やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

コロナとか言う国難にぶつかっているのに、総理の安倍晋三さんが一か月以上会見しない件

 タイトルで書きたいことは全部書いてしまっているのでお察しではあるのですが。

 一国の宰相が国難にあたって一か月以上出てこないっていうのは、何か理由があるんでしょうか。

首相「巣ごもり」1カ月 記者会見開かれず 説明責任どこへ

 何か凄い話が出たり、イザというところでドーンと会見しようと思っていたら、なんとなく出ていくタイミングを失してしまい、グズグズしていたら一か月以上経っちゃった、みたいな小学生の縄跳びとか高齢者のエスカレーター乗り的な状態になっているのではないかと危惧するところでございます。

 実際、官房長官の菅義偉さんが「東京問題」と言い始め、データ的には東京だけが他の地域よりも感染拡大しているわけではなく、あくまでマスコミが東京の感染状況を報じやすいから結果として目立っているだけなんですよね。それも、東京都知事の小池百合子さんに対する官邸からの風当たりが非常に厳しいこともあって、ある種の偉い人同士の内輪揉めの結果、東京都民が割を食って「GOTOトラベル」から外されてしまうという結論になったわけであります。

 まあ、東京都民としては小池百合子をまたしても選んでしまい、申し訳ございませんでした(私は今回は小池百合子に投票していないけどな)という話ですよね。さらに、一大需要地である東京だけが外されたこともあって、今度はGOTOを当て込んで旅行を申し込んだ人たちのキャンセル料も払わされるという残念な結論になり、一連の事態は政治的な対立も含めて「政府はろくなことをしない」とか「医療現場の足を引っ張って感染拡大の手を打たず、国民に迷惑が掛かっているだけ」という結論になってしまうわけですよ。

 今回の仕掛けも国土交通省が巻き込まれていますが、これだって「良かれ」と思って見切り発車してみたら大変なことになった、という意味で「心意気や良し」というレベルで終わってしまっているんですよね。経済を回さなければならないギリギリのところで判断したという話ぐらいして然るべきだと思います。

 そこへ、文春が例によって二階俊博さんへの業界からの献金ネタをぶち込んできました。

Go Toキャンペーン受託団体が二階幹事長らに4200万円献金

 やると思ったわ…。まあ、一応彼らなりに抗弁したそうな話で言うと、まとめた金額で見れば確かに4,200万ですけど二階さん一人に払われたものではなく、37名の議員に対して数年間の総額が4,200万なので、一回当たりパーティー券15万円分ぐらいのオチだろうとは思うんですよ。

 ただ、今回はただでさえ評判の悪いGOTOキャンペーンがネタであり、その中核に二階派がいるのではないかと言われ続け、本当はやりたくもないJTBほか各旅行代理店に受付業務を押し付けられた結果が「癒着でした」報道になってしまうのもメディア的視点からすれば仕方がないとも言えます。これは止まらない。

 どうせそのうち文春以外の媒体から官邸内では今井尚哉さんがごり押ししたのだとか、閣僚内でもあまりきちんと周知されないままGOTOキャンペーンが強行されたのだという話は出るでしょう。

 しかしながら、本来であればこういう問題が起きたときにわいわい騒ぐ閣僚や官邸内有力者の動揺を抑え、組織を束ねる役割を果たすべきである総理大臣の安倍晋三さんが、事態収拾のために前に出たり、国民を勇気づける演説を打って国家の進むべき方針を示したり、騒動の原因になっている小池百合子さんや大阪府知事の吉村洋文さんにきちんと「国民のために」という大義名分を立てて協力を呼び掛けたり、いろんなことができるはずなんですが。

 どうもこう、野党が弱いとかいうレベル以上に政治全体があまりきちんと問題に向き合わず、むしろ自分たちの権力争いや主導権争いに拘泥した結果、意味の分からない、効果がおそらく乏しい、時宜を逸した政策が打ち出されても「誰も止めない」というあたりに当事者能力の減衰を見るのであります。

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 先日、こんな記事をJBpressに寄せたところ、朝の政策勉強会で官庁筋から回覧資料として自分の手元に戻ってきて「そろそろ真面目にニューディール政策や自治体再々編、金融や医療のようなインフラ再編に向けた議論をしないと駄目なんだよなあ」という意識が共有されてきたのかな、とは思います。

 もちろん、そういう議論がそろそろ湧きおこってほしいという私の願望もかなり込みではあるのですが。

 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.Vol.303 コロナ禍という国難にまつわるあれこれを真面目に論じつつ、幸福度を測るという謎の商売の話題を取り上げてみる回
2020年7月23日発行号 目次
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【0. 序文】コロナとか言う国難にぶつかっているのに、総理の安倍晋三さんが一か月以上会見しない件
【1. インシデント1】本当の経済恐慌になったとき、日本の政策の行く先として考えなければいけないこと
【2. インシデント2】個人の幸福度を企業が計測してあれこれに活用する時代到来の不気味
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

 
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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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