※高城未来研究所【Future Report】Vol.267(2016年7月29日発行)より

今週はザンジバルにいます。
タンザニアに属するザンジバルは、自治権を持ったザンジバル革命政府が統治しているふたつの島から成り、そのひとつ、ウングジャ島は、かつてアラブやスワヒリ、そしてアジアとヨーロッパの交差点だった島で、首都ストーンタウンが、2000年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。
また、アフリカン・ストリートフードでも有名な場所でもあります。
なにより、ジャマイカにボブ・マーレーがいるように、この島にはフレディー・マーキュリーがいます。
イラン系インド人としてこのウングジャ島で生まれ育ち、その後、ザンジバル革命が起き渡英して、クイーンのヴォーカルになってからの活躍は、きっとご存知の方も多いと思います。
いまもストーンタウンに残る生家は「フレディー・マーキュリー・ミュージアム」となっており、キングストンのボブ・マーレー・ミュージアム同様、内容はそれほどではありませんが、島民の誇りであることは確かです。
ボリウッドの劇場性と英国ロックの融合は、フレディー・マーキュリーの生い立ちならではだと僕も思っています。
しかし、フレディー・マーキュリーは本当のザンジバル人じゃないことを理由に、全面に打ち出すことを望まない人もいます。
この背景には、フレディーを観光資源として押し出したい現政権と、それに対抗する野党の争いも見られますが、フレディがこの島が持つ多様性のなかで育ってきたことは事実で、その多様性こそが、この島の魅力だと思います。
さて、南の島々をまわっていると、どこも音楽に溢れていることに気がつきます。
ボブ・マーレーやフレディー・マーキュリーだけでなく、最近であればカリブの小国出身のリアーナまで、多くの才能を持ったミュージシャンたちが、南の島からやってきます。
かつて日本のJ-POPも、沖縄出身者が席巻していたことがありますが、どこの南の島も独特なグルーヴ感を持っており、それは僕の深い興味の対象でもあります。
最近は、南方独自の特異な音階(沖縄であれば、レとラ抜き)が、身体性になにか影響を与えているのではないか、と考えるようになりました。
特に使われていない音に興味があり、その発祥はヒンドゥー伝承のひとつヴェーダ(サーマ)にあると僕は考えていて、そこから派生したカルナータカが、南方全域に広がったと推察しています。
これも私的な推察の域を出ていませんが、音は星座と呼応しており、その地域では見えない星、例えば南半球であれば、見えない北斗七星やカシオペア座などに割り振られた音が、使われなかった音だったのかもしれません。
これは、移動するための地図を歌と音階にしていたアボリジナルの長老と話していた際に、強く感じました。
また、南方独自の遺伝子の影響もあります。
なかでも「Y染色体ハプログループD1b」を持つグループは注目に値します。
現在、世界はあたらしい宗教戦争の時代に突入しており、そこに経済戦争も交錯しています。
いま、宗教によって生まれた文化および摩擦以前に、古くからその土地が持っていた社会や文化を、今も残る音楽から再発見しようと、アフリカをまわりながら考えています。
振り返れば、日本人の演歌の歌詞は、北国ばかり。
やはり南方だと、泣けませんよね、旋律も歌詞も特異でゴキゲンすぎて。
この夏は、南の島々の音楽と身体性を、もう少し追求したいと思います。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.267 2016年7月29日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. マクロビオティックのはじめかた
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
詳細・ご購読はこちらから
http://yakan-hiko.com/takashiro.html
その他の記事
|
貧富の差がなくなっても人は幸せにはなれない(家入一真) |
|
暴風雨となるライドシェア全面解禁論議(やまもといちろう) |
|
21世紀の稼ぎ頭は世界中を飛び回るシェフ、DJ、作家の三業種(高城剛) |
|
マイナス50キロを実現するためのホップ・ステップ・ジャンプ(本田雅一) |
|
上野千鶴子問題と、いまを生きる我らの時代に(やまもといちろう) |
|
人はなぜ働くのか(岩崎夏海) |
|
一寸先は、光。自分しかない未来を恐れなければ道は開けるものです(高城剛) |
|
G20直前で思うこと(やまもといちろう) |
|
キリシタン大名と牛肉を食する文化(高城剛) |
|
これからの日本のビジネスを変える!? 「類人猿分類」は<立ち位置>の心理学(名越康文) |
|
真の働き方改革、いや、生き方改革は、空間性と移動にこそ鍵がある(高城剛) |
|
悲しみの三波春夫(平川克美) |
|
外資系企業の「やり得」を止められるルール作りこそがAI規制の本丸(やまもといちろう) |
|
『最悪の結果』を前提に、物事を組み立てるべき解散総選挙終盤戦(やまもといちろう) |
|
今後20年のカギを握る「団塊の世代」(岩崎夏海) |











