※高城未来研究所【Future Report】Vol.230(2015年11月13日発行)より
今週は那覇にいます。
先週まで晩夏を感じていた沖縄も、少しづつ秋になってきました。とは言ってもまだ25度もありまして、それでも20度を切ったあたりから沖縄では「冬」と言われますので、25度を下回る最近はすっかり「秋」ということになります。
今週、財務省が発表した2015年度上半期(4月~9月)の国際収支速報によれば、日本を訪れた外国人旅行者が支払ったお金から海外で日本人が使った金額を差し引いた「旅行収支」が、過去最大の黒字額を記録しました。
これは「爆買いエフェクト」です。
なかでも、那覇の「爆買いエフェクト」は尋常ではありません。その実態は、飛行機に乗ってやってくる観光客以上に大型客船でやってくる人たちによるもので、港周辺の空き地は、日々新店出店場所やレンタカー置き場の争奪戦が繰り広げられています。
なにしろ、クルーズ船到着日には、数年前まで閑古鳥が鳴いていたような店の売り上げが1000万円を超えることも少なくなく、とても日本とは思えない話ですが、通常の5倍以上の価格で販売している「ボッタクリ販売店」も目立つようになってきました。
とにかく大型客船の「爆買いエフェクト」は凄まじいものがあり、一足早い歳末大バーゲン会場のようです。
この夏に上海から沖縄に何度も来航しました「クアンタム・オブ・シーズ」は世界最大級のクルーズ船でして、就航日には約5000人の乗客者がなだれ込むように、那覇の街へとやってきます。
この5000人を運ぶために大型観光バスが港で待機し、そのバスの数だけで120台を超えており、下船するだけで3時間を要するため、那覇港はいつも大混雑。昨年対比でみても、沖縄に寄港する巨大クルーズ船は約150隻から250隻へと急速に伸びており、すでに岩壁不足で、受け入れができずに寄港を断るような状況になっています。
沖縄県としては急速に港の整備をして受け入れ態勢を整えたいのでしょうが、ここで問題となるのが軍港です。
軍港とは沖縄駐留米軍の港であり、しかも海軍ではなく陸軍が管理する港湾設備を指し示します。
実は、すでに日米間で返還合意している港なのですが、米軍に留まって欲しい日本政府の思惑があったため、その後、浦添移設案が急浮上し、現在大きな反対運動が起きています。
なにしろ、辺野古基地に反対している沖縄県の翁長知事が、「今後、絶対にあたらしい基地を作らせない」と何度も話してきたからです。
しかし、この那覇軍港をどうにかしなければ、寄港したいと要望している「21世紀の宝船」大型クルーズ船の寄港を断らねばなりません。
そうすると、週に何万人もの観光客を失ってしまうことになります。
そこで、「絶対にあたらしい基地を作らせない」と話してきた翁長知事や、浦添軍港移転に反対して当選した浦添市長まで、突如大きく方向転換しまして、軍港をあらたに浦添に作り移転し、那覇港を整備しようとしています。
このあたりに沖縄の本当の複雑さが伺えます。
中国の軍事的脅威に対抗するために、多額の金額を支払って米軍に駐留してもらい、また自衛隊の巨大基地を沖縄に建造する一方、中国の経済的脅威を受け入れなければ成立しなくなっている沖縄は、まるで分裂病のように僕には見えます。
この分裂病は、果たして沖縄の病なのか、それとも日本の病なのか。
その検証は、あらゆる関係者(米中日沖)を除いた、冷静な第三者的目線が、いま求められているように思います。
沖縄は確かに南国ですが、もうじき冬が訪れようとしています。ここは、常夏の楽園ではないのです。
┃高┃城┃未┃来┃研┃究┃所┃【Future Report】
Vol.230
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/ 2015年11月13日発行 /
■もくじ
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. マクロビオティックのはじめかた
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
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