鏡リュウジ
@Kagami_Ryuji

鏡リュウジのメルマガ『プラネタリー夜話』より

人はなぜ初日の出に惹かれるのか–数万年の心の旅路

7428a85ea12e821d031c72034c7bb0fd_s-compressor

また少しメルマガの発刊が遅れてしまいました。申し訳ありません。このクリスマスシーズン、みなさんはいかがお過ごしですか。

インフルエンザや風邪も流行っているので、お気をつけくださいね。さて、今年の冬至は新月と重なって新しいことを始める暗示がありました。みなさんのなかでも何かが起こりそうなことはありましたか?

クリスマスを過ぎると、一気に街はお正月ムードになります。この飾りつけの変化の早さには本当に毎回驚かされます。切り替えがすごいですよね。

1月は英語ではジャニュアリーといいます。ローマの神さまの名前であるヤヌスにちなんでいます。ヤヌスには二つの顔がありました。

一つは、過去を、もう一つは未来を見据えているとされます。もともとは、辻などの神だったようですが、行く年と来る年の境界にちょうどいるということになります。このときには自分の過去を振り返り、また未来に希望を繋げる時だと考えられます。

この間、マッサージを受けたときに担当してくれた若い方が面白い事を言っていました。毎年のように、年越しのときには友人たちと初日の出を見に行くのだそうです。施術中の会話をつなげようと一生懸命話してくれているのでしょう、「お客さんはどこかに行かれるんですか」と聞いてきてくれました。

「うーん、もう寒いからうちでテレビ見てるか、おそば食べて寝ちゃうかもね」なんていうと、話をなんとかつなげようとしたのか、「そうですよね、日の出なんていつも一緒ですからねえ、わざわざ行かなくてもいいですよね」というので、あ、しまったと思い、「あ、学生のころなんかはもちろん、行っていたよ」と返事をすると「そうでしたか、そうですよね。日の出は日の出で一緒なんだけれど、初日の出はやっぱり何か特別なかんじがしますものね」と嬉しそうに返してくれました。

そうなのです。これは不思議です。「お正月」などというのは単に人間の都合で決められた形式的な日付であって、とくに意味はありません。しかし、それが意味を持ち始める。

お正月の日の出は、やっぱり特別だと感じられて、それを見に行こうと華やいだ気持ちで出かける人がいるということです。

これには、時間と空間に対する人間的な感覚がかかわっています。一種の宗教性といってもいいでしょう。宗教学者のエリアーデは、こうした現象を、単に時間が過ぎ去るのではなく、「世界そのものが更新される」と人は感じるからだと説明しています。

つまり、ある節目において、時間を示す数字だけではなく、世界そのものが刷新され、若返り、新しいスタートが起こるというふうに感じられるのです。それはサイクル的な時間の捉え方です。

占星術ではこのような周期的な時間の捉え方をベースにしています。1年は太陽のサイクルを、1ヶ月は月のサイクルを、また木星のように12年のサイクルなどなどを複雑に組み合わせていくのです。

初日の出を心待ちにする心性と、星の動きを見つめる占星術の心性は、共通のベースを持っています。彼の言う「初日の出は特別」というつぶやきの裏には、数万年にもわたる人間の心の動きの一端が表れています。

 

鏡リュウジメールマガジン「プラネタリー夜話」

102014年12月23日Vol.083目次

01:オカルト歳時記<元旦。初日の出が特別な理由>
02:今回の夜話1<沖縄の健康スローガンを見て思ったこと>
03:今回の夜話2<古書資料から2『黄道12宮の象徴学』>
04:生きるためのユング13<ペルソナを付け替えるとき>

あなたの人生を「特別なもの」にする占星術やタロットとのお付き合いを、鏡リュウジさんがお手伝い。占いの歴史、鏡さんによる著名人占い、マジカルコレクション紹介、Q&Aなど他では読めない充実のコンテンツをお送りいたします。

鏡リュウジメールマガジンの詳細・ご購読はこちら
http://yakan-hiko.com/kagami.html

 

【ご案内】

鏡リュウジさん新刊『秘密のルノルマン・オラクル』好評発売中!

510VALZzYSL._SL500_AA300_日 本初。36枚のルノルマンカードと本格的な解説書のセットが登場!! 欧米で大ブーム! ルノルマンカードとは? ナポレオン妃お抱え占い師マドモアゼル・ルノルマンに由来する伝説のカード占い。 近年、タロットよりすごいと欧米を中心に大評判のルノルマンカードを、西洋占星術・神秘学研究の第一人者である鏡リュウジ氏が紹介。タロットでもトランプ でも、天使カードでもない、新たに再発見されたオラクルカードとして世界的ブーム!

鏡リュウジ
1968年3月2日生まれ。占星術研究家・翻訳家。国際基督教大学卒業、同大学院修士課程修了(比較文化)。占星術・占いに対する心理学的アプローチを日本に紹介したことで、幅広い層から圧倒的な支持を受け、従来の『占い』のイメージを一新する。英国占星術協会、英国職業占星術協会会員。日本トランスパーソナル学会理事。平安女学院大学客員教授。

その他の記事

「見るだけ」の製品から「作ること」ができる製品の時代へ(高城剛)
コロナで変わる観光客とビジネス客の流れ(高城剛)
極めてシンプルでありながら奥が深いシステマ小説(西條剛央)
孤独と自由との間で、私たちは生きている(西條剛央)
どんなに撮影が下手な人でも人を美しく撮れる黄昏どきの話(高城剛)
意外とまだマイナー!?「二段階認証」をおさらいする(西田宗千佳)
住んでいるだけでワクワクする街の見つけ方(石田衣良)
幻冬舎、ユーザベース「NewsPicks」に見切られたでござるの巻(やまもといちろう)
11月に降り積もる東京の雪を見ながら(高城剛)
なぜ「もしドラ」の続編を書いたのか(岩崎夏海)
発信の原点とかいう取材で(やまもといちろう)
ポストコロナ:そろそろコロナ対策の出口戦略を考える(やまもといちろう)
リベラルの自家撞着と立憲民主党の相克(やまもといちろう)
メディアの死、死とメディア(その1/全3回)(内田樹)
週刊金融日記 第281号 <Pythonで統計解析をはじめよう、北朝鮮ミサイル発射でビットコイン50万円突破>(藤沢数希)
鏡リュウジのメールマガジン
「プラネタリー夜話」

[料金(税込)] 550円(税込)/ 月
[発行周期] 月2回発行(第2,第4月曜日配信予定)

ページのトップへ