小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ」より

旧モデル利用者が「Qrio Lock」をチェックした

※メールマガジン「小寺・西田の金曜ランチビュッフェ」2018年8月17日 Vol.184 <お盆大突入号>より

2週間ほど前から、スマートロック「Qrio Lock」(以下新モデル)を使っている。7月の末に発売された新製品だ。筆者は、同社が2015年に発売した初代モデル「Qrio Smart Lock」(以下旧モデル)でも使っていた。そちらからの切り替えになる。両者の比較も含め、使い勝手を説明してみたいと思う。

 
・Qrio Smart Lock。銀から黒に色は変わった。ドアの枠に開閉を認識する磁気センサーがついたのが特徴。

 
なお、製品写真については、自宅設置時などに写真を撮り忘れていたこともあり、より見栄えのいい発表会での写真を使わせていただいている。その点をご了承いただきたい。

Qrioは、ドアの「サムターン」と呼ばれるつまみにかぶせることで鍵をスマート化するデバイスだ。構造自体は、前モデルも今回のモデルも変わらない。写真を見ればお判りのように、つまみのついた大柄なデバイスだ。この中にモーター(デジカメのオートフォーカスに使うモーター制御技術を流用している)と制御回路があり、スマホとはBluetooth LEで接続される。すなわち、単体ではネット接続に対応しない。電源をつなぐ必要はなく、搭載のリチウム電池「CR-123A」を使う。構造から利用する電池、通信方式まで、旧モデルと新モデルに変化はない。

ではどこが変わったのか? とにかく使い勝手が劇的に変わった。

セッティングからして違う。

旧モデルでは、機器の登録に同梱のQRコードを使った。これはQrio自体の鍵を生成するのに必要なもので、自分で厳重に管理しなくてはならなかった。このQRコードを使うと、「同じ鍵が使えるQrio」を複数作ることができてしまい、セキュリティリスクが高まるためだ。Qrioを設置するたびに必要なものであったが、なくしても発売元からの再発行はされなかった。

新モデルでは、このQRコードがなくなった。おそらくは出荷時にQrio自体にユニークな鍵が埋め込まれており、「セッティング時に同じ鍵情報が使えるQrioが複製される」ことを防いでいるのだろう。アプリの設定・ドアへの設置も、結果的に、非常にシンプルになった。

アプリのつくりも違う。「解錠」と「施錠」が別ボタンになっており、ゴチャゴチャしていた画面は、「解錠」「施錠」が押すたびに切り替わる、シンプルな「1ボタン」になった。アプリを操作してからQrioが動き出すまでの反応も速い。公式には「反応速度が8分の1に短縮(平均0.3秒)とされている。実測ではもうすこし長いが、数秒以内である。

 
・専用アプリ。デカデカとボタンが1つあるだけで、とても簡単に使える。

 
オートロックも素早い。

旧モデルから、ホテルと同じような「オートロック」機能があったのだが、旧モデルでは、「鍵をあけてから数十秒(設定可能)で鍵を閉める」というもので、意外とタイムラグが気になった。

新モデルでは、ドアを閉めて数秒以内にオートロックが効く。新モデルの場合、ドアの枠に磁気センサーをつけるようになっており、鍵の開け閉めでなく、ドアの開閉を認識してオートロックが働く。これは意外なほど快適だ。

スマートロックがもっとも便利になるのは、鍵を家族や一時的に自宅に入れる人(友人など)とシェアする時である。だから、鍵をシェアすることの多い民泊などで有用、と言われている。

しかし、筆者のような個人宅、それも単身家庭だと、正直なところ、旧モデル時代から「戸締りが確実になるので、オートロックがいちばん便利」と感じていた。これがより確実になる(鍵がかかるのを音で確認するまで、数秒待てばいい)のはありがたかった。

次に違うのが「(おそらく)落ちにくい」ことだ。

旧モデルユーザーの多くが体験した問題が、「Qrioがいつのまにか落ちてしまう」ということだ。Qrioは本体をドアに両面テープに貼り付ける構造になっている。そのためドアの分解などの工事が不要で、賃貸マンションなどにも設置しやすい。一方で、しょせんは両面テープなので、貼り付け方によっては落ちてしまっていた。予備の物理鍵を持って家を出なかった時、家を出た後にQrioが落ち、家のドアが開かなくなった……という話はけっこう聞く。筆者の場合にも落ちた。幸い、自宅にいる時だったので問題は少なかったが。

「落ちる」問題については、両面テープを貼る時にドアの側をしっかりアルコール綿などで拭いて脱脂する、空気が挟まらないようにする、より粘着力の強い両面テープに変える、などの対策がある。だが、本質的な解ではない。

では、新モデルではどうなったか?

