名越康文
@nakoshiyasufumi

名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)より

人生に活力を呼び込む「午前中」の過ごし方

※名越康文メールマガジン「生きるための対話(dialogue)」 Vol.104(2015年7月20日)より

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午前中は「働いて」はいけない!?

朝、昼、晩のうち、どの時間帯がもっとも重要か。

そう聞かれれば、おそらく多くの人が「朝」と答えるでしょう。そう、朝起きてからの数時間、「午前中の時間をいかに過ごすか」ということは、これからのあなたの人生に残された、数十年という時間をより意義あるものにしていくうえで、非常に重要な課題です。

もちろん「朝活」という言葉もあるように、「朝が重要だ」という話自体はそう珍しいものではありません。ただ、午前中という時間がどのように特別で、どう過ごせばいいのかということについては、一筋縄ではいかない問題が潜んでいます。今日はそのことについて、ちょっと僕の考えをお話したいと思います。

僕自身は、この10年ほどの間、対談や打ち合わせ、収録や講座、原稿執筆といった、「仕事らしい仕事」の予定は、必ず午後にいれるようにしてきました。一言で言えば、午前中には「仕事らしい仕事」を入れないようにしてきたのです(もちろんテレビの生放送など、必要があればやらせていただいていますが、どちらかというと例外的です)。

午前中に「仕事らしい仕事」をしないということ。このことは少なくとも僕にとっては、長いスパンで活力を維持していくうえで、非常に重要な生活習慣となっています。

誤解のないように言っておきますが「仕事らしい仕事をしない」というのは、別に怠けているわけではありません。むしろ僕はこの、朝7時から8時の間に起きてから、アポイントや仕事の約束の入る午後13時ぐらいまでの、午前中の約4時間から6時間ぐらいの時間を、一日のうちで何よりも大切にしているんです。

たっぷりと睡眠を取って目覚めた身体は活力に満ち、その感覚は広範囲に、鋭敏に働いています。そんな、ある意味で「ゴールデンタイム」に、僕が「仕事らしい仕事」を入れない理由。それは僕が、この貴重な時間帯を、できるかぎり「新しいもの」を自分の中に招き入れる準備に使いたい、と考えているからです。

午前中に仕事をやれば捗るし、考え事をすればいいアイデアが思いつきます。大事な仕事をやっておけば、すぐに成果が上がってくれるかもしれません。しかし僕は、この「ゴールデンタイム」をそういう目的のはっきりした仕事に使うことが「もったいない」と感じているんです。

というのも、人と話したり、たくさん原稿を書いたり、調べ物をするといった<目的のはっきりした仕事>というのは、実は午後でも、夜でもできなくはないからです。

でも、自分が思いもよらない「新しいもの」を自分の中に招き入れる、その準備をするのは朝、午前中の数時間でないとなかなか難しいのです。

 

やるべきことは「心身のパイプ掃除」

心身の感受性が解放される「ゴールデンタイム」である朝に、僕がやっていること。それは一言で言えば「心身のパイプ掃除」です。自分の頭や身体だけでは及びもつかないような、さまざまなアイデアや発想といった「新しいもの」を自分の中に取り込む態勢を整えるために、心身を整え「パイプの詰まり」を取り除いておく。

具体的には、朝起きたら体操をして身体をほぐし、水浴びをして全身の細胞を起こす。近所のお寺まで散歩をして、仏様を拝ませてもらう。行きつけの喫茶店に顔を出し、読みかけの本を開いたり、やりかけの原稿に目を通したりする(ただし、根を詰めて作業をしてはいけません)。こういったことすべてを、僕は「心身のパイプ掃除」として毎朝、続けているんです。

この時間帯には、人に会ったり、あまり根を詰めて資料を読んだり、原稿をぐいぐい進める、ということはしない。原稿をやりながらふと頭に浮かんできた言葉をノートに書いたり、ツイッターでつぶやいたり、その言葉を手がかりに空想にふけったりするぐらいが「パイプ掃除」にはちょうどいいからです。

パイプ掃除というのは、つまり「ちょっとしたインプット」と「ちょっとしたアウトプット」の間を行き来するように、身体と頭を使う、ということですね。そうすることによって、身体や心の内側と、外側の世界の間で少しずつ何かをやりとりする。

「インプット」「アウトプット」というと、たいていは何か成果につなげることを考えがちです。役立つ、お金になる、人々に影響を与える、評価が上がる……しかし、「パイプ掃除」のためのインプット、アウトプットのポイントは、そういった「確たる目的」を求めない、ということです。なぜなら、「何かいいことを言ってやろう」「斬新なアイデアを考えよう」という欲が出た瞬間、かえって「パイプ」が詰まってしまうからです。

ですから、午前中はとにかく下手に成果や結果を求めることなく、自分の身体と心の中に「流れ」が生じるように、インプットとアウトプットの間を循環することに集中する。そうすると、だんだんと心身に、力強い「流れ」が生じてくるんです。

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名越康文
1960年、奈良県生まれ。精神科医。相愛大学、京都精華大学客員教授。 専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現:大阪府立精神医療センター)にて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て、1999年に同病院を退職。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。 著書に『心がフッと軽くなる「瞬間の心理学」』(角川SSC新書、2010)、『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『質問です。』(飛鳥新社、2013)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)などがある。 名越康文公式サイト「精神科医・名越康文の研究室」 http://nakoshiyasufumi.net/

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