高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

名称だけのオーガニック食材があふれる不思議

高城未来研究所【Future Report】Vol.471(2020年6月26日発行)より

今週は、那覇にいます。

久しぶりに都会に出てきたので、オーガニックスーパーや健康食材を扱う店に立ち寄ってみることにしましたが、あまりに製品の品質の悪さが目につきました。

これは、沖縄に限らないかもしれませんし、いままで僕が日本のオーガニックスーパーや健康的と言われる食品を扱うショップを、じっくり見てこなかったからなのかもしれませんが、例えば、バターコーヒーでおなじみ日本のMCTオイルの成分を見て、ちょっと驚きました。

「100%ピュアのオーガニック・エクストラ・ヴァージン・ココナッツオイル」を使ったと記載されているMCT(中鎖脂肪酸)オイルを見ると、大半の成分がラウリン酸で、これではまったく効果が望めません。
MCTには、C8のカプリル脂肪酸、C10のカプリン脂肪酸、C12のラウリン酸とあり、C12は、実質的には長鎖脂肪酸ですので、バターコーヒーに使っても、効果が望めません。
使用できるのは、C8のカプリル脂肪酸だけですが、ショップスタッフにお話ししてもサッパリ。

しかし、「100%ピュアのオーガニック・エクストラ・ヴァージン・ココナッツオイル」と名打ち、やさしい雰囲気のイラストと手書き風フォントでデザインすれば、いかにも「体に良さそう」だと感じ、コーヒーに入れてしまったり、サラダにかけてしまう人もいるでしょう。
つまり、完全なマーケティング商品で、実態は、C8のカプリル脂肪酸とC10のカプリン脂肪酸を抜き取られた「あまりカス」で作られた製品だと想像つきます。
その上、安くありません。

念の為、同商品をAmazonを見ると高評価で、「コーヒーに入れて毎日飲んでます」と書かれたレビューであふれています。
なぜ、誰も指摘しないのか、本当に不思議です。

また、自著にも書きましたように、ほとんどの日本のコーヒーは、カビ毒に侵されていますので、どんなに丁寧に「シングル・オリジンの浅煎りを、ハンドドリップ」しても、カビ毒はなくなりません。

確かにチェーン店のコーヒーから見たら、「まだマシ」なのかもしれませんが、「カビなし豆を挽き、MCT(C8のカプリル脂肪酸のみ)を入れたコーヒー」と「シングル・オリジンの浅煎りをハンドドリップし、大半がC12のラウリン酸で作られた100%ピュアのオーガニック・エクストラ・ヴァージン・ココナッツオイルを入れたコーヒー」は、まったく別物です。

駅前のドラッグストアで売られるビタミンBと、米国先端医療で治療に使われる活性型ビタミンBは、成分的にもまったく別の商品ですが、名称は同じ「ビタミンB」であることから、ほとんどの人は違いがわかりません。

MCTオイルに限らず、日本のオーガニックストアで売られている商品は、大なり小なり似たような傾向にあり、「十年以上前の欧州の流行」で止まっているように思いました。

またコーヒーも、サードウェーブ・コーヒーで止まってしまっているように見受けられます。
どんなにオーガニックやシングルオリジンの豆を使っても、現地に出向かなければ、わからないことが、かなりあります。
そのひとつが、豆の乾燥です。

まず、コーヒー豆の収穫後、濾過されていない水に数日浸けて種の周りの果肉を柔らかくしますが、その間に発酵が起ります。
ここで、カビ毒(オクラトキシン)が生じるのです。
だからと言って、この「湿式(水洗式)」ではなく、旧式の「自然乾燥」させると、もっとカビ毒が増えてしまいます。
それゆえ、わかってるコーヒーショップは、発酵過程抜きの豆を使うのです。

時代は、デザインやブランディングといった「見た目」から、本質的な「味」を経て、「機能性」に向かっています。
農薬にまみれた食品よりオーガニックなモノを選び、さらには名称だけのオーガニックや雰囲気が暖かく優しいモノではなく、機能としてしっかりした製品を選ぶ。
結果、それが本当の美味しさにつながっていくのです。

もはや、口に入れるモノに関しては、「ピュア」、「オーガニック」、「ハンドメイド」、「ナチュラル」、「100%」と書かれた商品に、「やさしいイラスト」と「手書き風フォント」が描かれていれば、怪しいと疑ったほうがいいのかもしれないな、と感じる今週です。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.471 2020年6月26日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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