名越康文
@nakoshiyasufumi

名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)より

人生の分水嶺は「瞬間」に宿る

※名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)2015年12月7日 Vol.113より

先日歌手デビューを果たした銀座「Lounge ZERO」

瞬間ごとに判断している

想像してください。

あなたはいま、片道2車線の道路で車を運転しています。速度は時速50km。前方やバックミラーには他の車も見えますが、道はさほど混んでいるわけではなく、順調に流れています。

やがて、あなたの視界に交差点が見えてきます。右折するのであれば、少し早めに車線変更して、右レーンに入っておく必要があるでしょう。あるいは、左折するのであれば車線変更の必要はありませんが、やはり早めにアクセルを緩め、ウインカーを出して、準備をしなければいけないでしょう。

そのまま直進しますか? もしそうなら、準備は必要ないかもしれませんね。でもその場合も、自分の前を走る車の動きやウインカーなどに注意しておかないと、思わぬ事故を起こしてしまうかもしれません。

自動車の運転を安全に行うには、こうした無意識の判断を繰り返し、繰り返し行う必要があります。しかも、そこには時間的猶予はほとんどといっていいぐらい、ありません。求められるのは、ほとんど意識することさえ困難なぐらいの、瞬間的な判断です。判断を求められる瞬間は、次々にやってきます。そしてある瞬間、もしあなたが正しい判断ができなかったとすれば、その車は事故を起こしたり、思わぬ回り道をしてしまい、目的地に辿り着けなくなってしまうことになってしまうでしょう。

僕たちの心も、この自動車の運転と同じです。日常というのは、文字通り「瞬間ごとの判断と選択」によって紡がれています。何気ない会話の中で、相手の言葉に一瞬カチンと来る。その瞬間に、「なんでそんな言い方するの?」と聞き咎めるのか、腹は立つけれどその気持ちを押さえ込んでしまうのか、あるいは全く違う対処を見出すのか。そういったことを判断し、行動に移す。そのために与えられた時間は長くて数秒です。

そう。私たちは日々、瞬間ごとに、交差点を前にした自動車の運転手と同じような判断と行動を求められているのです。

 

人生は瞬間に支配されている

しかも、重要なことは、この「瞬間の判断」に、その後の人生が大きく左右されることがある、ということです。右の道を選ぶか、左の道を選ぶか、あるいはそのまま直進するかといったあなたの選択は「いま、目の前で起きている問題」だけではなく、その後長く続いていくあなたの人生全体を左右する、重要な決断かもしれないのです。

私たちが「瞬間の判断と行動」によって得るもの、あるいは失うものというのは、あなたの人生の「流れ」そのものといっても過言ではありません。ある瞬間に右の道を選ぶか、左の道を選ぶか、あるいは直進するか。それによって、あなたの人間的成長は大きく左右される。

あなたの人生の運の流れ、力の流れは、文字通り「瞬間」に支配されているのです。一見些細なやりとりにすぎない瞬間にこそ、人生を変える力が宿っている。すべてはいま、この一瞬に決まっているかもしれないのです。

僕が、皆さんにお伝えする心理学をできるかぎりマニュアル的なものから遠ざけようとするのは、このためです。実際問題、「目の前の相手との人間関係」をなんとかしようとするだけなら、マニュアル的な対応を学んでいくことで改善できることも少なくありません。

もちろん、対人関係においても「たったひとつのミスで破綻してしまう」こともあります。しかし一般的には、そこまでの厳しさが求められる対人関係というのは例外的です。私たちは互いに未熟であり、互いのミスを許しあうことによって、対人関係の絆をつむいでいるのですから。

しかしながら、あなたの人生全体に目を向けるのであれば、ある「瞬間」にあなたがどう行動するかということは、極めて大きな意味を持っていることが少なくありません。「覆水盆に返らず」という言葉がありますが、ある瞬間を逃すと取り返しのつかないことというのが、人生にはある。

誤解を恐れずにいえば、私たちが過ごす日常の「瞬間」には、人生がなぜかうまくいく人と、なぜかうまくいかない人を分ける分水嶺があるのです。

もしそうだとすれば。

私たちはどのように、そうした「人生の決定的な瞬間」に向き合っていけばいいのでしょうか? 僕が、僕の心理学の中で追求していきたいのは、まさにそのことなのです。

 

名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)

2015年12月7日 Vol.113 <人生の分水嶺は「瞬間」に宿る/natural fool な人々との素敵な出会い! 11.29銀座「LOUNGE ZERO」歌手デビュー報告/競争から誘惑へほか> 目次

00【イントロダクション】人生の分水嶺は「瞬間」に宿る
01【近況】natural fool な人々との素敵な出会い! 11.29銀座「LOUNGE ZERO」歌手デビュー報告
02【コラム】競争から誘惑へ
03カウンセリングルーム<今週はお休みです>
04精神科医の備忘録 Key of Life
・批判をしても相手は決して変わらない
05講座情報・メディア出演予定
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名越康文
1960年、奈良県生まれ。精神科医。相愛大学、京都精華大学客員教授。 専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現:大阪府立精神医療センター)にて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て、1999年に同病院を退職。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。 著書に『心がフッと軽くなる「瞬間の心理学」』(角川SSC新書、2010)、『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『質問です。』(飛鳥新社、2013)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)などがある。 名越康文公式サイト「精神科医・名越康文の研究室」 http://nakoshiyasufumi.net/

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