高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

大きくふたつに分断される沖縄のいま

高城未来研究所【Future Report】Vol.557(2022年2月18日発行)より

今週は、那覇にいます。

暖かい気候の沖縄では、桜(寒緋桜)が1月中旬ごろから咲き始め、毎年2月中旬頃まで今帰仁村などで盛大な花見イベントが開催されています。
今年は5月15日に日本復帰50年を迎えるため、各地で「50」の文字が見られました。

一方、那覇随一の国際通りは、新型コロナウイルス感染症拡大予防のため臨時休業(もしくは廃業)している店舗が多く、また「まん延防止等重点措置」期間中ということもあって、飲食店の大半は20時〜21時に「一応」閉店しています。
年末には、ほぼ満室まで戻ったホテルの稼働率も現在は30%前後まで落ち込み、観光タクシーのドライバーも4勤1休が3勤2休へと変わり、もはや補助金なしでは暮らしていけません。 
今週になっても沖縄県では新型コロナウイルスの新規陽性者が1日700人を超えるほどの増加傾向にありますが、ピークは超えたと判断され、来週には措置が解除される見込みです。

しかし、沖縄イオンは、「まん延防止等重点措置」が解除以降となる3月1日から営業時間を短縮すると発表。
人々のライフスタイルが変わって、当面元に戻らないと考えている様子が伺えます。

北部地区医師会病院とうるま市に研究拠点を構える長崎大学のバイオベンチャー企業AVSSによれば、ワクチン効果は飲酒の頻度が影響しており、ほとんど飲酒しない人に比べ、毎日飲酒する人はワクチンの効果が低下する確率が2.34倍になり、また、年齢が上がるにつれて抗体量が下がる割合が高く、20代と比較して40代は6倍、50代では7倍、60代では10倍低下すると発表しました。

果たして、毎日飲酒する割合が多い沖縄の高齢者にワクチン効果がどこまであるのでしょうか?
もしかしたら、沖縄でウィルスまん延が先行する理由は、大きな要因と言われる米軍だけでなく飲酒もあるのかもしれません(と思うほど、閉店したはずの飲食店の奥から騒ぎ声が響きます)。

さて現在、その米軍を巡り沖縄は大きくふたつに分断しています。
それが、沖縄米軍基地に対して地元主導を掲げる保革混在勢力「オール沖縄」と、中央政府の補助金確保を目的とする県内市長連合「チーム沖縄」です。

「オール沖縄」は、もともと自民党だった故翁長元那覇市長が、中央政府の圧政と対峙するため「保守と革新を越えた沖縄」といったスローガンのもとに、名称の由来の通り、保守・革新にまたがった広範かつ多様な勢力を抱え拡大してきた組織です。
命題は、在日米軍基地の沖縄県内移設に反対、及び在沖縄アメリカ海兵隊の沖縄県外移転を要求の2点です。

国土面積の0.6%にすぎない沖縄に、全国の70.4%もの米軍専用施設が集中する異常な負担に異を唱え、「日本の安全保障は日本国民全体で考えるべきものである」「米軍基地は、沖縄経済発展の最大の阻害要因である。基地建設とリンクしたかのような経済振興策は、将来に大きな禍根を残す」「沖縄21世紀ビジョンの平和で自然豊かな美ら島などの真の理念を実行する」との理念のもと、「オール沖縄を」作りました。

翁長元市長は、自民党に在籍していた2014年まで自民党沖縄県連が戦う主要な選挙戦(過去の県知事選挙を含む)をことごとく取り仕切っていた中心人物であり、事実上、沖縄自民党の幹事長とも言える存在でした。
しかし、中央政府からの圧政に反旗を翻し、「イデオロギーよりアイデンティティ」を掲げ、保革合同戦略に転向。
米軍にモノを申せない中央政府に盾突く存在となりました。

一方、安倍政権時に菅官房長官のバックアップを得て設立した「チーム沖縄」は、振興予算と補助金を目当てにした日本式システムによるTAXイーター集団です。
発足した当時の中心的人物だった宮古島下地前市長は、当初「(オール沖縄では)振興予算がどうなるかとても不安だ。市町村はしっかり予算がないと仕事ができない。みんなに呼びかけたら『そうだな』となった」と設立経緯を語っています。
今週も「チーム沖縄」のバックアップを受け、無投票で再選した竹富町の西大舛町長が入札情報を事前に漏らした官製談合の疑い(とキックバック疑い)で逮捕されていますが、本件に限らず長年の癒着があったものとみられています。
まさにTAXイーター。

しかし、「オール沖縄」は中心的人物だった翁長元那覇市長がお亡くなりになってから急速に左傾化し、バランスを欠き保守派の離脱が目立つようになりました。
特に辺野古の鍵を握る名護に、近年、補助金が大量投入され、周囲の道はみるみる良くなって、名護市全体が補助金漬け。結果、先月行われた名護市長選も、事実上自民党率いる「チーム沖縄」が推した現職市長が圧勝することになりました。

今週、名護市の渡具知市長は、首相官邸で岸田首相と面会し、米軍基地に起因する騒音などの問題解決や米軍再編交付金を活用した「子育て無償化」などの各種補助金を直々に要請しています。
現在、コロナ禍のなかで補助金なしでは立ち行かない人たちが続出していることもあり、中央政府と距離を置きたかった「オール沖縄」から「チーム沖縄」へ移る人たちも少なくありません。

また今月、米軍(在沖米海兵隊)は那覇首都圏に位置する那覇港湾施設で、オスプレイの離着陸などを伴う訓練をはじめました。
このような先進国の近代都市で軍事訓練できる場所はなく(同施設での航空機運用は在沖米軍基地の使用条件を日米で定めた「5・15メモ」にも記載がなく)、海兵隊政務外交部長のニール・オーウェンズ大佐は、「(船と航空機を使う訓練に那覇港湾施設は)理想的な場所だ」と述べ、今後も訓練に使用する可能性を示唆しています。
あわせてオーウェンズ大佐は、「米軍の運用について抗議は受け付けない」と主張し、呼応するように日本政府はこの訓練について事実上容認しています。
これは台湾の都市部での接近戦を念頭に置いた訓練とも見られ、中国への圧力との見方もあり、この点でも観光業に従事する人たちは複雑な心境です。

事実上、観光業の活況に支えられてきた「オール沖縄」。
混沌とする現在の姿は、少なくとも「オール」ではありません。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.557 2022年2月18日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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