やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

代表質問

Q 【需要が足りず売上が上がらないのに人件費が上がりそうで困ってます】

山本さん、ご無沙汰しております。
随分昔に、復興庁の調査業務でご一緒させていただいた、某米MBAホルダーです。
いつもご活躍、拝見しております。

迷子問答も欠かさず拝読しており、雑談のような小噺でも感想を戴けそうだとのことで、藁にをもすがる気持ちで投げ込んでみます。

と言いますのも、ちょうど今日、山本さんの文春オンラインの記事を読んで膝打ちして、その後、そういえば自分も、、、と思ったからであります。。

ついに銀行も支店撤退…「人口が減り過ぎて競争が成立しない」地方経済の問題について

自己紹介がてらあらましを書きますと、私は40代の妻子ありおっさんですが、ある大手金融機関に勤務後、頑張って私費で海外留学、MBA取得後、某大手コンサルに転職(ここで省庁巡りをしてる時に緑色のネクタイをした山本さんと出会う)、数年の激務のうちに妻が体調不良で長期療養となり、妻実家の道東某都市に舞い戻りました。選挙区で言えば、山本さんが好きな、北海道7区です。

しばらくマスオさん状態で看病中心の主夫をしていたのですが、道東は、まぁ酷い経済状態で、妻の体調が落ち着いたら東京に戻ろうとしていたところ、妻実家の仕事を切り盛りしていた叔母とその親戚が相次いで倒れてしまいまして。。
見かねて手伝っているうちに、あれよあれよという間に3社、2組合の社長やら影の理事長やらを一時期掛け持ちすることになってしまいましたとさ。

東京にいる時期より忙しかったです。

(略)

ところで、私の悩みというのはまさに山本さんが書かれていた、地方経済の現状についてです。

(略)

売上が頭打ちなのは、地元経済が失速しているので当然ですし、若い人はどんどん札幌や東京に出て行ってしまいます。地元に残るのは、いい意味で地元愛をもった若者たちで地域に根を張るのは良いのですが、あまり勉強熱心ではなく、労働者として考えた時の品質も低いと言わざるを得ません。

伸び悩む売り上げに対して、仕事を進めていく上では人が不足しており、外国人を導入することも厳しい状況ですので、少しでも高い値段を提示して人をかき集めるしかありません。山本さんの書かれていた「最低賃金で雇おうとする」のは間違いなく地場でずっと頑張ってこられた事業者の皆さんで、一声かければジジババがボランティアで集まってきてくれた時代を経験した人ほど、最低賃金でも「カネを払うだけマシだ」という感覚でいます。そして、地方に人が減って、まともな人が来ないので、最低賃金提示しているのになぜ人が集まらないんだ、とボヤいてるのが現状です。

仕方がないので、まだ役に立つ人に教育を施したり、少し高い値段を提示して道央から出てきてもらったり、あれこれやってるんですが、、今度は立ちはだかるのが地元企業の壁です。まぁ、嫌がらせされるんですよ、高い値段で人を雇って操業していると。儲かってるんなら地元にカネを出してくれとか言われるのは普通で、いろんな難癖をつけてくる。

これがいわゆる地元リスク。。。

大口の、都心の需要を開拓したこともあって、商売そのものは順調なのですが、そこから先が。。

むしろ、土着の事業でコアコンピタンスと思っていた部門が、売上の減少で身動きが。。

さらにさらに、地方あるあるとして、親戚つながりで高齢化や売り上げ不振で黒字倒産や廃業を余儀なくされるところが事業をまるっと押し付けてきます。負債ごと。なんなら地元金融機関とセットでやってくるので断りづらく、しかも事業として旨みはゼロ、労働集約でしか売り上げが取れないものばかりでどうにもならず。

さらにさらにさらに、明らかに不採算な観光業。儲かってるセグメントは国立公園巡りとか釣りマニアのジャンルぐらいですかね。それ以外は、何も。。 客のデータもちゃんと取ってなかったので、某ネット旅行代理店と組んで客層を分析したりしていますが、これがまた見事に誰一人としてリピートせず。。

5年弱やって、リピート率0.6%とかですよ。ヤバくないですか。顧客満足を引き上げても、満足してくださった当人は二度と(自粛)に来ないんですよ。口コミで興味を持ってきてくださるのは、ある意味で、国内旅行で行脚し尽くして、最後に「道東でも行ってみるか」って人たちなのでしょう。単価は採れるけど目が肥えていて全然騙せない(騙すつもりもないけど)んです。

人がいな過ぎて、やれることがなくなってきた地域で、私はいったいどうすればよいのでしょうか。上の子が中学校に上がろうとしていますが、教育面でも不安でしかたがなく、都郊外の全寮制に行かせようか悩むぐらいです。真面目にやろうとすればやるほど、何をしても手詰まりになるのだろうと思うとやる気を奮い立たせてどうにかするって感じです。

