やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

江東区長辞職から柿沢未途さん法務副大臣辞職までのすったもんだ


 大騒ぎとなった江東区、区長選が12月10日になったようであります。

 もちろん理由は木村弥生さんが公職選挙法ど真ん中の違反となる、選挙期間中のオンライン広告掲載というやらかしであって、ちょっとした間違いや手違いとは言えないレベルでこりゃもう全然駄目ですから致し方ない面はあります。

 もっとも、8月ごろにこの問題が出始めたときは、木村さんも後述する柿沢未途さんも個別に記者会見的なことはされていて、略式起訴でゴメンナサイと頭を掻けば罰則は2年以下の禁錮か50万円以下の罰金であり、刑事罰にいたったことは無かったと見られます。それゆえに、逃げ切れるものなのではないかという楽観論があったのも事実です。

 風雲急を告げたのは、10月に入って「地検絡みであるらしい」という怪情報が出回るようになり、それを追認するかのように24日に東京地検特捜部が木村さんの職場である江東区役所と、自宅にそれぞれガサが入ります。正直、この事件で警視庁ではなく地検がガサに入るというのは常識的に考えて別の本題がある案件なのではないかと思うのも当然ですよね。

 そして、10月30日、木村さんとの連携が取り沙汰されてきていた東京15区の自民党議員・柿沢未途さんが「俺知らないっス」と割ととぼけた発表をし、支援者にだけお詫びをするというムーブに出て、ありゃ何だという話になります。報道では柿沢未途さんが木村さんに「YouTubeでの有料広告を薦めた」という嫌疑として出回っており、いやそれ単体でお詫びしたり釈明したりするのはおかしいだろという話になります。

 結果的に、翌31日に柿沢さんはせっかく就任した岸田文雄改造内閣での法務副大臣の職を辞任せざるを得ないくなるところに追い込まれてしまいます。割と大変なことなのですが、官邸とは違い党が冷静に「そうですか」と受け止めているのは、かねて柿沢未途さんにはそういう話が常について回る、良くも悪くも江東区を根城にした世襲議員らしいなにかがあって、みんなその辺はうすうす知ってるからだよねというのがあります。

 今年9月に摘発された衆議院議員の秋本真利さんについては、再生エネルギー業界べったりで役所も誰もが知っているレベルで贈収賄のネタを抱えて問題だった一方、親分にあたる河野太郎さんがそのあたりは無風な人でもあるのでこの方面に名前の出やすい二階俊博さんや細野豪志さん、菅義偉さんのルートを考えているんじゃないのという話は出ました。ただ、現状ではそこ止まりの可能性もあり、良く分かっていませんでした。

 ただ、ここで取り沙汰されているのは斡旋収賄罪に問われて逮捕された元江東区議会議長の榎本雄一さんの件で、要するに柿沢未途さんの父である故・柿沢弘治さん(および奥さん)の秘書筋というか柿沢家出入りの人たちの行儀の問題で、ここに江東区特有の湾岸再開発や東京オリンピック、産業廃棄物関連に載せるような形でNPO/NGOを迂回させて政治団体に還流させる手法が堂々と横行してしまっていたことが背景にあるように思います。

 いわば、木村弥生さんの逮捕というのは自民党の古き良き大物政治家・木村勉さんのご息女として、まずは京都で頑張っていたけど介護の名目でこっちに来て、良く知らんうちに江東区長に立候補するという流れも、ある種の悲願として、小池百合子さんが次かその次で勇退された後の東京都知事になってくれよ的な野望さえも感じるところがあります。まあ、もう58歳ですしね。

 その木村家が江東区で一旗揚げるために柿沢家と組み、弔い合戦を仕込みたがっていた山崎家・山崎一輝さんが都議から鞍替えで江東区長になろうというところでどういう話になっていたのかを思えば、そもそも江東区関連は一筋縄ではないか無かっただろうと思うのです。

 そして、同じく東京15区でやらかした秋元司さんの件も踏まえて考えるならば、二年前は立憲民主党にいた柿沢さんが流れ流れて単純に便利だから無所属で15区で勝ち、麻布人脈で谷垣禎一さん経由で自民党入党を果たすというのは単純な図式とも言えません。必ずそこには柿沢さんを通じてうまい具合にカネにしていたハコを持っている政治家が別にいるはずで、地検はおそらく柿沢さん逮捕と併せて柿沢さんを使って資金作りをしていた別の大物政治家を当たりたいと思っているのではないのかと考えられます。

 柿沢さんには不思議なハコが(少なくとも)3つあり、うち2つは「なるほどそういうことですよね」という人物が思い切り役員に名を連ねていて、その人の所属団体に何らかの資金が流れていたのではないかとか、五輪関連整備事業でカネの出し入れがあったんじゃないかとかいう話はどうしても出てきます。何故東京五輪を無観客でも開催を強行しなければならなかったのかの謎を解くカギを持っている一人が柿沢未途さんじゃないのかという見立てはかねてよりあるのです。

 気が早いですが、柿沢未途さんが摘発されるよなんてことになれば、ただでさえ微妙な岸田文雄政権は大変なことになってしまいかねず、そもそもこんなの法務副大臣にしてはいけなかったのだというレベルの話ではなく、年内解散総選挙どころか岸田おろしが始まって倒閣運動になってしまいます。これはもう、下手をすると来年の自民党総裁任期までは選挙のせの字もできないでしょうし、菅義偉さんと同じく総裁選出馬ができずに勇退ということさえも考えられます。

 ここまで書いておいてなんですが、岸田さん自身はアベノミクスの反省というか、やらかしをカバーするために頑張ってきた人でもあり、ちょっと叩かれ過ぎなのではないかなと思う面も強く感じます。なんかなあ… という感じもしますが、とりあえず推移を見守りたいと思います。
 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.422 柿沢未途さんの法務副大臣辞職にまつわるあれこれを論じつつ、能動的サイバー防御やますます複雑怪奇になる中国とのお付き合いについて語る回
2023年10月30日発行号 目次
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【0. 序文】江東区長辞職から柿沢未途さん法務副大臣辞職までのすったもんだ
【1. インシデント1】我が国の国家安全保障戦略としてサイバー空間での先制攻撃が真剣に検討されている件
【2. インシデント2】目下猛烈に揉めているカナダの対中国での譲歩のアレ
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

 
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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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