中身は大したことないんだよ
――『外資系金融の終わり』、発売直後からずっと売上好調なようですね。様々な書店で、ランキング上位に入っています。読者からすると、待ち望んでいた本がやっと出てきた、ということだと思います。まず、藤沢さんが本書を執筆された一番の狙いというか、動機を教えていただけますか。
藤沢:まず、外資系の巨大金融機関というのはどのような組織で、どういう人が働いていて、どのように世界経済に影響を与えているのか、というのを包み隠さず全部書いてしまいたかったんですよね。なんか、エリート集団みたいに見られてますけど、中身は大したことないんだよ、というのをわかりやすく書きたかった。それと、リーマン・ショックからユーロ危機に至る世界金融危機を起こした原因や、危機後の世界経済について、一般の読者にも本質的なことがしっかりと理解できるような本を書きたかったんです。
金融や経済の仕組みを知っておくことは、金融機関で働いていなくても、日常生活やビジネスでもとても重要なことです。知っていたからといって簡単に儲かるようになるわけではありませんが、少なくとも、明らかな損を回避できるようになると思います。でも、日本人がこうしたことを知ろうとすると、学者が書いたおカタい専門書か、誰でもウン億円儲かる、みたいなちょっとトンデモ系の本が多い。
金融というのは、マクロで考えると複雑でわかりにくいものなのですが、一つ一つの取り引きについて具体的に見ていくと、驚くほど単純だったりします。結局、金融機関や、そこで働くトレーダーは、とにかく少しでも儲けることを考えていて、そういう金融機関の行動原理を理解すればいいのです。こうしたミクロの視点に立つと、それぞれ筋が通っていて、意外と単純なんです。学者の先生が書く本は、このような実際に金融取引をしている人の視点が入っていないから、とにかく分かりにくくなっているんですね。だから、僕のような現場の人間の目から見える、金融の仕組みと金融業界の実情をしっかり書いておきたかった。アメリカではそういう本がいくつか出てはいるけど、日本人が、巨大な外資系金融機関の東京支社での経験を通して、金融の世界で本当に起こったことを書いていくのは、ちょっと大げさかもしれませんが、金融史のなかでも意味のある本になるのかな、と思いました。

その他の記事
![]() |
週刊金融日記 第289号<ビットコイン・ゴールド 金の雨が天から降り注ぐ、自民圧勝で日経平均未踏の15連騰か他>(藤沢数希) |
![]() |
大揉め都議選と「腐れ」小池百合子の明るい未来(やまもといちろう) |
![]() |
今年は「動画ゼロレーティング」に動きアリ(西田宗千佳) |
![]() |
コロナが起こす先進国と発展途上国の逆転(高城剛) |
![]() |
『無伴奏』矢崎仁司監督インタビュー(切通理作) |
![]() |
ヨーロッパ最大の放送機器展でこれから来る欧州の冬を想像する(高城剛) |
![]() |
古い常識が生み出す新しいデジタルデバイド(本田雅一) |
![]() |
画一化するネットの世界に「ズレ」を生み出すということ(西田宗千佳) |
![]() |
津田大介メールマガジン『メディアの現場』紹介動画(津田大介) |
![]() |
低価格なウェアラブルモニター「Vufine」(西田宗千佳) |
![]() |
インターネットに期待されてきた理想と現実の落差(やまもといちろう) |
![]() |
人は何をもってその商品を選ぶのか(小寺信良) |
![]() |
ポストコロナ:そろそろコロナ対策の出口戦略を考える(やまもといちろう) |
![]() |
『心がスーッと晴れ渡る「感覚の心理学」』著者インタビュー(名越康文) |
![]() |
インドのバンガロール成長の秘密は「地の利」にあり(高城剛) |