(略)

書いていて嫌になるのですが、これが山本さんのいう「悩みを書き下ろす力」??
末筆になり恐縮ですが、山本さんの引き続きのご活躍を表でも裏でも祈念しています。
よろしければ、北海道7区でぜひ御出馬を笑

(編集部註:一部、語句を入れ替え読みやすく編集しています)

A 【人口減少による経済低迷は智慧やノウハウではどうにもならない】

 いわゆる地方経済衰退原因のひとつ、マンパワー問題のど真ん中でらっしゃいますね。

 しかも、地域にまともな人が少ないので仕事が一気に被ってやってくるというタイプのやつで、石狩はなんか突然再開発のプロジェクトが始まったけれど、釧路含め道東は人口も大きく減っていく中で浮上のきっかけを掴めずにいるのは必然なんだろうと思っています。

 道東は年に二回しか足を向けませんが、同じ北海道と言ってもまったくと言っていいほど地理的条件が隔絶していて、近隣に大消費地もなく、札幌よりも東京のほうがうっかりするとコンビニエントなんじゃないかと思います。羽田からすぐですしね。

 例えば、道東経済の中心であった釧路の混迷が始まった1970年代の話はもはや遠い過去のこととなり、衛星都市としてモノを流し込める近隣がないこともあって本当に取り残された地域になってしまっているのは残念なことです。おそらくいまの衰退で経験されている以上の人口流失で産業基盤はおろか都市機能も喪失する虞があるのが道東の怖ろしいところです。

 結局、航空便にぶら下がる形での観光業と、都市圏需要を前提とした海産物中心の産業にならざるを得ないのですが、例えばノルウェーのような近代化された漁業への投資ができたスケールまでは戻らないのではないかと思います。やってやれないことはないかもしれませんが、すでにチャンスを見繕って大規模に投資し成功を見込むフェイズは過ぎたと言えます。

 中でも、私が気にしているのは生活保護受給率で、例えば釧路市は4.9%ほどが生活保護を受ける世帯になっていますが、これは日本全体から見ても高い数字で推移しています。道東全域が、大体似たようなものです。また、高齢化率の上昇についても例外なく地方の数字の先行指標となっていて、ここから雪崩のように人口減少へ転じる一歩手前になっていることも指摘されねばなりません。

生活保護受給率

厚生労働省資料

 少ない財源を高齢者福祉に持っていかれて教育や産業育成に振り分ける余裕がない以上、未来のない地元を捨てて都市部に若い人が出ていくのも必然なのであって、これを地域で受け止めるには地元の社会資本の損耗が大きくどうにもならんだろうというのが本音です。もしも私が貴殿の立場ならば、地元で気の利いた人に解散分野の経営だけ任せて地域から離れる選択を取るかもしれません。よほど何かのブレイクスルーがこの地域になければ、本当に何もできずに終わることになりますから。

 さくらインターネットが石狩にデータセンターを置き、国プロというかデジタル田園都市構想の中でチャンスカードを引いたのは僥倖と言えますが、その恩恵は道東にまでまず及びません。むしろ、少ない地域の経営資源を収益のあげられる何に集約するかや、投資を呼び込んでも貴殿のように地元の無理解で台無しにならないような下ごしらえが必要で、そういう根回しを全部やったうえでどうにかしようとしても労力ばかりかかってあまり実入りはないのが正直なところでしょう。

 脱コロナで旺盛な観光・リゾート投資を呼び込むことも計画では可能かもしれませんが…… それこそ、人生を投げ打って、20年かけてそういう物事に取り組むという形にならざるを得ないのではないかと思います。

 7区からは少し離れますが、人口は少ないながらもオホーツク経済圏という観点か、釧路空港を呼び水とした東京や大阪などの大消費地、あるいは対アジア輸出みたいな観点で立て直すしかないんじゃないかと。

 何となれば、もう貴殿が政治の世界に打って出て「俺が道東を引っ張る」ぐらいでやるしかないのではないでしょうかね…。遠くから、応援しますよ笑
 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.410 穴が塞がれるタワマン税制についてあれこれ語りつつ、プラットフォーム事業者と報道メディアの軋轢やこれからのライフラインどうするみたいなことを考える回
2023年7月3日発行号 目次
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【0-1. 序文】タワマン税制の終わりと俺たちの税務のこれから
【0-2. 迷子問答】代表質問
【1. インシデント1】プラットフォーム事業者とニュース配信を巡る攻防の激化
【2. インシデント2】2024年問題対策としての自動運転トラックという難題
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

 
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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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