※小寺信良&西田宗千佳メールマガジン「金曜ランチビュッフェ」2015年06月12日 Vol.038 <西田さん出張で今回はコデラがんばる号>より
現在私は、アップルの開発者会議・WWDCと、その翌週にあるゲーム関連イベントE3の取材でアメリカに来ている。気がついてみればもう10年くらいこんなスケジュールで動いている。
……といいつつ、今この記事を書いているのは成田のラウンジだ。経験上、6月の取材は寝るヒマもないのがわかっているので、メルマガの原稿は先に仕込ませていただいているわけだ。その辺、ご了承を。来週のメインコラムは、一応現地から最新の情報をお伝えする予定で進めている。
さて、本題。
以前メルマガのQAでも質問があったのだが、今回は「私の出張装備」について話そうと思う。実は、もう5年以上前、ASCII.jpの連載で出張装備について書いたのだが、その時も妙に反応が良く、結局、話題の新製品レビューよりも読まれ続けた経験がある。要はみなさんそれだけ困っているということなのだろう。せっかくなので、「私の出張装備2015」をお届けしよう。
10年前から、私の出張装備の方針は変わらない。
「すべては2つ持て」
シンプルといえばシンプルだが、これにかなり救われている。PCが壊れたら仕事はできないし、カメラも同様。一度など、本体はOKなのに近距離用のレンズだけがダメになり、近いところが撮影できなくなったこともあった。
結果、仕事に必須である、「PC」「カメラ」「音声のレコーダー」「電話」は2つ荷物に入れるようになった。おかげでかなり救われる。その分荷物は多かったわけだが、それはそれでしょうがない。
しかし「2つ持て」の方針は、2010年を境にけっこう本質的な変化を迎え、中身がかなり入れ替わっている。
よく見ると、リストにけっこう「かぶり」がある。スマホとタブレットでカバーできる範囲が増えているからだ。特にカメラについては、スマホカメラが「第3・第4のカメラ」となっていて、さらにフェイルセーフが効いている。そもそもカメラについては、機動性重視のコンパクトと、きちんと長いズームが効くものと両方が必要で、2台は正確にはメインとサブ、という関係ではない。だからスマホがあるとさらにありがたい。
そもそも、サブの機材はなければ困るが、出番が毎回あるわけではない。デッドウエイトを承知でいたのだが、スマホとタブレットという汎用性の高い機器が生まれ、さらにそれらには「電子書籍用」「地図用」「電話用」など別の欠かせない用途がある。サブをそれらの機器でカバーできるようになった結果、荷物は大幅に減ることになった。iPadについては、軽量なBluetoothキーボードをスーツケースに入れておき、「いざという時」までそのままだ。iPadでの仕事は不便といえば不便だが、「できない」ほどではないし、サブとしては十分だと思っている。
今回は、試用目的でSurface 3も持ってきており、これがいざとなるとサブになる。本当はiPadの用途をすべてカバーしてくれるとありがたいのだが、電子書籍や動画のビューイング体験ではまだ劣る部分が大きく、Windows 10世代になり、アプリが充実してくるまで、代替は難しそうだ。
もうひとつ、機器の変化によって生まれたのが、「電源の軽量化」だ。
以前は、2つもつとそれだけ電源が増えた。特にPCとデジカメの電源は負担だった。
しかし、今はPC系以外に専用の電源を使うものはない。全部USBになったので、トランクに入れてある5口のUSB電源(アンカー製)と、手持ち鞄に入れてある4口のUSB電源、それに機器につき1本ずつのUSBケーブルで、すべてがこなせるようになった。実際に計測したことはないが、もっともかさばっていた時期と比較すると、最低でも重量で3分の1、体積で4分の1くらいになっている。
また、USB系だと「給電方法が多様である」こともプラスである。PCから給電を受けることもできるし、モバイルバッテリーも使える。モバイルバッテリーは、いまやコンビニでも手に入る時代。万が一の際にはコンビニに飛び込めばいい。結果、電源切れが原因のトラブルは激減した。
7、8年前、海外出張装備と「国内の日常の仕事装備」は、ずいぶんと違うものだった。だが今は、その差はかなり小さい。NEX-7と予備のスマホ、iPadがないだけだ。これらはサブの役割だったり、大規模な海外イベントの事情に合わせたものだったりするので、普段はなくても仕事ができる。
電源系は全部鞄に入れても400g程度だし、他もコンパクト。結局、普段仕事に持ち歩いている仕事道具と海外向け装備の差は、ほぼなくなってしまった。都内で仕事している装備のまま、「そのまま夜の便でサンフランシスコへ」と言われても、なんとかなるほどだ。(衣類は途中で買うとして、だが)
フェイルセーフを十分に考えた装備でも、もはや重量・サイズの制約はなくなった。今後、電源がUSB Type-C系に移行していけば、荷物はさらに減るだろう。PCのための電源、という考え方がなくなるからだ。現在手元にあるmicroUSBケーブルの入れ替えでちょっと頭が痛いが、実際にはきっと、各種機器を買い換えていくごとにひとつずつ入れ替わっていく、という感じだろうと予想している。
現在は筆者が良く行くアメリカやヨーロッパならば、日本ほど快適とはいわないが、通信回線が問題になることもなくなった。明らかに、世界中どこでも「同じ感覚で仕事をする」環境はできあがってきた、と感じる。結局、仕事環境における進化とは、「フェイルセーフの効く余裕があるにもかかわらず、持ち物はシンプルになる」ということだったのではないか、というのが筆者のひとつの結論である。
小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ」
2015年06月12日 Vol.038 <西田さん出張で今回はコデラがんばる号>目次
01 論壇(小寺)
ゲーム機のペアレンタルコントロール概論
02 余談(西田)
2015年・私の「出張装備」
03 対談(西田)
「大江戸スタートアップ」が見る日本のスタートアップ事情(3)
04 過去記事アーカイブズ(小寺)
「スマートテレビ」はどこへ行った?
05 ニュースクリップ(小寺)
06 今週のおたより(小寺)
コラムニスト小寺信良と、ジャーナリスト西田宗千佳がお送りする、業界俯瞰型メールマガジン。 家電、ガジェット、通信、放送、映像、オーディオ、IT教育など、2人が興味関心のおもむくまま縦横無尽に駆け巡り、「普通そんなこと知らないよね」という情報をお届けします。毎週金曜日12時丁度にお届け。1週ごとにメインパーソナリティを交代。
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筆者:西田宗千佳
フリージャーナリスト。1971年福井県出身。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。取材・解説記事を中心に、主要新聞・ウェブ媒体などに寄稿する他、年数冊のペースで書籍も執筆。テレビ番組の監修なども手がける。
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