高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

台湾から感じるグローバルな時代の小国の力

高城未来研究所【Future Report】Vol.301(2017年3月24日発行)より


今週は、台北にいます。

いまや往復6000円台のチケットもある台北と羽田の往復は、ちょっとした国内旅行より格安な旅先となりました。

馴染みがある人なら、天気が悪い日の買い物は新宿地下街を利用するように、MRT中山駅から台北駅の地下街をウロウロするような1日を送るでしょうし、フラりと台北駅から地下鉄で30分の北投温泉に行けば、都会と隣接した温泉を楽しめます。
日本のコンビニチェーンなどの看板も多く、両国良好な関係を超えた「馴染み」があるほどの旅先で、街を歩けば、この国も日本同様成熟したんだとあちこちで実感します。

その上、最近台北の若年層と話すと、日本より社会が先進的のように感じるようになってきました。
これは、ただ隣の芝生が青く見えるだけなのかもしれませんが、一人当たりのGDPなどの数値や、特に購買力平価GDPが日本よりはるかに高く、友人知人と話しても十年前の台北とは違った豊かさが確かにあり、それは数値とは別のものだと思います。

例えば、文化的先進性の指標とも言えるLGBTシーンをみても年々大きくなっており、いまや台北のゲイパレードは、アジア屈指といっても過言ではありません。
なにより、ゲイカップルが次々政府の公式映像などに出演している様は、到底日本では考えられません。
また、この一月には、2025年までに原発の全廃を目指すアジア初の脱原発法も成立させました。

一方、成熟した台湾も日本同様少子高齢化社会に突入しており、人口減にも直面しています。
しかし、中国との軋轢からの緊張感や、それに対抗すべく社会の風通しの良さなどがあり、街に活気があります。
日本における米国の存在感が強大なように、同じ島国台湾にとって中国は強大です。
だからといって、どこかの強国により過ぎることもなく、時代のバランスを上手くみつけているように見え、このあたりは「島国ならではの本来の感覚」のようにも思います。

これは、近年の韓国社会でも同様に感じ、北朝鮮との緊張感と、大統領さえ逮捕されるほどの社会の風通しのよさが、ニューエコノミーに力を与え、成長を続けていると感じます。
このような「グローバルな時代の小国の力」を再考すると、対中国や対北朝鮮における最大の国防とは「近代兵器」ではなく、実は柔軟性のある「風通しの良い社会」ではないか、と個人的に考えています。

中国も北朝鮮も政治的指導者が逮捕されることは、考えられません。
為政者が国家や国有財産を私物化しているとまでは言いませんが、法律よりも政治的指導者が実質的に上位に位置する前近代的な村社会は、二十一世紀的情報化社会に相容れないのは、間違いありませんし、かつてのソ連や東欧同様に、中国や北朝鮮がもし自壊する、もしくは不安定な社会になる日が来るならば、それは近隣諸国の「風通しの良い社会」からの影響からはじまるのは、歴史の教えでしょう。

現在、日本の社会システムは、中国や北朝鮮という古い社会システムと、台湾や韓国などの急速にあたらしくなる社会システムの間にいるように見えます。
すでに、一人当たりのGDPは韓国に抜かれただけでなく、先進国最低になっており、製造業生産額世界第2位の「ものづくり大国」の実態は、1人あたり製造業生産額はG7平均以下まで落ち込み、それを誤魔化しながら、過酷な労働環境が下支えしているような状況にあることは、日本が古い社会システムのままである事のなによりの証左です。

これは、日本は高齢者が多いから、生産性を計るために1人あたりGDPを使うと、日本の生産性が過小評価され、実際の問題は少子化にあるのだ、という意見も聞きますが、実は、韓国、台湾は、日本より合計特殊出生率が低いのです。

自国の市場が自然と拡大する子供の数がその国の未来を決めるのは、幼児死亡率が減ったアフリカでも近年頻繁に聞かれる話で、そう考えると、現在はまだGDPが高いが成熟しきった日本、台湾、韓国は、今後ポストITと言われる急速な機械化(ロボティックス化)に失敗すれば、すべて中国に飲まれるか、東南アジア諸国に富を奪われる立場になりかねません。
そして、急速な機械化の前に必ず情報化社会があり、結果的にそれが開かれた社会をもたらすことになるのです。

日本、台湾、韓国が共に中国に飲み込まれないためには、まず、徹底した情報公開による開かれた社会を形成し、あらゆる透明化と自浄が必要です。
事実ここ数年、台湾や韓国の政治を見ると、急速に開かれた社会を目指し、旧来型の既得権を自ら打破し、次へと向かう様が見受けられます。

一見、東アジアの小国は、それほどどの国も違いはないように見えるかもしれませんが、ダムの決壊も小さな穴からはじまるのが常です。

ここ台北には、今後社会が大きく変わるであろう小さな穴を、街を歩くだけでいくつも感じるのです。

 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.301 2017年3月24日発行発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 未来放談
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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