甲野善紀
@shouseikan

「風の先、風の跡――ある武術研究者の日々の気づき」 野元浩二氏による寄稿

歴史上もっとも幸運にめぐまれたある駆逐艦の話

甲野善紀メールマガジン「風の先、風の跡――ある武術研究者の日々の気づき」Vol.120<奇跡の駆逐艦「雪風」その1>より

 


<メルマガ著者 甲野善紀氏より>

私が著者やツイッター等で、すでに何度となく紹介している長崎県佐世保市のユニークな郵便局員、野元浩二氏から3月の1日に、その野元氏がまとめられた<駆逐艦「雪風」の話>と題する長文の読み物がメールで届いた。

内容は、以前私が野元氏から聞かせてもらったことのある「奇跡の不沈艦」、駆逐艦「雪風」についての話のまとめ。これが野元氏の地元である佐世保で建造されたということもあり、野元氏がさまざまな記録や本、また往時を知る人に会って聞いた話などを元に、野元氏自身がその独特の野元節を随所に散りばめて書かれたこの読み物は、私や私の周囲の人達だけが読むにはあまりにも勿体なく、ここに「特別読み物」として、このメールマガジンに不定期連載をさせていただくことにした。

<執筆者:野元浩二>

1960年4月8日、長崎県佐世保市生まれ。同市の郵便局に勤務。2003年、甲野善紀氏との出会いがキッカケで、ニホンミツバチの研究と保護活動、炭素循環農法も研究している。体力抜群、器用でメカに詳しく、人情に厚く、偏屈な人物ともたちまち親しくなれる人間力には、野元氏を知る誰もが感じ入ってしまう。知人に時々送られてくる長編のメールは、ユーモア溢れる佐世保弁で、読む者を笑わせ唸らせ、甲野氏がいつか『生協の白石さん』ならぬ『郵便局員の野元さん』を出版してほしいと切望するほど。野元氏自身による4000字に及ぶ自己紹介文はvol.120(及び本記事の最後)に掲載しています。
http://yakan-hiko.com/BN4906

 

ガンマンにたとえればワイアット・アープ?
かつて「不死身の戦艦」が実在した

甲野先生の著書にも出てきやすが、戦国最強の武将の一人と讃えられている本多平八郎(忠勝)は、生涯において参加した合戦は、57回に及び、凄まじい武功をたてつつも、かすり傷一つ負わなかったそうです。(しかし、小刀で孫に果物を剥いてやってる時に指を怪我して「ああ、わが命運も尽きたか!」と言うと、それからまもなく死んでしまったそうですが)

同じく、甲野先生の本に出てくる、西部の伝説的ガンマンであり保安官のワイアット・アープは、その神業のような射撃の腕(だれも射撃の練習するのを見たことが、ないっちゅうのも凄いっすね)と共に、有名な話が。

アープの兄弟や助手たち、周りの者は次々に凶弾に倒れていくのに、本人はガウンに大穴が開いたり、靴の踵に銃弾が当たったりするのですが、

これまた、なぜか、かすり傷一つ負わない。

また、現在にも、甲野先生をして「今の世において、古(いにしえ)の達人に匹敵する奇跡的な存在!」と言わしめた、麻雀真剣勝負20年間無敗の「雀鬼」こと桜井章一会長のような奇跡の人間が実在するのですが、先の太平洋戦争においても、奇跡の軍艦が、実在したのです!
その名は駆逐艦
「雪風」(ユキカゼ)!

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あの名作アニメにも登場する「雪風」

駆逐艦というのは、19世紀半ばに実用化された魚雷を積んだ小さな水(魚)雷艇を文字通り、駆逐(追い払う、退治するの意)するための小型の軍艦っす!

元祖はイギリスっすが、日本海海戦の時、自分の数十倍もあるロシアの戦艦に肉薄して魚雷で撃沈する大戦果をあげたことや、小回りが、ききやすし、小さすぎる水雷挺と違って外洋にも出れますし、非常に扱いやすいために各国で万能の軍艦として重宝されるようになりやした。

「雪風」は、アニメ「宇宙戦艦ヤマト」や、「ゲゲゲの鬼太郎」の(故)水木しげる先生の漫画にも出てきやすが、その名を知る人からは、


「奇跡の駆逐艦」!
「不死身の駆逐艦」!
「栄光の不沈艦」!…

等々、最大限の絶賛と尊敬の言葉で呼ばれていやす!

まあ、近頃の24時間テレビをはじめとする番組や週刊誌などのマスコミときたら、奇跡の○○!とか、感動の○○!とか、年末商戦でもねえのに奇跡や感動の大安売りや押し売りを、しょっちゅう、やっていてゲンナリしやすよね!
(もちろん、中には本当にグッとくる話もありやすが)

しかし、今からする話は、掛け値なしの真の奇跡と感動の話でがす!

そいから手前味噌ながら、これを読めば、軍艦やメカや武術に興味が、ある人に限らず、人間関係や会社経営などで悩んでいる人や人生に絶望してる人も治っちまうと思いやす。

何かに導かれるように
「雪風」のことを調べていたら……

ところで、なんで、あっしが、「雪風」の話をするかと言うと、「雪風」が、造られたのが、地元の佐世保海軍工廠(現、佐世保重工業、SSK)ってのと、あっしの母方の親戚の、おっさん(故人)が、「雪風」に乗っていてガキの頃から話を聞いていたっちゅうのもありやすし、(その奇跡にあやかって東日本大震災の次の年の年賀にイラストを書いたなあ)

そして、一昨年、熊本城の護国神社で加納親分主催で、(←雑誌ポパイにも載った腕のいい鍼灸師で、甲野先生の熊本講習会の世話人を、やっとられる人物っすが、とにかく半端じゃねえっす)高野山で修行した金尾住職らを呼んで行われた、夜泣きする刀の鎮魂際に行って以来、話せばとてつもなく長くなるんで、ここでは省きやすが、不思議な縁が繋がり、

今年の1月終わりくらいから、何かに憑りつかれたようになっちまって、いや、これは言葉が悪いな、カッコつけりゃ、何かの意志に導かれるように「雪風」のことを調べるために佐世保重工業の総務や(ありがたいことにコピーをくれやした!)地元の図書館に行って古い本や資料を調べたら、

たいていの事は、検索すればわかるインターネット・サイト(←こちらも、使わせてもらいやしたが!)にも載ってない、歴史的、工学的、武術的に大変興味深いことが、わかりやした。

そこで、これらをパクリつつ、あっしなりの意見を加えて、稚拙ですが、伝えたいと思いやす!

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甲野善紀
こうの・よしのり 1949年東京生まれ。武術研究家。武術を通じて「人間にとっての自然」を探求しようと、78年に松聲館道場を起こし、技と術理を研究。99年頃からは武術に限らず、さまざまなスポーツへの応用に成果を得る。介護や楽器演奏、教育などの分野からの関心も高い。著書『剣の精神誌』『古武術からの発想』、共著『身体から革命を起こす』など多数。

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