対策は2つ採られていた。ひとつめは、本体重量を約40%軽くしたこと。持った瞬間に違いがわかる。軽ければそれだけ落下は起きづらい。貼り付ける両面テープは「4つに分割」されており、内部に空気が溜まりづらくなった。結果、温度変化による剥がれは落ちづらくなった……というのがメーカー側の説明である。

 
・本体とパッケージ。サイズが40%コンパクトになったので、パッケージも意外と小さい。

 
とはいうものの、やっぱり本質的には「両面テープ」なので、100%剥がれない……ということはないだろう。だが、少なくとも2週間使ってみた限り、不安は皆無だ。以前よりも安心できそうな点はありがたい。

ちなみに、「両面テープ剥がれ」をふくめたQrioのトラブルに備える目的で、筆者は相変わらず外出時に鍵を持って出ている。ただし、もはや財布に入れっぱなしで、よほどのことがないかぎり取り出さない。家を出る時にはスマホと財布は必ず持って出るわけで、問題は少ない。

新モデルのウリのひとつは「ハンズフリー解錠」。スマホをもってドアに近づくと、自動的に鍵が開く仕組みだ。旧モデルでは動作信頼性が低かったため使わなくなったが、新モデルではかなりマシになった印象である。

そもそも、動作の仕組みもかわっている。

新モデルでは、アプリ側がスマホのGPSとQrioが発するBluetoothを併用する。自宅から一旦離れ(公式には100m以上)、次に自宅に近づくと、アプリが「帰宅準備に入った」と判断し、自動解錠の待ち受けに入る。登録されたアプリを持って、ドアの数メートル以内に入ると解錠がスタートする。筆者の感覚では、隣の家の前では難しい……くらいの近さでないといけないようだ。

 
・家から一度離れ、再び近づくと、GPS情報を使って「自動解錠待ち受け」に。このままドアに近づくと解錠される。

 
こうした感じになったことで、自動解錠機能はかなり信頼性が上がった。

とはいえ、100%確実ではなく、「スマホは取り出し手に持っている」くらいでないと、成功率が低い印象だ。まあ、いざとなれば自分でアプリからロックを外してもいいのだが。

Bluetoothで解錠するということでセキュリティ面を気にする人もいそうだが、ハックするには「ドアの前に相当の時間いないといけない」ので、物理鍵をピッキングするよりずっとリスクが大きいはずだ。物理鍵を流用する以上、それと同等以上のセキュリティがあれば、実際には問題はない。

というわけで、筆者の新モデルへの満足度はかなり高い。長く使った時の「両面テープ剥がれ問題」は残っており、100%不安が解消できたわけではないが、リスクはそのくらいだ。

旧モデルは「先物買い」の印象も強かったが、今回のモデルは、「こうした手間の軽減にお金をはらってもいい」人にはオススメできる。まあ、物理鍵を取り出さなくて済む、という「毎日の1分間が楽」「鍵を探さなくていい」ということに2万3000円を払えるか……という話ではあるのだが。

 

小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ

2018年8月17日 Vol.184 <お盆大突入号> 目次

01 論壇【小寺】
 意外に知られていない、4K8K放送の受信コスト
02 余談【西田】
 旧モデル利用者が「Qrio Lock」をチェックした
03 対談【西田】
 藤津亮太さんに聞く「配信はアニメのストーリーを変えるのか」(2)
04 過去記事【小寺】
 日本にサマータイムは有効か
05 ニュースクリップ
06 今週のおたより
07 今週のおしごと

 
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