送を通じ、全面的なロシア支持を表明。ベネズエラのマドゥロ大統領も「我々は、平和、主権、領土防衛のため、ロシアとの強力な軍事協力の道を確認した」と述べており、あわせてキューバ外務省も「米国の絶え間ない偽情報とプロパガンダ戦争に直面しているロシアへの連帯を表明する」と声明を発表しています。

ロシアのプーチン大統領は昨年12月の記者会見で、北大西洋条約機構(NATO)による東欧諸国へのミサイル防衛システムの配備を非難し、「我々が米国境近くにミサイルを配備したら、米国はどうするのか」と発言し、事実、ベネズエラやキューバなどにロシアが極超音速ミサイルを配備する可能性が高まっています。

このままでは、再び「キューバ危機」がはじまります。
1962年10月、当時のソ連がキューバに攻撃用のミサイルを設置したため、核戦争一歩手前まで進んだ「キューバ危機」の再来となるのか?

この国に生まれた知己の友人たちは、いつ国外脱出を図るかどうか、今日も悩ましい日々を送っています。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.568 2022年5月6日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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