名越康文
@nakoshiyasufumi

名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)より

継続力を高める方法—飽き性のあなたが何かを長く続けるためにできること

オール・オア・ナッシングはNG

ただ、「判断力」と申し上げましたが、その一方で僕はこうも思うんです。僕らは「続けられそうもないこと」にあえてチャレンジし、それをやりとげるからこそ、素敵な自分に生まれ変われるんじゃないか、と。これはこれで、大事な考え方だと思うんですね。こういうチャレンジ精神のようなものを安易にそぎ落としてしまったら、それはそれでまずい。というのも「続けられそうもないことに取り組んでみたい」という情熱こそが、人を成長させるエネルギーになることは少なくないからです。

ですから僕は、この問題については「10か0か」の話にしない、ということが重要だと思っています。例えばあなたがこれまで取り組んだことの10のうち1ぐらいしか続けられない人だったとすれば、それを3とか、4ぐらいに持ってくることを考えるようにする。1割バッターが3割バッターになる、ということを考えるんです。

そして、その「打率」を上げるために必要なのは「意思」とか「努力」ではありません。最初に申し上げたように「工夫」なのです。

では「工夫」とは具体的に、どのようなものなのか。これは人によって、あるいは状況によってさまざまなのですが、やるべきことは同じで、次の2つのステップです。

まず、その「何か」を達成するために必要なことをリストアップする。そして次に、自分の行動習慣の中で、比較的変えやすい要素をひとつ、あるいはふたつ変えられないかを検討する。単純なことではありますが、案外この2つのステップを丁寧に踏むだけで、「継続の確率」というのは上がっていくものなんですね。

たとえば僕は、月に何回かは浄瑠璃や能、最近では落語などの舞台を見にいきたい、と考えています。僕にとってはたったこれだけのことでも継続できるか、難しいところなんですね。仕事もほとんど毎日内容が異なりますし、たまたま休みの日に、うまい具合にチケットが取れるかどうかわからない。流れに任せていると、月に1回も舞台に行けないということになってしまいそうなんです。

そこで僕が考えたのは、<「思い立ったら吉日」というルールを自分に課す>ということでした。たとえば仕事のスケジュールが空いて、その日に行われている舞台があったとします。そうしたら、その瞬間に、電話をしてチケットを押さえてしまうんです。

「え? それだけ?」と思われるかもしれませんね。ただ、これは僕のような面倒くさがりにとっては、ちょっとした「人格改造」です。以前の僕だったら「お、スケジュールが空いた。落語、行けるかな?」と考えたとしても「明日、予約の電話しよう」というふうに、後回しにしていた。電話をかけるのを億劫がっていたと思うんです。

でも、「月に2-3回は舞台を見に行く」ということを継続させるために、そこについてはちょっとがんばって、「モード」をカチッと切り替えるようにする。何時間もモードを切り替えるのは大変ですが、「電話をしよう」と考えて「実際に電話をかける」までの間であれば、瞬間的に切り替えるだけで済みますから、やろうと思えばできるんですね。

僕の場合、たったこれだけのことで、「月に2-3回舞台に行く」というミッションをある程度、継続できるようになりました。

もちろん、これはあくまで僕が経験した一例でしかありません。しかし、大掛かりなことをしなくても、自分の状況をきちんと見極めればほんのちょっとした工夫でも継続率を高められる、という点では、ひとつのヒントにはなると思います。

「続けられない!」「継続力がない」と悩んでいる人は、自分の1週間、1か月の行動週間の中で、自分のやりたいこと、続けたいことを妨げている要因はどこにあるのか。どこを変えれば、いままで続けられなかったことを続けられるようになるのか、というふうに考えてみてください。

それは言い換えれば「いまの自分(現実)を知る」という作業でもあります。たとえばいくらダイエットをしても続かない、という人は、<私の食生活が安定しない(コントロールできない)原因はどこにあるか>と考えてみる。それはもしかすると、夜寝る時間が一定していないからかもしれません。ではなぜ、夜寝る時間が一定しないのか。それは、仕事が終わってから、なんとなく飲みに行って、そこで食事を摂っているからかもしれない。

だとすれば、その人の場合は「飲みに行く回数を減らす」ということが、生活習慣を整える上で、一番の近道かもしれませんね。それは、「摂取カロリーを減らす」といった、直接ダイエットに関係すること以前の「生活習慣を変える」といったことですが、結果的には「ダイエットの継続率」ということでいえば、飛躍的に確率を高めることができるはずです。

飲みに行くのをやめれば、しっかり食べても30分ほどで食事を終えて、飲みに行った日よりも2時間は早く帰宅できる。その2時間で、睡眠時間をしっかり確保して、朝、早起きをする。それだけでも、それまで3日坊主だったダイエットを継続できる、大きな要因となるはずなんです。

まずは自分が「続けられそうもないことに手をつけようとしていないか」をチェックする。その上で、何かに取り組み始めたら、それまでの自分の生活習慣の中で、それを継続する上で有効そうなポイントについて、変えられるものを変えてみる。

たったこれだけのことで、それまで1割バッターだったあなたの「継続力」は、3割、4割バッターに成長させることができるのではないかと思います。

 

名越康文メールマガジン「生きるための対話(dialogue)

2015年10月19日 Vol.110 目次

00【イントロダクション】名越式性格分類ゼミのこれから
01【近況】読者からの感想、戦後の匂い、内向きの攻撃性について
02【コラム】継続力を高める方法—飽き性のあなたが何かを長く続けるためにできること
03精神科医の備忘録 Key of Life
・コーヒーとカレー
04カウンセリングルーム
[Q1] 「償い」について
05特別対談:甲野善紀×名越康文
第2回 努力するいやらしさ、努力しないズルさ
06講座情報・メディア出演予定
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名越康文
1960年、奈良県生まれ。精神科医。相愛大学、京都精華大学客員教授。 専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現:大阪府立精神医療センター)にて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て、1999年に同病院を退職。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。 著書に『心がフッと軽くなる「瞬間の心理学」』(角川SSC新書、2010)、『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『質問です。』(飛鳥新社、2013)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)などがある。 名越康文公式サイト「精神科医・名越康文の研究室」 http://nakoshiyasufumi.net/

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